♯191 ピアノ演奏に説得力を!「近親関係調(近親調)」を知れば楽譜の読み方が変わる


ピアノを弾いていて「ここで急に雰囲気が変わったな」と感じる瞬間はありませんか?

実は、曲の中での調の変化(転調)は、作曲家の気まぐれで起こるものではありません
そこには「近親関係調(近親調)」という音楽理論に基づいた、明確な意図が隠されています。

超初心者のための短い曲を除き、ほとんどの楽曲は一つの調だけで完結することはありません。
調性の変化を知ることは、作曲家が描いた設計図を読み解くことと同じです。

ただ楽譜通りに指を動かすのと、理論を納得して弾くのとでは、演奏の説得力が格段に変わります。

今回は、特にソナタ形式などを理解する上で欠かせない近親関係調(近親調)」の基礎知識と、具体的な楽曲分析への活かし方を解説します。

筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

近親関係調(近親調)とは?「主調」と仲良しの4つのグループ

近親関係調(近親調)とは、その名の通り「(主調からみて)近く親しい関係にある調」のことです。
人間関係でいう「親戚」のようなものだとイメージすると分かりやすいでしょう。

近親関係調(近親調)には大きく分けて4つの種類があります。

  1. 属調(ぞくちょう)
  2. 下属調(かぞくちょう)
  3. 同主調(どうしゅちょう)
  4. 平行調(へいこうちょう)

主調が長調か短調かによって、これらの関係性は次のように分かれます。

  • 主調が長調の場合:
     属調・下属調は「長調」、同主調・平行調は「短調」になる
  • 主調が短調の場合: 
    属調・下属調は「短調」、同主調・平行調は「長調」になる

まずはこの「2つずつセット」という基本を押さえましょう。

4つの近親関係調(近親調)を詳しくマスターしよう

それでは、ハ長調(C dur)を例に、それぞれの関係を具体的に見ていきましょう。

① 属調

主調から見て5度上の調です。

  • ハ長調(C)が主調なら、属調はト長調(G)
  • シャープが1つ増える(またはフラットが1つ減る)関係で、非常に明るく、エネルギーが外に向かうような響きを持ちます。

② 下属調

主調から見て5度下(または4度上)の調です。

  • ハ長調(C)が主調なら、下属調はヘ長調(F)
  • フラットが1つ増える(またはシャープが1つ減る)関係で、少し落ち着いた、柔らかい響きを感じさせることが多いです。

③ 同主調

同じ主音(ドレミの始まりの音)を持つ」調のことです。

  • ハ長調(C dur)が主調なら、同主調はその反対のハ短調(c moll)
  • 色彩がガラリと変わるため、ドラマチックな演出によく使われます。

④ 平行調

同じ調号(シャープやフラットの数)を持つ」調のことです。

  • ハ長調(C dur)が主調なら、平行調はイ短調(a moll)
  • どちらも調号がありません。ハ長調の「ド」から短3度下の「ラ」から始まる短調です。
    ※調号と長調・短調の関係については、★こちらの記事で詳しく解説しています。

★以前の記事で一度紹介していますので、併せて参考にしてください。
→ 近親関係調(近親調)についての基礎記事

実践!モーツァルトのソナタK.545を分析してみる

理論を知って納得したうえで弾くのと、何も知らずに弾くのとでは、演奏の充実度は全く異なります。

有名なモーツァルトのピアノソナタ第16番 K.545の第1楽章を例に、近親関係調(近親調)がどう使われているか見てみましょう。

この曲の主調は「ハ長調」です。

1.提示部(14小節〜): 第2テーマは、主調の属調である「ト長調」へ行きます。[★マーク]

2.展開部(29小節〜): 属調(ト長調)の同主短調である「ト短調」へ[★マーク]。その後、ニ短調、イ短調と転じます。

3.再現部(42小節〜): 再現部は主調で戻ることが多いですが、ここでは主調の下属調である「ヘ長調」で再現されます[★マーク]。

4.(59小節~): 再現部の第二テーマでしっかりと主調に戻ります[★マーク]。

このように分析するかしないかで、一音一音に込める「音色の変化」や「方向性」が変わってきます。

★ソナタ形式については、こちらの記事も合わせて読んでいただくと理解が深まります。
→ ソナタ形式の基本を学ぼう

理論を知ることは、作品への「ヒント」を手に入れること

私が近親関係調(近親調)についてしっかり知ったのは、おそらく中学生以降だったと思います。
今振り返れば、「もっと早く知っておけば、あの曲の構造をもっと早く理解できたのに!」と思うことの一つです。

「難しそう」と壁を作るのではなく、作品を読み解くための手がかりとして、気軽に知って使ってほしい知識です。

最初は覚えるのが大変かもしれませんが、一度覚えてしまえばなんてことはありません。
あなたの楽曲への理解を助けてくれる、心強いヒントとなってくれます。

より詳しく楽典を勉強したい方は、一冊本を持っておくのもおすすめです。
→ [Amazon:おすすめの楽典参考書リンク]

まとめ

近親関係調(近親調)はたった4つです。

  1. 属調(5度上)
  2. 下属調(5度下)
  3. 同主調(同じ主音)
  4. 平行調(同じ調号)

これらを意識するだけで、あなたの演奏に「根拠」と「説得力」が生まれます。

ぜひ今日から、今練習している曲の楽譜を開いて、調のつながりを探してみてくださいね。

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筆者プロフィール:

4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。


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