
「コンクール、受けてみませんか?」
先生からそう声をかけられたとき、あるいは周りの子がコンクールに挑戦し始めたとき、多くの親御さんや生徒さんは悩みます。
「うちの子にできるかしら?」「もし結果が出なかったら傷つくのでは?」と。
私自身、小学校2年生のときからコンクールという舞台に立ち続けてきました。
華やかなステージの裏で、数えきれないほどの悔し涙を流し、時にはピアノを投げ出したくなるような苦しさも味わってきました。
そんな「コンクール経験者」であり「指導者」でもある私が今、
心から思うコンクールとの向き合い方、そして「出る・出ない」それぞれのメリットとデメリットについて、本音でお話ししたいと思います。
筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。
最初に問いかけたい「コンクールに出る目的は何ですか?」

コンクールを受けようか悩んでいる皆さんに、まず問いかけたいことがあります。
「コンクールに出る目的は、何ですか?」
- 大きな賞をとって自信をつけたい
- 目標を作って、もっと練習に励んでほしい
- 同年代のハイレベルな演奏を聴いて刺激をもらいたい
- いつもの先生とは違う視点のアドバイス(講評)がほしい
理由は人それぞれで良いのです。しかし、一つだけ忘れてはならないことがあります。
それは、「コンクールはあくまで成長のための『手段』であり、目的そのものではない」ということです。
賞をとることだけを「目的」にしてしまうと、結果が出なかったときにすべてが否定されたような気持ちになってしまいます。
大切なのは、そのプロセスで何を得るか。
そこを履き違えないことが、コンクールと健全に付き合う第一歩です。
コンクールに出るメリット:一生モノの「折れない心」を育てる

私が考えるコンクール出場の最大のメリットは、「本気で何かに挑戦し、自分と向き合う経験ができること」です。
今の時代、失敗を恐れて行動しないことは簡単です。しかし、この長い人生において、失敗を避けて通り続けるには、人生はあまりに長すぎます。
若いうちに「自分がどこまでやれるのか」を試し、ある程度の期間を本気で一つの目標に捧げる経験は、間違いなくその後の人生の財産になります。
やって後悔するよりも、やらない後悔の方がよっぽど苦しく、長く残ります。
もちろん、思うような結果が出ず「受けなきゃよかった」と落ち込むこともあるでしょう。
しかし、本当に大切なのは「上手に弾けたかどうか」よりも、「そのあと、どう行動するか」です。
私自身のピアノ人生を振り返っても、楽しかったことより、苦しかったことの方が圧倒的に多かったです。
結果が出なくて絶望したり、どうしても弾けないパッセージに涙したり。
それでも「もっと良くしたい」と行動し続けた結果、今の私があります。
コンクールは、私を間違いなく強くしてくれました。
自分自身の弱さと向き合い、それを乗り越えようとする力。これこそが、数字では測れない「心の成長」なのです。
コンクールに出るデメリット:比較の罠と「ウケる演奏」への偏り

一方で、コンクールには無視できないデメリットも存在します。
一つは、「否応なしに他人と比較され、優劣をつけられる」という点です。
音楽に本来、絶対的な優劣などありません。しかし、コンクールという場では点数がつき、順位が決まります。
どんなに強く持とうとしても、人と比べられることは精神的につらいものです。
ここを乗り越えるには、周囲の大人が「結果がすべてではない」というメッセージを送り続ける必要があります。
もう一つは、「学習の幅が狭まってしまう」ことです。
コンクールの曲を完璧に仕上げるために、何ヶ月もその曲ばかりを練習することになります。
その間、本来進むべき教本や、他の多くの名曲に触れる機会がストップしてしまいます。
さらに危惧すべきは、「コンクールで評価されるための演奏」を目指してしまうことです。
審査員にウケる弾き方、ミスをしないための守りの演奏……。
そうして本来の「音楽を表現する喜び」を失ってしまうと、たとえ賞は取れても、聴く人の心に残らない空虚な演奏になってしまいかねません。
コンクールに出ないメリット・デメリット:自由とメリハリ

では、コンクールに出ないという選択はどうでしょうか。
メリットは、何よりも「自分のペースで、のびのびと音楽を楽しめる」ことです。
比較のストレスにさらされることなく、多くの曲に触れることができます。
バロック、古典、ロマン派、近現代……。コンクールに縛られなければ、1年間に弾ける曲数は圧倒的に増えるでしょう。
幅広い音楽的知識を養うには、非常に良い環境と言えます。
デメリットは、やはり「成長の機会をつかみにくい」ことです。
明確な期限や目標がないと、どうしても日々の練習が「なんとなく」になりがちです。
本番という極限の集中状態を経験しないままでは、自分の限界を突破するような飛躍的な上達は、なかなか望めないのも事実です。
大切なのは「花開く瞬間」まで共に歩むこと

コンクールに出るにせよ、出ないにせよ、大切なのは「いかに音楽と触れ合い続け、楽しみ続けられるか」です。
コンクールで失敗したとき、そこからもう一歩踏み出せるかどうかが、成長の分岐点です。
私は、自信がなくて歌えない子や、本番で震えてしまう子と一緒に、何度も何度も歌い、寄り添ってきました。
一人で完璧にやらせようとするのではなく、長い時間をかけて、音楽の素晴らしさを脳と体に刷り込ませていく。
そうしていくと、いつか必ず「花開く瞬間」がやってきます。
コンクールはその瞬間を早めるための「刺激」にはなりますが、すべてではありません。
結果に一喜一憂せず、お子さんの歩幅に合わせて、
共に音楽を楽しんでいく。
そのプロセスこそが、何よりも尊いのだと私は信じています。
今、悩んでいるあなたへ。
もし「挑戦してみたい」という気持ちが少しでもあるのなら、結果を恐れずに飛び込んでみてください。
たとえどんな結果になろうとも、本気で向き合った時間は、あなたを裏切りません。そして、その挑戦の傍らには、いつも私が(先生が)います。
一緒に、あなただけの音楽を奏でていきましょう。
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筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

