♯29 速く弾き飛ばすな、キケン。

練習・演奏方法

皆さんは、お家や練習室でどのように練習していますか?

細かい部分練習はしていますか?

速い通しの練習ばかりしていませんか?

人が耳で追うことができる速度には、限界があります

これは音楽だけではなく、会話でも同じです。(ましてや外国語だったらなおさらです。)

速い練習ばかりしていると、いろんな弊害が起こります。

この記事を読んでわかること

速く弾く練習ばかりしていると、どのようなことになってしまうのか。

結論:練習においても本番においても、いいこと無し。荒っぽい演奏になって、聴いている人には内容がまったく伝わらない。

どうして速く弾き飛ばすばかりの練習がだめなのかしっかり頭で理解して、そうならないように意識して練習に取り組みましょう。

4歳からピアノを始めて音高・音大と進み、約30人の生徒にピアノを教えながら現役で演奏活動を続ける私が、詳しく解説します。

練習編

速いと細かい音符を聴けない

まず、冒頭でも述べたように速いと細かい部分を聴き取ることができません。

部分に分けてゆっくり聴きながら練習している人は、速さが上がっても聴き取ることができます。

以前こちらの記事でもお伝えしましたが、

ただ音をきくのは「聞く」であって、注意深くきく「聴く」ではありません。

注意深く「聴く」には、ひとつひとつゆっくりじっくり耳を傾ける必要があります。

実は、ちゃんと弾けていないところがある

速く弾く練習ばかりをしていると、どうしても細かい部分がおざなりになってしまうことがあります。

速いテンポでは弾けているので弾けたつもりになってしまうのですが、虫眼鏡のように細かい部分に注目すると「弾けてなくない?音が埋もれているよ。」ということが起こりえます。

テクニックの面においても今一度ゆっくり確認することが大事です。

荒っぽい演奏になる

これも上記と似た内容ですが、速い練習しかしていない人の演奏は、玄人には一発で分かります。

なぜなら、演奏がとても荒っぽいからです。

・細かい音符を平気で弾き飛ばしている。

・音楽が前のめりになりがち。

玄人でなくとも、上記を意識して聴くとわかるかもしれません。

少なくとも良い印象は感じられないでしょう。

本番編

爆速になる可能性がある

練習で速い練習を続けていると、本番でものすごい速さになることがあります。

だれしも緊張で演奏が速くなることがあります。

鼓動が速くなると同時に、いつも通り演奏したはずなのにあとで録音を聞き返すと、演奏がとんでもない速さになっていて「よく指が回ったな」と思うこともしばしばです。

すでに練習で速い練習ばかりしている人が、本番で緊張したらどうなるか。

指が回らないくらいの速さになってしまって、細かいゆっくり練習によるテクニックの確認もしていないから、演奏が崩壊する。

最悪の場合、演奏が止まってしまう。

ホールで速く弾きすぎると、なに弾いているのか聴いている人がわからない

自分はいい気持ちになって速く弾けたとしても、聴いている人に伝わっていなかったら意味がありません。

会話も音楽もコミュニケーションなので、相手に伝わるように、届くようにしなければなりません。

特にホールだと、程度の差こそあれど残響がある場合がほとんどです。

まだ前の響きが残っている状態で弾丸で演奏しても、音の暴力にしかなりえない可能性があります。

緊張という心理状態ホールという環境でベストなパフォーマンスをするために、普段の練習から逆算して取り組むべきです。

速く弾き飛ばしていた私の実際の失敗体験

レッスンで「演奏が雑になっている」と言われた経験

これを言われた当時の私は、仕事で多忙を極めていてあまり自分の練習に時間を割けていない状況でした。

それでも「なんとか練習しなければ」と焦りもあり、やみくもに指を動かしていました。

そんなときに受けた個人レッスンで先生に言われました。

「速い練習ばかりしているんじゃない?演奏が雑になっているよ。」と。

まさに先生のおっしゃる通りでした。

焦りから弾くということばかりにとらわれて、聴くことや音を作るということをしていませんでした。

これは忘れたくない痛い経験です。

コンクール後、審査員の先生に「速すぎる」と言われた経験

とあるコンクールを受けたときのこと。

そのコンクールは、最後に審査員の先生から直接講評をきけることになっていました。

何人かの先生に開口一番言われたのは「あなたの演奏は速すぎた」でした。

言われたとき私は「え、私はいつも通り、練習通り弾いたのに。」と思っていました。

あとで録画されたものを聴くと、かなりの速さで弾いていたことを自分でも認識しました。

(それから長期間経った今でも、聴くと速いなーと思います。)

おそらくこれも気持ちの焦りや不安から普段より速くなってしまっていたのだろうと推測できます。

本番を想定した練習、細かい練習が足りなかったと今では反省しています。

練習や本番で速く弾き飛ばすとどのようなことになるのか、お伝えしました。

練習編

・速いと細かい音符を聴けない

・実は、ちゃんと弾けていないところがある

・荒っぽい演奏になる

本番編

・爆速になる可能性がある

・ホールで速く弾きすぎると、なに弾いているのか聴いている人がわからない

以上を踏まえて、ぜひ皆さんには速く弾く練習だけではなく、立ち止まって細かいところを虫眼鏡でみるような練習をしてほしいと思います。

私もこれからも実践できるように頑張ります。

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