「本番前だから、もっと弾かなきゃ」と思って練習しているうちに、
いつの間にかテンポが走ったり、音が荒くなったり…。
気づけば「前より下手になったかも」と感じたことはありませんか?
実は、ピアノの練習では“弾き込みすぎ”が演奏を崩す原因になることがあります。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
本番前に取り入れたい「整理練習」について紹介します。
なぜ“弾き込みすぎ”で演奏が崩れるのか
練習を重ねること自体は悪いことではありません。
しかし、ただ回数を重ねるだけの練習は、音楽を「機械的」にしてしまうことがあります。
弾き込みすぎると、
- 指が自動的に動いて、考えずに弾くようになる
- 細部のバランス(テンポ・強弱・フレーズ感)が乱れる
- “慣れ”によって緊張感や新鮮さが失われる
といったことが起こります。
つまり、頭ではなく手で弾いてしまう状態です。
特に注意したいのは「テンポ」と「バランス」
例えば、ショパン《ノクターン Op.9-2》のような繊細な曲では、
弾き込みすぎるうちにテンポが走り、静けさが失われることがあります。
また、バッハの《インヴェンション》のような
複数の旋律が交じり合うような曲では、声部のバランスが崩れてしまうことがあります。
繰り返すうちに、そういった要素が雑になっていくのです。
「整理練習」とは? ― 弾き込みの“後”に必要な時間
整理練習とは、弾き込みで積み上げたものをいったん「整える」作業です。
これは、スポーツでいうクールダウンのようなもの。
走り続けた体を一度落ち着かせることで、次に備えられるように、
ピアノでも音や流れを一度“冷静に見直す”ことで、演奏が整います。
整理練習でやることの一例
- テンポを半分に落として弾く
→ 音の重なりやペダルの濁りを確認する。 - 一段ずつ、フレーズを区切って弾く
→ どこで呼吸をするか、自然な流れを見直す。 - 片手練習に戻す
→ 細かい動きを再確認。リズムが安定すると全体が引き締まる。 - 録音して聴く
→ 自分では気づけない「走り」「雑さ」「音のムラ」が客観的にわかる。 - 楽譜を眺める
→ 作曲家の意図をあらためて気づき、考える。
こうした整理の時間を設けることで、演奏全体が再び“意識のある音楽”に戻っていきます。
整理練習で見えてくる「音楽の本質」
整理練習をしていると、
「あれ、このフレーズはこんなに短かったんだ」
「この和音、こんなに深い響きがあったんだ」
といった発見が生まれます。
それは、作曲家が書いた音の“意味”に気づく瞬間でもあります。
弾き込みの先にあるのは、音の再発見なのです。
本番前こそ“静かな練習”を
本番直前は、つい“仕上げのために弾く”ことに集中しがちですが、
むしろその時期こそ「静かに整える」時間が大切です。
モーツァルト《ソナタ K.330》第2楽章のような曲では、一音の響きを味わいながら弾くだけでも表情が豊かになります。

筆者の体験談
焦って練習していいことなど、ひとつもありません。
私も弾き込みすぎて前より下手になった経験がたくさんあります。
以前、ピアノの先生にこう言われたことがあります。
「本番に近づくにつれて、練習量を減らしていきなさい。」
弾き込みすぎると筋肉も固まるし、焦って弾いて演奏が雑になります。
不安に囚われているなと感じたら、深呼吸をして細かい部分を落ち着いて練習してみましょう。
私も本番が近い(約2週間後の11/1にソロリサイタル)ですが、これを意識して調整しています。
まとめ ― 「弾きすぎ」より「整える時間」を
ピアノは、練習量だけではなく、その中で「どれだけ“聴けたか”、“考えられたか”」が大切です。
弾き込みは必要な過程ですが、
最後に「整理練習」を取り入れることで、演奏はより安定し、音楽的になります。
焦らず、落ち着いて、音を整える時間を持つことが、本番へのいちばんの準備です。
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