
「新しい曲の譜読みを始めたら、数十分で肩がバキバキに凝ってしまう……」
「練習中、頻繁に腕が痛くなる。手も痛い。」
そんな悩みをお持ちではありませんか?
私自身も新しい曲に挑戦する際、集中するあまり猛烈な肩こりに見舞われることがあります。
ピアノは優雅に見えて、実は全身を使うハードな活動です。
しかし、「疲れるのが当たり前」と放置してしまうのは危険です。そのままでは上達を妨げるだけでなく、最悪の場合、腱鞘炎などでピアノが弾けなくなってしまう恐れもあります。
今回は、ピアノで体が疲れてしまう原因と、最後まで楽に豊かな音で弾き続けるためのポイントを解説します。
筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。
疲れの正体は「姿勢」と「目」にある

まず、譜読みの時に肩が凝る最大の原因は、「楽譜に集中しすぎるあまり、姿勢が前のめりになっていること」です。
これはパソコン作業やスマホ操作を長時間続けている時と同じ状態です。
楽譜を必死に追おうとして首が前に出ると、数キロある頭の重さを首と肩だけで支えることになり、筋肉は一気に緊張します。
ピアノを弾く時の正しい姿勢は、長く、疲れずに演奏するための不可欠な土台です。
- 骨盤を立て、尾てい骨に体重を乗せ、重心を安定させる
- 楽譜との距離を適切に保ち、頭を下げない
- 足は肩幅くらいに開き、地面につける
「体が痛いな」と感じたら、それはフォームが崩れているサイン。
パソコン仕事と同じように、体に負担のかかる姿勢で何かに取り組むことは、自ら疲れを招いているようなものです。
まずは自分の姿勢を客観的にチェックしてみましょう。
「力いっぱい」が「いい音」とは限らない

初心者にありがちなのが、大きな音を出そうとして全身を固め、力任せに鍵盤を叩いてしまうことです。
しかし、残念ながら力んで出した音は、響きのない「硬い音」になってしまいます。
ピアノは本来、力でねじ伏せて弾く楽器ではありません。ここで重要になるのが「脱力(だつりょく)」です。
本当に豊かな音、遠くまで響く大きな音を出したいなら、腕の重みをそのまま指先に伝えるイメージを持つことが大切です。
人間の腕には、自分が思っている以上に相当な重みがあります。
【脱力を体感するワーク】
一度、完全に力を抜いた状態の自分の腕を、反対の手で持ち上げてみてください。そして、そのまま鍵盤の上に「放り投げて」みましょう。
どうでしょうか?驚くほど大きな音が鳴るはずです。
この「重力を使って音を鳴らす原理」を演奏に生かすことこそが、本当の脱力です。
難しいパッセージこそ「抜きどころ」を作る

もちろん、曲の中にはオクターブの連続や激しい跳躍など、物理的に腕が疲れる箇所もあります。
私自身も、オクターブが続くフレーズでは腕の疲労を感じます。
ここでプロや上級者が行っているのが、「意図的に力を抜く箇所を作る」という技術です。
一曲を通してずっと100%の力で弾き続けるのは不可能です。
音と音のわずかな隙間、フレーズの終わりなど、一瞬だけフッと筋肉を緩めるポイントを作ることで、腕のスタミナを維持できるようになります。
「難しいから力を入れる」のではなく、「難しいからこそ、どこで力を抜くか」を考える。
この視点を持つだけで、演奏の疲れやすさは劇的に変わります。
体からのSOSを無視しないで

もし、練習中に「指や手首が痛い」「しんどい」と感じたら、それは体からのSOSです。
「もっと練習しなければ」という根性論で弾き続けてはいけません。
間違った弾き方のまま無理を重ねると、腱鞘炎などの取り返しのつかない故障を招くリスクがあります。
痛みが走ったら、まずは手を止めること。そして、以下のポイントを振り返ってみてください。
- 呼吸が止まっていないか?
- 肩が上がっていないか?
- 休憩を取らずムキになって練習していないか?
休むことも練習のうちです。一度ピアノから離れ、リセットする勇気を持ちましょう。
長く楽しむための「メンテナンス」

ピアノを弾く体は、演奏家にとって最も大切な「楽器」の一部です。
長時間の練習には、適度な休憩とメンテナンスが欠かせません。
- 45~60分に一度は席を立ち、休憩を取る
- 肩甲骨を大きく回して、固まった背中をほぐす
- 遠くを見て目を休める
こうした簡単な体操を取り入れるだけで、集中力は回復し、体への負担はグッと軽減されます。
まとめ:健やかな体で、より良い音楽を

ピアノを弾くことは、本来とても楽しいはずのものです。
もし今、あなたが「ピアノは疲れるものだ」と感じているなら、それはあなたの技術のせいではなく、単に姿勢や力の使い方が間違っているだけかもしれません。
正しい姿勢、脱力の意識、そして適切なメンテナンス。
自分の体を大切に扱いながら、大好きな音楽をより長く、より深く楽しめる環境を整えていきましょう。
あなたのピアノライフが、もっと軽やかで豊かなものになりますように!
演奏会情報・無料個別相談はLINE公式アカウントから
演奏会への出演情報のご案内、ピアノや練習に関する個別のご相談はLINE公式アカウントでお知らせ・やり取りします。
ご相談は1対1のやり取りとなり、他の方に内容がみられることはありません。
配信は必要なときのみ行っていますので、お気軽にご登録ください。

筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

