「感情をこめる」って具体的にどういうこと?
ピアノを習っていると先生から「もっと感情をこめて弾いて」と言われることがあります。
でも「感情をこめる」って、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?
泣いたり笑ったりするわけではないし、ただ強く弾けばいいということでもありません。
実は「感情をこめる」というのは、音楽の流れに沿って表情をつけ、聴き手に物語を伝えることです。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、初心者でも理解できる「感情をこめる演奏」の具体的な方法をわかりやすくご紹介します。
感情をこめたピアノ演奏とは?具体的な方法とコツ
「感情をこめる」とは音楽に物語を与えること
ピアノ演奏に感情をこめるとは、単に気持ちを込めて弾くことではなく、音に表情をつけて聴き手にストーリーを感じさせることです。
楽譜には音の高さや長さだけでなく、強弱記号やテンポの指示も書かれています。
「作曲家がなぜそのように書いたのか」
これらを読み取り、自分のイメージを重ねて表現することで「感情表現」になります。
感情をこめるための3つの基本ポイント
強弱(ダイナミクス)を意識する
例えば同じメロディでも、すべて同じ音量で弾いたら「平板」に聞こえます。
・盛り上がる部分で少し強く
・落ち着く部分で少し弱く
と変化をつけるだけで、演奏に表情が生まれます。
決して強弱だけでは感情表現にはつながりませんが、ひとつの要素ではあることは間違いありません。
フレーズの方向を感じる
メロディーは言葉のように「始まり」と「終わり」があります。
音形が上がるときは少しクレッシェンド、下がるときはデクレッシェンドすると自然な流れが出ます。
これは初心者でもすぐに取り入れられる「感情表現の第一歩」です。
曲のイメージを考える
曲を練習する前に「この曲はどんな場面を描いているだろう?」と想像してみましょう。
・バッハのインヴェンション → 会話のように
・ショパンのノクターン → 夜に語りかけるように
・ドビュッシー「月の光」 → 静かな月明かりを眺めるように
こうしたイメージを持つことで、自然に演奏に感情が宿ります。
実際の曲での例
ベートーヴェン《エリーゼのために》
冒頭の優しい旋律は、ただ音を並べるのではなく「大切な人を思い出して語りかける」気持ちで弾くと、柔らかい音色になります。

ショパン《ノクターン第2番》
歌うような旋律は、クレッシェンドとデクレッシェンドを細かくつけることで「心の揺れ」が表現されます。

初心者でもできる練習法
初心者の人でもすぐにできる「演奏に感情を込める」練習法をお伝えします。
- 録音して聴き返し、「単調に聞こえないか」を確認する
- 歌詞をつけて歌うように弾いてみる
- 曲のイメージや感情を楽譜に色鉛筆で書き込む
こうした小さな工夫で、演奏に感情が宿るようになります。
感情を込めるだけではだめです。実際に音が変わらなくては意味がありません。
感情表現にまつわる私の経験談
「感情をこめて弾く」ことは、私にとっても長い課題でした。
中高生くらいの私は音をはめることに必死になっていて、演奏に感情をこめることができないでいました。
「ただ指が動いているだけ」
そんなふうに思われていたこともあったと思います。
「感じることができない人は、ずっと感じることはできない。」
第三者から、実際にそう言われたこともあります。
そんな私が変われたのは、できていない自分を強く認識して、絵を見たり音楽を聴いたり自然をめでたり、そういうちょっとしたことに感動する自分の心に意識を向けるようにしました。
そうして、演奏に感情をのせられるようにはなったのですが、さらなる問題が立ちはだかりました。
それは、感情的になりすぎて「頭を使った練習ができていない」という課題でした。
長くなるのでここで詳しく話すことは避けますが、結論から言うと、気持ちをこめたつもりになって実際の音は何ひとつ変わっていない、というものでした。
「感じ取った感情をどのようにタッチに落とし込むのか」という具体的な方法を考えず、ただ自分の気持ちだけ盛り上がって感情表現しているつもりでいました。
私は、これらの経験から
・感情を込めるとはどういうことか
・自分の気持ちが熱いだけでは、音楽として感情表現できていない
ということを学びました。
皆さんはどちらのタイプの演奏をしていますか?
真に「感情をこめて弾く」とは、感情と頭(冷静さ)、どちらも大切なのです。
まとめ
ピアノに「感情をこめる」とは、ただ感情的に弾くことではなく、音楽に表情を与えて物語を伝えることです。
初心者の方はまず、
- 強弱の変化
- フレーズの方向性
- 曲のイメージ
この3つを意識することから始めましょう。
「感情表現」は特別な技術ではなく、誰でも取り入れられる演奏の工夫です。
今日の練習から少しずつ取り入れて、あなたの音楽をもっと豊かにしてみてください。
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