ピアノのレッスンでよく聞く言葉のひとつに、「もっと歌うように弾いて」というアドバイスがあります。
けれど、ピアノは声を持たない楽器。どうすれば“歌う”ような表現ができるのでしょうか?
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
ピアノで歌うように弾くための考え方とコツをお話しします。
「歌うように弾く」は“旋律を感じること”から
「歌うように弾く」とは、単にレガートで滑らかに弾くという意味ではありません。
それは、旋律の流れを人間の呼吸や言葉の抑揚と同じように感じ取り、表現すること。
つまり、“フレーズの息づかい”を意識するということです。
歌手がフレーズの中で息を吸うタイミングや言葉の強弱を大切にしているように、
ピアノでも一つひとつの音に抑揚を与えながら弾くと、自然と音楽が生き生きしてきます。
メロディが上に上がるときには少しエネルギーを与え、下降するときには音をそっと手放すように。
そんな“呼吸”を手の中で感じられたとき、ピアノは人の声のように語り始めます。
音をつなぐのは「指」ではなく、「心の線」
歌うような演奏をするとき、鍵盤の上でどれだけ音をつなげるかに集中してしまいがちですが、実は大切なのは指の動きよりも、音と音の“関係”を感じることです。
フレーズを「点」ではなく「線」でとらえること。
次の音が“どういう意味を持って出てくるのか”を意識することで、音楽の流れに自然な方向性が生まれます。
それが、聴く人に“歌っているようだ”と感じさせる力になります。
「音色」を変えることで言葉を持たせる
声に表情があるように、ピアノの音にもさまざまな色があります。
タッチの深さやスピード、ペダルの量を少し変えるだけで、同じ旋律がまったく違う響きを持つことがあります。
大切なのは、「このフレーズはどんな声で話したいのか?」と想像すること。
柔らかい声で語るように弾くのか、明るくハキハキと歌うように弾くのか。
その“声のイメージ”を明確にすると、自然と音色も変わっていきます。
ピアノは打鍵楽器ですが、心の中では常に「声を出している」と思って弾く。
その意識が、音に命を吹き込む第一歩です。
“歌うように弾く”ことが表現力を育てる
テクニックを磨くだけでは、音楽はまだ「正確」な段階にとどまります。
そこに“歌”が宿ると、演奏はぐっと「音楽的」に変わります。
そしてその力は、どんな曲にも生きてきます。
ショパンでも、モーツァルトでも、バッハでも。
音の背後に流れる“息づかい”を感じながら弾くこと。
それがピアノの本当の魅力を引き出す鍵です。
「ピアノで歌うこと」が理解できなかった過去|筆者の経験談
小さいときから「もっと歌って」という言葉は、いろいろな先生からよく言われました。
私はその度に「ピアノで歌うってどういうこと?」といつも疑問に思っていました。
正直に言うと、大学生になるくらいまではその意味を理解していませんでした。
「ピアノを弾く」=「歌う」という感覚を、はじめから持っている子は問題ないかもしれませんが、
私みたいな、頭でっかちで物事を白黒はっきりさせたい人間にとっては、「もっと歌って」という言葉だけで不十分でした。
私みたいに「ピアノで歌うのがわからない」と悩んでいる人はいないだろうか?
と考えたのが、この記事を書いたきっかけです。
いろいろな経験を積んできた今の私は、「ピアノで歌う」ことの意味を知っています。
まるでピアノで弾くメロディーが、人が歌っているかのような息づかい(呼吸)、抑揚(音色という声色)、伸びやかさ、それらを持っていることだと。
意味を知っていても、実際に「歌うように弾く」のは難しいかもしれません。
ですが、人の演奏をまねしたりして、少しずつピアノで歌う感覚を身につけられたら良いと思います。
まとめ|心で歌えば、音が語りはじめる
「ピアノで歌う」という言葉は、比喩のようでいて、とても具体的。
心で歌えば、音が語りはじめる——そんな瞬間を、日々の練習の中で大切にしたいですね。
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