♯16 ぶっちゃけ良い演奏ってなに?

ピアノ教育

クラシック音楽初心者向け、良い演奏の見分け方

「クラシック音楽ってどういう演奏が良いの?」

「良い演奏とそうでない演奏の違いがわからない。」

こんなふうに感じている方に、今日の記事を読んでいただきたいです。

クラシック音楽における良い演奏というのは、つきつめると好みによるところが大きくなりますが、ある程度見分けるポイントがあります。

今日は私流「良い演奏」の見分け方を伝授します。

これを読めば、クラシック音楽の聞こえ方・感じ方が変わるはずです。

良い演奏を見分けるポイント、11選

演者の立場では、良い演奏のポイントはもう少しあるのですが、今回は聴き手目線で解説します。

1.テクニックが安定している

これは言うまでもなく「良い演奏」の必須条件ですね。

どういったものが安定したテクニックかというと、

・音抜けがない

・リズムが正確(16分音符が転んだりしない)

・タッチがしっかりしている(ふらつかない)

初心者の皆さんにざっくりお伝えすると、こんな感じです。

テクニックは実は奥深いものなので、ここでは分かりやすいものに留めています。(テクニックについては、また別記事で解説します。)

特に最初の段階でつまずくのが「16分音符」を均等に弾くこと。

〈例1〉16分音符

「16分音符」は各指が独立して、安定していないと弾くことができません。

2.音楽の流れが自然

これを判断するのは、初心者にはなかなか難しいかもしれません。

ひとつ見分けるポイントをお伝えするなら、

音楽が呼吸をともなって、流れているか?

ということです。

音楽のはじまりは「歌」です。

歌をうたうように音楽が流れているかに注目すると、だんだん音楽の流れが自然か不自然か見分けられるようになるでしょう。

ポイントは、「呼吸」です。

3.音に感情がのっている

または、「音楽に共感して弾いている」ことが良い演奏のポイントだと思います。

ミスタッチはないけど、感情もない演奏は、ぜったいに良い演奏ではありません。

※あえて感情を感じさせない音楽は除く。

これは、聴いていればわかると思います。

過度な感情移入は注意が必要ですが、音の羅列になっている音楽に意味はありません

それなら、人ではなくロボットに演奏させておけばいいでしょう。

人が演奏する意味、それは「感じ考えることができる」からこそです。

4.弾くのに一生懸命になりすぎてない

良い演奏には「感情」が必要だとお伝えしましたが、良い演奏には「客観性」も必要不可欠です。

感情をこめすぎて自分だけの世界に入り込むのは、良い演奏ではありません。

音楽は、「コミュニケーション」です。

聴いている人を意識してこそ、私たちが演奏する意味が成り立ちます。

演者が音楽に入り込みすぎて、こちら(聴き手)に注意を向けていないと感じられたのなら、それは良くない演奏でしょう。

5.構成を感じられる

これも初心者にはなかなか判断が難しい項目ですが、ずっと聴いていると見えてくるものがあります。

それでも手っ取り早く見分けたいのであれば、以下の項目に注目するといいでしょう。

1.同じメロディーが出てきたとき、どのような変化をしているか

2.一番盛り上がるところはどこか、効果的にそこに持ってこられているか

3.場面ごとに区切られているか

これがすべてではありませんが、まずはこういった項目に注目するといいでしょう。

6.タッチの種類が豊富で、変化が多彩

「良い演奏」というのは、聴いている人を飽きさせません。

上手な人の演奏は、本当に1音単位で細かく変化しています。

なぜそんなことが成しえるのか。

それは、タッチ(鍵盤への触れ方・・・スピード、角度、力の加減)の種類、引き出しが豊富だからです。

細かいことがわからなくても「なんか長いなー」と感じたら、危険信号です。

聴いている人が飽きないような演奏を、私も目指しています。

7.体や顔ではなく、音で表現している

よく、音はそんなに変化していないのに顔や体で表現している人がいます。

雰囲気では上手そうに見えるのですが、目を閉じて聴いてみると一目瞭然。

実は何一つ音が変わっていない、ということがあります。

身体表現ではなく、指先で実際に音を作れている人が、本当にピアノが上手な人です。

8.ペダルがにごったりせず、適切に使われている

ペダルは、基本和音ごとに踏みかえるものです。

隣り合った音は、特にぶつかって響きがにごりやすくなるので、注意する必要があります。

ペダルがにごってもそのままで演奏している人は、「自分の音をよくきけていない」ということです。

あえてにごった響きをまぜて作ることもありますが、「あれ、なんか響きが汚いな。音があふれているな。」と思ったら、演奏者のペダルがいまいちの可能性があります、

9.語るように弾いている

「2.音楽の流れが自然」のところで、音楽のはじまりは「歌」だとお伝えしました。

皆さん、「歌」の語源を知っていますか?諸説ありますが、

歌の語源は、「うったえる」

です。

聴いている人に作曲家や演奏者の想いを「うったえる」、

つまり「語る」ように弾くことこそが、良い演奏のポイントです。

10.聴いている人をひきつけ、空間を演出するのが上手

音楽は静寂から始まり、静寂で終わります。

音楽は「時間をあやつる」芸術であるともいえます。

聴いている人をぐっと音楽の世界にひきこんで、はなさない。

そのためには間だったり、緩急だったりを考える必要があります。

これをあやつるのが上手な人の演奏ほど、聴き手をとらえて放しません。

知らないうちにひきこまれている

と誰かの演奏で感じたら、その人が時間をあやつり空間を演出するのがとても上手である証拠です。

11.引き算で演奏している

これは自分にも言い聞かせていることなので耳が痛いのですが、皆さんにもしっかりお伝えします。

まず、

「引き算で演奏している」とはどういうことか。

イメージしていただくのが一番分かりやすいかと思うのですが、

濃い絵の具ではじめから色を塗り、さらにそのうえに濃い絵の具を塗り足していく。

これは引き算ではなく、足し算の塗り方です。

すでにあるものにどんどん足していく。気が付いたら厚塗りになっている。

これが良くない演奏にもあてはまります。

「もっと強く、もっと大きく」と足していくと、行きつく先は「厚塗り」です。

「もういいよ」と聴いている人がお腹いっぱいになってしまいます。

そうならないためには、

・一番盛り上がるところから逆算して、他の部分を作る

・余分なところはそぎ落としていく

といった作業が必要です。

こういう演奏ができる人が本当に少ないのです。

冷静に自分の音を聴いて、「何がどれくらい必要なのか」をトータルで考える

これができている人は、本当にピアノが上手な人です。

まとめ

良い演奏の11の特徴をお伝えしました。

1.テクニックが安定している

2.音楽の流れが自然

3.音に感情がのっている

4.弾くのに一生懸命になりすぎてない

5.構成を感じられる

6.タッチの種類が豊富で、変化が多彩

7.体や顔ではなく、音で表現している

8.ペダルがにごったりせず、適切に使われている

9.語るように弾いている

10.聴いている人をひきつけ、空間を演出するのが上手

11.引き算で演奏している

ぜひ、これらのなかから記憶に残ったものを頼りに、演奏を聴いてみてください。

きっと聴こえ方が違ってくるはずです。

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