♯222 先生も実は「聴音」が大の苦手だった?ヤマハ専門コースで挫折しかけた私が克服した意外な練習法


「ピアノの先生なら、聴いた音はすぐに楽譜に書けるんでしょう?」

そう思われるかもしれません。でも、告白します。私は子供の頃、ソルフェージュの中でも「聴音(ちょうおん)」が本当に、本当に苦手でした

周りの友達がスラスラと音符を書き込んでいく中、私だけが真っ白な五線譜を前に立ち尽くし、こっそり隣の席の友達のノートを覗き見ては丸写しする……。

そんな「落ちこぼれ」の時期があったのです。

今回は、不器用で新しいことがすぐに理解できなかった私が、どうやって聴音の壁を乗り越えたのか。 その意外な練習法と、今だからこそわかる「上達のヒントをお話しします。

筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

ヤマハ専門コースでの「劣等感」と、内緒の丸写し

私のピアノ人生の始まりは、ヤマハ音楽教室でした。小学校1年生からは「専門コース」という、少し進度の速いクラスに所属することになりました。

そこではピアノの演奏だけでなく、作曲やソルフェージュ、そして「聴音」のレッスンも本格的に行われていました

私はもともと、新しいことを始めるときに人より時間がかかる、不器用なタイプです。

聴音の授業が始まっても、先生が何を言っているのか、どうやって音を紙に書けばいいのか、さっぱり分かりませんでした

クラスは7〜8人のグループレッスン。先生がピアノで弾いたメロディをみんなが一斉に書き取ります。

「はい、できた人から見せて」という先生の声が響く中、私のノートはいつも白紙に近い状態。

情けなくて、どうしていいか分からなかった私は、いつも友達の回答を見せてもらい、それを必死に写してなんとか「丸」をもらっていました。

先生にはバレていたかもしれませんが、当時の私はそれくらい追い詰められていたのです。

「音が聞こえない」のではなく「書き方」を知らなかった

そんな私に転機が訪れたのは、母(あるいは先生だったかもしれません)からのあるアドバイスがきっかけでした。

「今弾いているバッハの楽譜を、そのままノートに書き写してみたら?」

それは、聴いた音を書くのではなく、目の前にある楽譜をただ「丸写し」するという地道な作業でした。

当時の私はすでにバッハの曲を何曲か練習しており、そのメロディやリズムは耳と指で覚えていました。

いざ書き写しを始めてみると、驚くべき発見がありました。

「あ、このリズムはこうやって書くのか!」
「この音の高さは、五線譜のここになるんだ」

それまでバラバラだった「自分が知っている音」と「楽譜のルール」が、書き写すという作業を通じて、自分の中で初めてカチッと一致したのです。

私は、音が聞き取れなかったわけではありませんでした。

「聞き取った音を、どうやって楽譜という言語に変換してアウトプットするか」という、書き方のルールを知らなかっただけ だったのです。

聴音の壁を壊す「写譜(しゃふ)」の魔法

もし、今のあなたが、あるいはあなたのお子さんが「聴音が苦手」で悩んでいるなら、一度立ち止まって分析してみてください。

原因は、「音が聞き取れない(インプットの悩み)」ことでしょうか?
それとも、「書き方がわからない(アウトプットの悩み)」ことでしょうか?

もし「音そのものがドレミで聞こえてこない」という場合は、前々回の記事で紹介した「視唱(ししょう)」を重点的に行い、まずは音感を育てる必要があります。
[♯220 ソルフェージュとは?ピアノ上達に欠かせない理由と「視唱・聴音」の具体的な内容を解説]

しかし、もし「音はなんとなくわかるけれど、リズムや音符にするのが分からない」というのであれば、私がやった「今弾いている曲の書き写し」が最強の処方箋になります

書き写し練習のメリット

  • リズムのルールが身につく: 4分音符や8分音符の組み合わせが、視覚と手の動きで一致します。
  • 楽譜にどのようなことが書き込まれているか分かる: 細かいところまで目がいくようになります。
  • 「書くスピード」が上がる: 迷わず音符を書けるようになると、聴音の限られた時間内に余裕が生まれます。

最初の「ぎこちなさ」は、成長の前触れ

最初は、一小節書き写すのにも時間がかかるかもしれません。とてもぎこちなく、めんどくさい作業に感じるでしょう。

でも、安心してください。そこだけを取り出して、何度も繰り返しているうちに、必ずスムーズに書けるようになります

かつて友達のノートを写していた私が、いつの間にか自力で聴音をこなせるようになり、音大に入り、今ではこうしてピアノを教えているのがその証拠です。

いきなり高いハードルを越えようとしなくて大丈夫。
まずは4小節。まずはドレミだけの簡単な曲から。

「最初の苦労」におびえず、一歩ずつ進んでいけば、ある日突然、霧が晴れるように「あ、わかる!」という瞬間がやってきます。

まとめ:先生もみんな、最初は「できない」から始まった

ピアノの先生は、最初から何でもできたわけではありません。みんな、どこかで壁にぶつかり、悩み、泥臭い練習を積み重ねて今があります

「聴音ができない私には、音楽の才能はないんだ」だなんて思わないでください。

それは単に、あなたに合った練習法にまだ出会っていないだけかもしれません。

もし、どうしても聴音でつまずいてしまったら、楽譜をじっくり「書き写して」みてください。

その地道な一歩が、あなたの力になるはずです。

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筆者プロフィール:

4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。


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