♯75 ピアノコンサートの準備とは?テーマ決めから集客までの裏側

コンサートと本番準備

コンサートというと、華やかな舞台上の姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。
ですが、その一日を迎えるまでには、数えきれないほどの準備があります。

テーマを考え、選曲を練り、チラシを作り、プログラムノートを書く。
そして何より、聴いてくださる方にどう届けるかを考え続ける日々。

今回は、そんな「コンサートができるまで」の裏側を、ピアニストの視点からお話しします。

コンサートのテーマを決める

コンサートづくりは、まずテーマを決めるところから始まります。
どんな世界を描きたいのか、どんな時間をお客様と共有したいのか。

たとえば「水」や「祈り」といった抽象的なテーマもあれば、
「バッハからラフマニノフへ」と時代の流れをたどるような構成もあります。

テーマが決まると、コンサート全体に芯が通り、選曲の方向性が見えてきます

演奏会は単なる曲の羅列ではなく、一つの“物語”なのです。

選曲は“聴き手”を思い浮かべながら

ピアニストにとって選曲は、自分の表現をどう見せるかを決める大切な作業。
同時に、聴きに来てくださる方にどう響くかを考えることも欠かせません。

曲の並びや調性の流れ、静と動のバランス。
決められた時間の中で、どんな呼吸で音楽が流れていくのかを想像しながら構成します。

「この曲を入れたい」という気持ちと、「お客様が心地よく聴ける流れ」を両立させること。

そこに、演奏家としてのセンスが問われます。

チラシ・プログラムノートの準備も大切な仕事

テーマと曲目が決まると、次はチラシ制作
デザインや色合いひとつで、コンサートの印象が大きく変わります。

どんな写真を使うか、どんな言葉で紹介するか。
これも立派な準備の一つです。

見た人が「行ってみたい」と思えるチラシづくりには、思いのほか時間がかかります。

そして、プログラムノートを書くことも大切な過程です。
作曲家の背景や曲への想い、どんな気持ちで弾くのか——
書くことで自分の中の整理にもなり、演奏にも深みが生まれます。

練習では「どう伝えるか」を意識する

演奏そのものの準備も、もちろん欠かせません。

ただ音を並べるだけではなく、「どんな音で語るか」「何を伝えたいのか」を考えながら、細かい部分・全体の流れ、それぞれを意識して練習します。

音の明暗、間の取り方、タッチの違い。
曲が語る言葉をどう響かせるかを探っていく時間は、地道ですが最も大切な時間です。

ホールリハーサルで響きを探る

コンサートの場合は、本番前に会場でのリハーサルを行います。
ホールによって響き方がまったく違うため、ペダルの深さやテンポ感も微調整が必要です。

ピアノの個性を知り、空間と音の距離をつかむ。
その日の会場で最も自然に響く“音の居場所”を見つけていきます。

集客という見えない努力

コンサートづくりの中で、最も地味で、しかしとても大切なのが集客です。
チラシを置きに行ったり、SNSで情報を発信したり。
ときには友人や生徒さんに直接お声がけすることもあります。

演奏がどれほど素晴らしくても、聴いてくださる方がいなければ音楽は成立しません。

「どうやったら音楽を必要としている人に届くか」——
それを考えるのも、表現の一部だと感じています。

聴き手と共に作る“その日だけの音楽”

こうして迎える本番の日。
それは、長い準備の積み重ねがようやく形になる瞬間です。

けれど、舞台の上で生まれる音は、決して一方通行ではありません。
会場にいるすべての人の呼吸や想いと混ざり合い、
その日、その場所でしか生まれない音楽になるのです。

【筆者の経験談】11/1(土)リサイタルの準備

11月1日、埼玉県与野本町にある「彩の国さいたま芸術劇場 小ホール」でリサイタルを開催します。

この公演が決まったのは7月の末ごろ。そこから急ピッチで準備を進めてきました。
(通常は半年以上前から計画を立てることが多いので、今回はかなり短期間での準備でした。)

まず最初に考えたのは、「どんなテーマで、どんなコンサートにしたいか」ということ。
テーマが決まると、自然と曲の方向性が見えてきます。
そこから選曲を行い、チラシの制作に取りかかりました。

チラシは特にこだわりを持って作りました
「この演奏会に行ってみたい」と思ってもらえるよう、言葉やデザインの一つひとつに気を配りました。

また、プログラムノートも心を込めて執筆しました。
当日の演奏をより深く味わっていただけるように、作品の背景や想いを丁寧に書きました。
少しでも、お客様の理解の助けになればと思っています。

そして今回は、会場がとても大きい(全266席)ため、集客には苦労しています。
私自身、決して華やかな経歴を持っているわけではなく、まだ私のことを知らない方に「聴きに行こう」と思っていただくのは、やはり簡単ではありません

他の演奏家の方々を見ていても、この部分で苦労されている方が多く、私にとっても今後の大きな課題の一つです。

本番まで残り一週間。
ここからは、できる限りの準備を重ねて、当日を迎えたいと思っています。

まとめ:コンサート準備は創作の時間

コンサートを準備するということは、音楽を作る前の“もう一つの創作”をしているようなもの。

テーマを考え、チラシを作り、文章を書き、聴いてくださる方のことを想う。

そのすべてが、音楽につながっていきます。

ステージに立つまでの日々もまた、音楽の一部。
そう思いながら、今日も一つ一つの準備を丁寧に積み重ねています。


お知らせ

私のピアノソロリサイタルが、11月1日(土)13時~ より埼玉県の与野本町にある「彩の国さいたま芸術劇場小ホール」にて開催されます!

バッハ、ショパン、ラフマニノフ、ベートーヴェンと幅広い作曲家の作品を演奏します。

どれも思い入れのある作品ばかりです。

チケット絶賛お申込み受付中

お申し込みの際は、office@sakuramusic.jp、もしくはこちらのブログの問い合わせフォーム、またはコメントよりお願いいたします。

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