「毎日たくさん練習しているのに、なかなか上達しない…」
そう感じたことはありませんか?
実は、ピアノの上達において“練習時間の長さ”よりも、
“どれだけ考えて練習しているか”が大きな差を生みます。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
ただ弾くだけの練習から一歩進んで、“思考する練習”に変えるための考え方をお伝えします。
「たくさん弾く=上達」ではない理由
ピアノを弾くとき、私たちはつい「時間をかけた分だけ上手くなる」と思いがちです。
しかし、ただ同じ箇所を何度も繰り返すだけでは、弾き方のクセや間違いを“練習して覚えてしまう”こともあります。
たとえば、ベートーヴェンの《エリーゼのために》を例に考えてみましょう。

右手の細かい動きが難しく、何度も弾いているうちに手首が固まったままになっている…そんな経験はありませんか?
それは「なぜ弾きにくいのか」を考えずに、ただ反復してしまっている状態です。
“思考のある練習”とは、
「なぜここで弾きにくいのか?」
「どんな動きに変えたら自然に弾けるか?」
「このフレーズの中で一番大切な音はどこか?」
と、自分に質問を投げかけながら練習することです。
考える練習が身につくとどう変わる?
思考を伴う練習を続けると、次のような変化が起こります。
- 同じミスを繰り返さなくなる
- 自分の弱点に気づける
- 音楽の流れを理解して弾ける
- 短時間でも集中した練習ができる
たとえばショパンの《ノクターン第2番》で、左手の伴奏がうまく流れない場合。

“ただ何度も練習する”のではなく、“どの音を支えにすれば滑らかにつながるか”を考えるだけで、手の使い方や意識が変わります。
上達のスピードは「量」ではなく、「考える深さ」で決まるのです。
思考する練習の具体的なステップ
では、実際にどうすれば“考える練習”ができるのでしょうか。
初心者でもすぐに取り入れられる3つのステップをご紹介します。
① 弾く前に「目的」を決める
「今日は右手のリズムを安定させる」など、ひとつだけ目標を決めて練習します。
目的を持つだけで、意識が散らず効率が上がります。
② 弾きながら「聴く」
ただ音を出すのではなく、響きや音のつながりを“聴く練習”をします。
特に、和音のバランスやフレーズの方向を耳で確認することが大切です。
“聴く練習”をする際は、ゆっくり弾くようにしましょう。
速すぎると「聴く」ことができません。
③ 弾いたあとに「分析」する
弾き終わったら、「何が良かったか」「どこが弾きにくかったか」を簡単にメモします。
次の練習のヒントになるだけでなく、自分の成長も見えるようになります。
この3つを意識するだけで、同じ30分の練習でも成果がまったく違ってきます。
筆者の体験談
ある程度までは、やはり練習量も大切だと思います。
けれど、それだけでは本当のテクニックは身に付かず、むしろ「練習しているのに下手になっている」ということさえ起こり得ます。
私自身も小さい頃は、夢中になって何も考えずにピアノを弾いていました。
それでも人より弾けるほうでしたし、よく褒められていたと思います。
転機になったのは、音高受験のときです。
毎日長時間練習しても、なかなか思うように弾けない日々が続きました。
先生からも同じことを何度も指摘され、練習しているはずなのに上達を感じられませんでした。
今振り返ると、原因は「練習に対する思考が足りていなかった」ことにあると感じます。
どんな音を出したいのか、なぜ弾きにくいのかを考えずに、ただ時間だけを費やしていたのです。
いまでも「思考する練習」は決して得意ではありません。
けれど、少しずつでも意識して取り組むことで、確実に変わっていける——そう信じて、今も試行錯誤を続けています。
まとめ:考えることで、音が変わる
ピアノの練習は、「手を動かす時間」ではなく「考える時間」によって質が決まります。
“なぜ弾きにくいのか”、“なぜそう書かれているのか”を考えることで、自然とミスも減り、音楽の本質に近づけます。
毎日の練習で「どんな意識で弾くか」を少し変えてみましょう。
ピアノは“量”より“思考”で伸びる楽器です。
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