コンサートというと、華やかな舞台上の姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。
ですが、その一日を迎えるまでには、数えきれないほどの準備があります。
テーマを考え、選曲を練り、チラシを作り、プログラムノートを書く。
そして何より、聴いてくださる方にどう届けるかを考え続ける日々。
今回は、そんな「コンサートができるまで」の裏側を、ピアニストの視点からお話しします。
コンサートのテーマを決める
コンサートづくりは、まずテーマを決めるところから始まります。
どんな世界を描きたいのか、どんな時間をお客様と共有したいのか。
たとえば「水」や「祈り」といった抽象的なテーマもあれば、
「バッハからラフマニノフへ」と時代の流れをたどるような構成もあります。
テーマが決まると、コンサート全体に芯が通り、選曲の方向性が見えてきます。
演奏会は単なる曲の羅列ではなく、一つの“物語”なのです。
選曲は“聴き手”を思い浮かべながら
ピアニストにとって選曲は、自分の表現をどう見せるかを決める大切な作業。
同時に、聴きに来てくださる方にどう響くかを考えることも欠かせません。
曲の並びや調性の流れ、静と動のバランス。
決められた時間の中で、どんな呼吸で音楽が流れていくのかを想像しながら構成します。
「この曲を入れたい」という気持ちと、「お客様が心地よく聴ける流れ」を両立させること。
そこに、演奏家としてのセンスが問われます。
チラシ・プログラムノートの準備も大切な仕事
テーマと曲目が決まると、次はチラシ制作。
デザインや色合いひとつで、コンサートの印象が大きく変わります。
どんな写真を使うか、どんな言葉で紹介するか。
これも立派な準備の一つです。
見た人が「行ってみたい」と思えるチラシづくりには、思いのほか時間がかかります。
そして、プログラムノートを書くことも大切な過程です。
作曲家の背景や曲への想い、どんな気持ちで弾くのか——
書くことで自分の中の整理にもなり、演奏にも深みが生まれます。
練習では「どう伝えるか」を意識する
演奏そのものの準備も、もちろん欠かせません。
ただ音を並べるだけではなく、「どんな音で語るか」「何を伝えたいのか」を考えながら、細かい部分・全体の流れ、それぞれを意識して練習します。
音の明暗、間の取り方、タッチの違い。
曲が語る言葉をどう響かせるかを探っていく時間は、地道ですが最も大切な時間です。
ホールリハーサルで響きを探る
コンサートの場合は、本番前に会場でのリハーサルを行います。
ホールによって響き方がまったく違うため、ペダルの深さやテンポ感も微調整が必要です。
ピアノの個性を知り、空間と音の距離をつかむ。
その日の会場で最も自然に響く“音の居場所”を見つけていきます。
集客という見えない努力
コンサートづくりの中で、最も地味で、しかしとても大切なのが集客です。
チラシを置きに行ったり、SNSで情報を発信したり。
ときには友人や生徒さんに直接お声がけすることもあります。
演奏がどれほど素晴らしくても、聴いてくださる方がいなければ音楽は成立しません。
「どうやったら音楽を必要としている人に届くか」——
それを考えるのも、表現の一部だと感じています。
聴き手と共に作る“その日だけの音楽”
こうして迎える本番の日。
それは、長い準備の積み重ねがようやく形になる瞬間です。
けれど、舞台の上で生まれる音は、決して一方通行ではありません。
会場にいるすべての人の呼吸や想いと混ざり合い、
その日、その場所でしか生まれない音楽になるのです。
【筆者の経験談】11/1(土)リサイタルの準備
11月1日、埼玉県与野本町にある「彩の国さいたま芸術劇場 小ホール」でリサイタルを開催します。
この公演が決まったのは7月の末ごろ。そこから急ピッチで準備を進めてきました。
(通常は半年以上前から計画を立てることが多いので、今回はかなり短期間での準備でした。)
まず最初に考えたのは、「どんなテーマで、どんなコンサートにしたいか」ということ。
テーマが決まると、自然と曲の方向性が見えてきます。
そこから選曲を行い、チラシの制作に取りかかりました。
チラシは特にこだわりを持って作りました。
「この演奏会に行ってみたい」と思ってもらえるよう、言葉やデザインの一つひとつに気を配りました。
また、プログラムノートも心を込めて執筆しました。
当日の演奏をより深く味わっていただけるように、作品の背景や想いを丁寧に書きました。
少しでも、お客様の理解の助けになればと思っています。
そして今回は、会場がとても大きい(全266席)ため、集客には苦労しています。
私自身、決して華やかな経歴を持っているわけではなく、まだ私のことを知らない方に「聴きに行こう」と思っていただくのは、やはり簡単ではありません。
他の演奏家の方々を見ていても、この部分で苦労されている方が多く、私にとっても今後の大きな課題の一つです。
本番まで残り一週間。
ここからは、できる限りの準備を重ねて、当日を迎えたいと思っています。
まとめ:コンサート準備は創作の時間
コンサートを準備するということは、音楽を作る前の“もう一つの創作”をしているようなもの。
テーマを考え、チラシを作り、文章を書き、聴いてくださる方のことを想う。
そのすべてが、音楽につながっていきます。
ステージに立つまでの日々もまた、音楽の一部。
そう思いながら、今日も一つ一つの準備を丁寧に積み重ねています。
★お知らせ★
私のピアノソロリサイタルが、11月1日(土)13時~ より埼玉県の与野本町にある「彩の国さいたま芸術劇場小ホール」にて開催されます!
バッハ、ショパン、ラフマニノフ、ベートーヴェンと幅広い作曲家の作品を演奏します。
どれも思い入れのある作品ばかりです。
チケット絶賛お申込み受付中。
お申し込みの際は、office@sakuramusic.jp、もしくはこちらのブログの問い合わせフォーム、またはコメントよりお願いいたします。



コメント