
「好きなメロディーに自分で伴奏を付けてみたい」
「今弾いている曲がどうしてこんなに心地いいのか知りたい」
と思ったことはありませんか?
ピアノを弾くとき、ただ楽譜の通りに指を動かすだけではもったいない!
実は、クラシック音楽から童謡まで、ほとんどの曲には「型」があります。
その中心となるのが、和音記号の「Ⅰ・Ⅳ・Ⅴ」です。
今回は、高校の楽典で学び、現在は音楽教室で子どもたちにも教えている「魔法の3つの和音」について解説します。
これが分かると、世界の見え方がガラッと変わりますよ!
筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。
音楽には「帰る場所」がある。安心感の和音「Ⅰ(トニック)」

まずは、和音の主役である「Ⅰ(いち)」の和音から紹介しましょう。
ハ長調(Cメジャー)でいうと「ド・ミ・ソ」の和音です。
音階の一番初めの音が根音(ルート)にくるこの和音を、専門用語で「トニック(T)」と呼びます。
トニックの役割を一言でいうなら、「家のような安心感」です。
曲が始まるとき、そして最後にかっこよく終わるとき、必ずこのトニックに戻ってきます。
この和音が鳴ると、私たちの耳は「あぁ、落ち着くな」「ここで終わりだな」とホッとするようにできています。
ちなみに、少し切ない雰囲気の「Ⅵ(ろく)」の和音も、このトニックの仲間です。
どっしりとした推進力!目的地の和音「Ⅴ(ドミナント)」

次に大切なのが「Ⅴ(ご)」の和音です。
ハ長調なら「ソ・シ・レ」。これを「ドミナント(D)」といいます。
ドミナントは、非常にどっしりとした、エネルギーに満ちた和音です。
その最大の特徴は、「次に必ず家(トニック)に帰りたくなる」という強い性質を持っていること。
皆さんも、曲の途中で「ジャーン」と盛り上がって、最後に「ジャーン!」と落ち着く流れを感じたことはありませんか?
その「落ち着く直前」に鳴っているのが、このドミナントです。
いわば、「目的地」のような役割を担っています。
道を彩る寄り道の和音「Ⅳ(サブドミナント)」

最後は、寄り道を楽しむ「Ⅳ(よん)」の和音です。
ハ長調なら「ファ・ラ・ド」。「サブドミナント(S)」と呼ばれます。
トニック(家)からドミナント(目的地)へ向かうとき、まっすぐ行くのもいいですが、少し寄り道をして景色を楽しみたくなりますよね。
そんな風に音楽に色彩や広がりを与えてくれるのがサブドミナントです。
「Ⅱ(に)」の和音もこの仲間(代理和音)としてよく使われます。
サブドミナントがあることで、音楽は単調にならず、ドラマチックに展開していくのです。
【実践】チューリップで和音を当てはめてみよう!

さて、ここで誰もが知っている童謡「チューリップ」を使って、実際にどう伴奏を付けるか考えてみましょう。ハ長調(ドレミ…)で考えてみます。
① さいた さいた(ドレミ ドレミ)ここは曲の始まり。まずは「家(Ⅰ:トニック)」からスタートです。

② チューリップのはなが(ソミレドレミレ)ここで少し動きますね。最後が「レ」で終わって「まだ続きそう」な感じがしませんか?ここは「目的地(Ⅴ:ドミナント)」にいる証です。

③ ならんだ ならんだ(ドレミ ドレミ)再び「家(Ⅰ:トニック)」に戻ってきて安心します。

④ あかしろきいろ(ソミレドレミド)また「目的地(Ⅴ:ドミナント)」へ向かって、「家(Ⅰ:トニック)」に戻って安心します。

⑤ どの花みても(ソソミソララソ)ここがポイント!「(どの花)みて…」の部分で寄り道します。「サブドミナント(Ⅳ)」を入れ、そこから「家(Ⅰ)」に戻ります。

⑥きれいだな(ミミレレド)もう一度「目的地(Ⅴ)」を通ってしっかり「家(Ⅰ)」に帰ります。

いかがでしょうか?
「Ⅰ・Ⅳ・Ⅴ」を使い分けるだけで、単調なメロディーに物語が生まれるのです。
子どもでもできる!たった3つの「伴奏の型」

「和音なんて難しそう」と思うかもしれませんが、実はとってもシンプル。
基本のフレーズは、以下の3つのパターンの組み合わせでできています。
- T → D → T(家 → 目的地 → 家)
- T → S → T(家 → 寄り道 → 家)
- T → S → D → T(家 → 寄り道 → 目的地 → 家)
この順番は音楽の黄金ルールです。
どんなに複雑に見えるクラシックの名曲も、骨組みをバラバラにしてみると、基本はこの並びになっています。
他の和音は、この基本の骨組みに「色付け」をしているだけなのです。
私は現在、音楽教室で子どもたちにもこの話をしています。
すると、まだ習い始めたばかりの子でも、「あ、ここは『家(T)』だね!」「次は『目的地(D)』にしよう!」と、驚くほど簡単に童謡などに伴奏を付けられるようになるんです。
「アナリーゼ」でピアノがもっと面白くなる!

このように、和音の種類や曲の構造を分析することを、音楽の世界では「アナリーゼ(楽曲分析)」と呼びます。
「アナリーゼ」と聞くと専門的で難しく感じるかもしれませんが、要は「音楽の設計図を読み解く宝探し」のようなものです。
「ここはトニックかな?ドミナントかな?」と興味を持って楽譜を見てみてください。
「だからここはこんなに盛り上がるんだ!」
「ここで一瞬寄り道(サブドミナント)するから、切ない気持ちになるんだ!」
そんな発見があると、今までただの記号だった楽譜が、作曲家からのラブレターのように見えてきます。
まとめ:まずは「ドミソ」と「ソシレ」から始めよう

まずは、あなたの好きな短い曲や、今練習している曲のフレーズを観察してみてください。
「意外とシンプルなんだな」と感じられたら、それはあなたがアナリーゼの第一歩を踏み出した証拠です。
基本のⅠ・Ⅳ・Ⅴを知るだけで、伴奏はもっと自由になり、演奏はもっと深くなります。
次にピアノの前に座るときは、ぜひ「家(トニック)」と「目的地(ドミナント)」を意識してみてくださいね。
きっと、あなたの奏でる音が今まで以上に生き生きと響き始めるはずです!
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筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

