
「やり始めたら、あんなに楽しいのに。もっと時間が欲しいって思うのに。……どうして、最初の一歩がこんなに重いんだろう」
これは、私の中にずっとある、情けなくて仕方のない矛盾の話です。
弾き始めれば、あっという間に時間が過ぎていく。「時間足りない!もっとやりたかったのに……」と後悔するほど夢中になる。それなのに、そこに至るまでが異常に長くて、結局自分で自分の首を絞めてしまう。
社会人としてピアノに向き合う日々の中で、私が今まさに直面しているこの「動けない自分」との葛藤について、ありのままに書いてみようと思います。
筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。
「やり始めるまで」に時間がかかる。自分で自分の首を絞める日々

私の練習は、いつもこの不思議な、そして苦しい矛盾から始まります。
ピアノを弾きたい気持ちに嘘はありません。新しい曲を譜読みしたいし、あのフレーズをもっと美しく響かせたい。
そう願っているはずなのに、いざ練習の時間になると、ピアノの椅子が果てしなく遠い場所にあるように感じてしまうのです。
スマホを眺め、SNSをチェックし、気づけば時間が過ぎている。
「早く座ればいいのに」「時間がもったいない」
頭の中で自分を責める声が大きくなるほど、身体は動かなくなります。
ようやく重い腰を上げて鍵盤に触れたときには、もう仕事に行く直前。
「ああ、やっぱりピアノは楽しい。もっと早く始めていれば……」
そんな後悔を繰り返すたび、私は自分で自分の首を絞めているような、やりきれない気持ちになります。
「意志の力」に頼ろうとしすぎているのか。完璧主義というブレーキ

なぜ、こんなことになってしまうのか。自分でもずっと悩んでいます。
いまだに「意志の力」だけで自分を動かそうとしているからなのか。それとも、余計なことを考えすぎているのか。
一つ思い当たるのは、「やるからには完璧にやらなければいけない」という思い込みです。
「しっかり頭を使って練習をして、集中して向き合わなければ」というハードルを自分の中に設けているせいで、無意識にブレーキをかけているのかもしれません。
学生時代、時間は無限にあるように感じられました。毎週のレッスンという「せざるを得ない環境」もありました。
でも、今は仕事をしながらの練習です。レッスンも、自分が希望しない限りはありません。
すべてが自分次第という自由さが、今の私には時として重圧になっています。
社会人ピアニストのリアル。休むだけで精一杯な日もある

時間があっても、なんだか体が疲れている気がする。
そんな日があるのも、今の私のリアルです。
仕事を終えて帰宅し、心身ともに「休むので精一杯」で、どうしても鍵盤に触れられない。そんな自分を「また今日も弾けなかった」と責めてしまうこともあります。
でも、そんな矛盾を抱えながらも、私の中から消えない願いがあります。
「もっと、ピアノが上手くなりたい」
「私の音楽を、いろんな人に聴いてもらいたい」
上手くなりたいという純粋な向上心と、動けない現実。この二つの思いがぶつかり合って、いつも心が揺れています。
正解は見えないけれど、それでも音楽に向き合いたい

この現象にどう対処していけばいいのか、正直に言って、私自身もまだ答えは出ていません。
ただ、こうして悩んでいることも含めて、今の私の「音楽」なのだと思うようにしています。
完璧な練習はできないかもしれない。椅子に座るまで何時間も無駄にしてしまうかもしれない。
それでも、最後にはやっぱりピアノが好きで、一音一音を慈しむように弾いている自分がいる。
社会人として生きる日常の中で、葛藤しながら、迷いながら。
それでも「もっと上手くなりたい」と願い続ける不器用な自分を、少しずつでも受け入れていきたいのです。
【まとめ】葛藤しながら、今日も少しずつ

ピアノの椅子に座るまでが長い。そんな自分に嫌気がさすこともあります。
でも、その葛藤は、私がピアノを心から大切に思っているからこそ生まれるものだとも感じています。
もし、この記事を読んでいる方の中に、私と同じような思いを抱えている方がいたとしたら、「私だけじゃないんだ」と、少しでも心が軽くなってもらえたら嬉しいです。
矛盾だらけの自分と一緒に、今日も少しずつ、音楽に向き合っていこうと思います。
★演奏会のお知らせ★
2026年10月12日(月祝)彩の国さいたま芸術劇場小ホールにて、チェロ奏者の入江晴美さんとのコンサート、「橋本智菜美ピアノリサイタルシリーズⅡ Duo Recital ーブラームスに寄せてー」を開催いたします。18:00開演(17:30開場)。
チケットお申し込みはこちらまで→chinalustig.bbb16@gmail.com

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筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

