
「もしも、あの時ピアノに出会っていなかったら、今頃何をしていたんだろう?」
ふとした瞬間に、そんな想像をすることがあります。
私は幼少期からピアノ一筋でしたが、実は器用なタイプではありませんでした。それでも、目の前のことに一生懸命取り組むこと、そして「負けたくない」という根性は人一倍強かったように思います。
今回は、私の意外な(?)過去の姿や、人生の大きな岐路となった大学時代の決断、そして音楽が教えてくれた「後悔しない生き方」について綴ってみたいと思います。
筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。
ピアノ以外の習い事はゼロ。でも「負けず嫌い」は人一倍

私の子供時代を振り返ると、習い事はピアノしかしていませんでした。
決して器用な方ではありませんでしたが、一度決めたら徹底的に取り組むのが好きな性格でした。
学校生活では勉強にもそれなりに力を入れていましたし、硬筆や習字、さらには自画像などの美術作品でも賞をいただくなど、コツコツと積み上げる作業には喜びを感じていた記憶があります。
また、意外に思われるかもしれませんが、持久走など長距離走も得意でした。
歳のはなれた兄たちと公園で走り回っていた影響もあり、粘り強い性格と負けず嫌いが相まって、一番を取ることに情熱を燃やしていました。
この「粘り強さ」と「負けず嫌い」という性格が、後にピアノという険しい道を進む上での大きな武器になったのは間違いありません。
「ピアニストになりたい」という夢の正体

幼稚園の頃の動画を見ると、私ははっきりと「将来の夢はピアニスト」と答えています。
でも、今だから正直に言えることがあります。
それは、心底ピアニストという職業を理解して憧れていたわけではなく、単に「最初に与えられたのがピアノだったから」という理由が大きかったのです。
もし、私が最初に出会ったのがスポーツだったら、きっと迷わず「スポーツ選手になりたい」と言っていたでしょう。
ピアノを習っていなかったら、私は普通に勉強を頑張り、いい会社に入って、バリバリと稼ぐことを目標にするような、現実的で野心的な人生を歩んでいたのではないかと想像します。
そんな私が、なぜ「たまたま与えられたピアノ」を一生の仕事にするに至ったのか。
それは、何度も壁にぶつかり、打ちのめされた経験があったからです。
「与えられた道」から「自ら選ぶ道」へ

コンクールで思うような結果が出ず、自分の未熟さに打ちのめされるたびに、私は自分の心と深く向き合わざるを得ませんでした。
「なぜ私はこんなに苦しい思いをしてまで弾いているのか?」
「本当にこの道でいいのか?」
葛藤を繰り返す中で、不思議と「辞める」という選択肢は消えていきました。
困難に触れるたびに、逆に「もっと深く知りたい」「この世界で生きていきたい」という想いが強まり、いつしかそれは「与えられた夢」から「自ら掴み取りたい夢」へと変わっていったのです。
最大の転機は、大学3年生の時でした。
周りが就職活動を意識し始める中、私も「ピアノを辞めて一般企業へ就職する」という選択肢を真剣に考えました。
安定した道、確実な未来。それはとても魅力的に見えました。
しかし、想像してみたのです。数年後、数十年後の自分が、ピアノのない生活の中で何を思うかを。
「安全な道」より「後悔のない挑戦」を

〈ハンガリーのリスト音楽院に短期留学した時〉
その時、私の心が出した答えは明確でした。
「今ここでピアノをやめたら、私は一生後悔する」
私は安全な道を進むことよりも、たとえ険しくても挑戦し続け、後悔のない人生を送りたいと心から思いました。
ピアノを通して、私は本当に多くのことを学びました。
自分の心の奥底にあるドロドロとした感情や、逆に震えるほどの喜び。そして、数百年前の作曲家が楽譜に込めた魂の叫び。
音楽を通して、言葉では言い表せない世界があることを知りました。
また、音楽は素敵な仲間との出会いも運んできてくれました。
一緒に音を奏でる喜び、一つの作品を作り上げる一体感。ともに切磋琢磨した日々。どれも私にとってかけがえのない宝物です。
来る日も来る日も、弾けない箇所と向き合う孤独な練習。
でも、それがふっと指に馴染み、思うように弾けた瞬間の喜びは何物にも代えがたいものです。
そして、舞台の上で拍手をいただき、「感動した」という言葉をかけていただいた時、私の心はこれ以上ない幸福感で満たされます。
今世をやり切る、という覚悟

〈昨年11月に行ったソロリサイタルの時〉
ピアノを通して学んだのは、単なる技術ではありません。
それは「精神」そのものでした。自分を律すること、深く考えること、そして他者の心に寄り添うこと。
よく「生まれ変わってもまた同じことをしたいですか?」という質問がありますが、私の答えは少し違います。
私は、来世ではなく「今世」で、ピアノと共にこれだけやり切った!と思えるまで走り抜けたいと思っています。
今この瞬間を全力で、音楽と共に生き切ること。
もし、今世で全てをやり切ることができたら、来世は全く違うことをしている気がします(笑)。
それくらい、今の人生でピアノという存在に全てを注ぎ込みたいのです。
ピアノが私に教えてくれたのは、技術以上に「生きる姿勢」そのものでした。
これからも、この素晴らしい世界を生徒の皆さんと共有し、共に成長していけることを心から幸せに感じています。
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筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

