♯41 ピアノ初心者にもわかる!調の関係性の基礎【近親調】

楽典・音楽史

音楽の色や雰囲気を作る「調」には、主役となる調を中心に、それぞれつながりがあり名前がついています。

主調・属調・下属調・同主調・平行調といった「調の関係性」を理解すると、曲の流れがぐっと分かりやすくなり、表現力も豊かになります。

ただ音を追うだけでなく、音楽を理論の視点から楽しめるようになるのです。

4歳からピアノを始めて音高・音大と進み、約30人の生徒にピアノを教えながら現役で演奏活動を続ける私が、難しい専門用語をやさしく解説しながら、調の関係性が曲の中でどのように働いているのかを紹介します。

主調とは?

主調とは、その曲の基盤となる調のことを表します。

だいだいの曲は主調で始まり、主調で終わります。

例えば、

ハ長調で始まる→転調→ハ長調に戻って終わる

といった具合です。

この曲の主調は、「ハ長調」になります。

そして、主調はこれから説明する関係調、「属調・下属調・同主調・平行調」を考える際に、中心となる調になります。

属調とは?

属調とは、主調からみて「5度上の調」のことです。

先ほどのハ長調が主調の例からいうと、

(主調)ハ長調→(属調)ト長調

ということです。

主調・属調、そしてこの後説明する下属調は、長調・短調が統一されます。つまり、

主調が長調なら、属調・下属調も長調。

主調が短調なら、属調・下属調も短調。

となります。

「属調」の「属」とはどこからきたのか

主音からみて、5度上の音のことを「属音」といいます。

〈例〉ハ長調

ハ長調の主音〈ド〉→ハ長調の属音〈ソ〉

属音から始まる調なので「属調」となります。


下属調とは?

下属調とは、主調からみて「5度下の調」のことです。

引き続きハ長調が主調の例からいうと、

(主調)ハ長調→(下属調)ヘ長調

となります。

属調の反対向きと覚えるとわかりやすいですね。

ちなみに主音からみて5度下の音は「下属音」といいます。


同主調とは?

同主調は、主調と同じ主音を持つ調のことを表します。

またハ長調を例にあげると、

(主調)ハ長調→(同主調)ハ短調

となります。

主調と同主調の関係は、

主調が長調なら、同主調は短調。

主調が短調なら、同主調は長調。

と長調・短調が入れ替わります。

同じ主音を持つ調同士ですが、雰囲気はまったく異なります。

ハ長調なら、♯・♭無し。

ハ短調なら、シとミとラが♭になる。(自然短音階の場合)

これだけで、同じ主音を持つ調であっても響きが変わってきます。


平行調とは?

平行調とは、主調と調号(♯や♭の数)が同じで、主音が異なる調のことを表します。

ハ長調なら、

(主調)ハ長調→(平行調)イ短調

となります。

共通しているのは、調号が何もつかないところです。

もうひとつ例にあげてみましょう。

ト長調が主調だった場合、

(主調)ト長調→(平行調)ホ短調

となります。

ト長調とホ短調の共通している点は、調号が♯1個であることです。


ソナタ形式における調の関係性

具体的にこれらの調の関係性がどのように生かされているのか、ソナタ形式を例にみていきたいと思います。

以下、ソナタ形式の復習です。

ソナタ形式は提示部(主題2つ)、展開部、再現部から成っています。

こちらの記事では触れませんでしたが、実はソナタ形式には調の関係性においても決まりがあります。

ー提示部ー

第1主題(主調)→第2主題(属調 or 平行調)

ー展開部ー

さまざまな調に転調、発展する

ー再現部ー

第1主題(主調)→第2主題(主調 or 同主調)

提示部と再現部に注目してほしいのですが、第1主題は同じ主調で、第2主題が提示部と再現部で異なることです。

再現部は提示部を再現する部分ですが、提示部とまったく同じことを繰り返すのではなく、調性で変化を加えています。

そして展開部以外は、すべて主調と関係のある調に移動していることも注目ポイントです。

主調に関係する属調・下属調・同主調・平行調をまとめて、「近親調」といいます。

「ソナタ形式は、このような調の関係性で作られているんだ」と理解できると、作品へのアプローチがしやすくなりますね。


調の関係性をしっかり知っておくことで、作品への理解度や解像度が上がります。

「ただ音を追う」のではなく、そういった調の関係性にも意識を向けて演奏しましょう。

楽譜を眺めて、「こことここの調の関係性はどれがあてはまるかな?」と考えるのも楽しいです。

そうやって考え発見していくことで、曲への理解をますます深められます

ぜひ、今日の記事を参考にしてもらえたらうれしいです。

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