♯216 「足」ではなく「耳」で踏む!ピアノのペダルが濁る原因と、中級者が陥る「聴けない」罠


「ペダルを踏むと、なんだか音がモヤモヤして濁ってしまう」
「楽譜通りに踏んでいるはずなのに、先生のようにクリアな響きにならない」

ピアノ中級者になると、避けて通れないのがペダリングの悩みです。
実は、ペダルはピアノの技術の中で最も「センス」と「耳」が問われる部分。

ただ足を上下させるだけの「スイッチ」だと思っているうちは、いつまでも美しい響きを手に入れることはできません。

今回は、ペダルは踏めるけれど「濁りに気づけない」という方が見落としがちなポイントと、本来あるべき練習の向き合い方について深掘りします。

筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

ペダルは「電源のオンオフ」ではない

まず知っておいてほしいのは、ペダルには「正解の踏み方」が楽譜にすべて書かれているわけではない、ということです。

楽譜に「Ped.」という指示があっても、それはあくまで目安。実際には、会場の響き、ピアノの個体差、そして曲のテンポによって、踏む深さを半分にしたり(ハーフペダル)、細かく踏み替えたりといった繊細なコントロールが求められます。

特に重要なのが「踏むタイミング」です。音を弾くと同時に踏むのではなく、打鍵した直後にスッと踏み込む「後踏みペダル」が基本ですが、これを無意識にできるようになるには、技術以前に「自分の音をどう聴くか」という姿勢が不可欠なのです。

原因1:弾くことに一生懸命で「耳」が留守になっている

ペダルが濁っているのに気づけない最大の理由は、脳のリソースがすべて「指」に持っていかれているからです。

中級以上の曲になると、音数が多くなり、リズムも複雑になります。指を動かすことに必死になると、心に余裕がなくなり、自分の出している音を客観的に聴く余裕がなくなります。

「弾くこと」と「聴くこと」はセットです。
耳を使って自由に響きをコントロールするためには、まず「指が勝手に動くレベル」まで徹底的にさらって、脳に余白(余裕)を作ること。

余裕があるからこそ、濁りに気づき、瞬時に足で修正をかけることができるのです。

原因2:「速い練習」が耳を退化させている

もう一つの大きな原因は、常にインテンポ(本番の速さ)でばかり練習していることです。

速いテンポで弾き飛ばしていると、音が重なって濁った瞬間があっても、そのまま次の音にかき消されてしまいます。これでは、耳が濁りに慣れてしまい、感覚が麻痺してしまいます。

ここで立ち返りたいのが「ゆっくり練習」の重要性です。
スローテンポで、一つひとつの音がどう重なり、ペダルを離した瞬間にどう音が消えるのか。

その減衰のプロセスまで注意深く「聴く」作業を積み重ねてください。

「聴く」とは、単に音が鳴っているのを確認することではありません。「理想の響きになっているか」を厳しくジャッジすることです。

この地道な作業こそが、中級者から上級者へ脱皮するための必須条件です。

上手な人ほど「音をよく聴け」としか言えない理由

私のピアノが本当に上手な友人に、「ピアノを教えるなら何を教える?」と聞いたことがあります。するとその子は少し考えてこう言いました。

「うーん、教えられないかも。だって『音をよく聴いて』としか言えないと思うから」

当時は笑ってしまいましたが、これは真理です。

もちろん指の形や脱力など教えられることは山ほどありますが、最終的にその演奏を芸術にするのは、本人の「聴く力」に他なりません

濁りに気づける耳さえあれば、ペダルの技術は後からついてきます。
逆に、耳が閉じていれば、どんなに高度なテクニックを学んでも、人の心を打つクリアな響きは生まれないのです。

「おおざっぱ」を卒業し、響きに潔癖になる

性格的なお話を少しすると、普段「細かいことは気にしない」という大らかなタイプの方は、ペダリングにおいてもその傾向が出やすいかもしれません。

日常生活では素敵な長所ですが、ピアノに向かう時だけは「響きに敏感」になってください。「少しでも濁ったら気持ち悪い」と感じるくらい、自分の出す音に対してシビアになる必要があります

まとめ:ペダルはあなたの「耳」の現れ

ペダルは、ピアノという楽器に魔法をかける道具です。しかし、その魔法を操るのは足ではなく、あなたの「耳」です。

  1. 指の練習を完璧にし、耳に余裕を作る。
  2. ゆっくり練習で、響きの変化を細部まで観察する。
  3. 「濁り」に対して誰よりも敏感になる。

この3つを意識するだけで、あなたの演奏は見違えるほどクリアで、色彩豊かなものに変わるはずです。

今日からペダルを踏むとき、足元ではなく、ピアノから広がる「響き」に全神経を集中させてみませんか?

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筆者プロフィール:

4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。


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