ピアノを弾く時間は、ただ指を動かすだけの時間ではありません。
曲と向き合い、自分の感情と向き合い、少しずつ心を整えていく──
それが、音楽を学ぶ中で私がいちばん強く感じていることです。
本番前に不安でいっぱいになるとき、思うように練習が進まないとき。
そんな瞬間こそ、ピアノは私に「心を整える練習」をさせてくれているように思います。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
ピアノにおける「心と音の関係」について解説します。
心が乱れているとき、音も乱れる
ピアノを長く続けていると、「音が揺れている」「リズムが落ち着かない」「テンポが速い」と感じる瞬間があります。
自分の心が落ち着いていないと、演奏にもそれが出てしまうことがあります。
焦りや不安、迷いがそのまま音に表れてしまうのです。
音楽は、自分の状態を正直に映す鏡のようなもの。
どんなに技術を磨いても、心が整っていなければ音も整いません。
だからこそ私は、練習の時間を「心を整える時間」としても大切にしています。
練習とは、感情を整えるプロセス
毎日の練習の中でうまくいかないことはたくさんあります。
「昨日は弾けたのに」「なぜ今日はダメなんだろう」「イメージしている音が出ない」
──そんな日もあります。
ですが、そうした心の揺らぎの中で
「できない自分を責めず、日々淡々と音と誠実に向き合う」ことを覚えると、
少しずつ心が穏やかになっていくのを感じます。
ピアノの練習は、筋トレのように結果がすぐ出るものではありません。
音を聴き、考え、また弾く。
その繰り返しの中で、自分の感情も音も少しずつ整理されていきます。
本番前の不安も、「心を整える練習」の一部
コンサートや発表会など、本番が近づくと、どうしても不安に襲われます。
どんなに準備しても、「大丈夫かな」という気持ちをぬぐえません。
「ミスしたらどうしよう」とか、「暗譜が飛んでしまったらどうしよう」とか。
考え出すと不安でいっぱいになってしまいます。
けれど、その不安を無理に消そうとするより、
「何のために人の前で演奏をするのか」「自分はどうしたいのか」
そうやって自分の心と向き合うことで、少しずつ落ち着いていきます。
そのとき初めて、「演奏とは心と向き合う作業でもあるんだ」と実感します。
ピアノがくれる“静かな力”
音楽に向き合う時間は、自分を責める時間ではなく、
自分を“整える”時間であってほしいと思います。
ミスを恐れず、音を丁寧に聴き、気持ちを少しずつ整える。
それを積み重ねていくことで、演奏だけでなく生き方そのものが変わっていきます。
ピアノを弾くという行為は、心を静かに鍛えること。
練習の先にある「上達」は、技術だけでなく心の成長でもあるのだと思います。
【筆者の体験談】
ピアノという楽器を通して、私はこれまで自分自身と向き合ってきました。
主に失敗してしまったとき、よりよい演奏をしたいと思ったとき、その都度自分の心に問いかけ行動に移しました。
本番で思うように演奏ができなかったときーー
何が原因だったのだろう。技術的な準備が足りなかったのか。それとも心の在り方が間違っていたのか。
本番前に焦りに襲われて、演奏が雑になってしまったときーー
自分はいま不安にとらわれていることを自覚しよう。深呼吸。目の前の音ひとつずつに落ち着いて向き合おう。
他人と比べてしまって、演奏するのがつらくなってしまったときーー
他人と比べて何のいいことがあるのだろう。そもそも私は何のためにピアノを弾いているのだろう。
こんなふうに悩みながら、今まで進んできました。
今あげた例はごく一部で、それ以外にもピアノを続けていく中で数々の壁に当たりました。こうした悩みは、自分の未熟な心から生まれてくるものばかりだったと思います。
その度に「どうしたらこれを乗り越えられるだろう」と自分の心と向き合ってきたつもりです。
ピアノが上達するには、多かれ少なかれ「自分の心を磨くこと」とつながっています。
心を磨かずして、より良い音楽はできないと、私は強く思います。
まとめ
うまくいかない日も、音が思うように響かない日も、
ピアノの前に座ることで「今の自分」を整え直すことができます。
演奏とは、心を整える作業。
その積み重ねが、やがて音の深さとなって表れてくる。
そんな時間を、私はこれからも大切にしていきたいと思います。
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