ピアノの練習でよくある悩みのひとつが、
「ゆっくりなら完璧なのに、テンポを上げると崩れてしまう」というもの。
ミスタッチが増えたり、リズムが乱れたり、手がバタついたり…。
同じ曲なのに、テンポが上がるだけでまるで別の曲のようになってしまう経験、ありませんか?
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
「なぜ速く弾くと崩れるのか」「どう練習すれば安定するのか」を具体的に解説します。
原因①:指の動きが「次の準備」をしていない
ゆっくり弾けるときは、頭で指に命令を出すのに十分な時間があります。
ですが、テンポが速くなると指が音の準備をする時間が足りなくなるのです。
たとえばショパンのワルツ第6番「子犬のワルツ」のような細かい音の連なりでは、1音1音を考えていては間に合いません。
「次のポジションを先に準備する」意識を持つことで、指が滑らかに動くようになります。
練習法:
ゆっくりのテンポで「次の音を準備しながら弾く」練習をしてみましょう。
鍵盤の上で指を移動させておく“先取り動作”を習慣づけることが大切です。
原因②:筋肉の使い方が速さに対応していない
速く弾こうとすると、多くの人が力で押さえ込もうとします。
しかし、筋肉は「速い動き」と「力を入れる動き」を同時にこなせません。
力んだ状態では、指が重くなりスピードが出ません。
また、腕や手首に余計な力が入ることで音も固くなってしまいます。
練習法:
まず、力を抜いた状態で音を出す感覚を身につけましょう。
・鍵盤の重みを感じながら、腕の重さを使って音を出す
・音を出した後、すぐに脱力する
原因③:頭の中のテンポ感が“速さに追いついていない”
速いテンポで弾くとき、手だけが先走り、頭で音をイメージできていないことがあります。
音楽の流れを体が覚えていない状態でスピードを上げても、正確に弾けるはずがありません。
練習法:
・速いテンポの録音を聴いて、頭でテンポ感をイメージしておく
・実際に弾く前に「速いテンポでの頭の中の再生」をしておく
さらに効果的なのが、「片手練習+テンポを上げる」方法。
両手だと処理が追いつかない部分も、片手ならスピード感を安全に練習できます。
たとえばモーツァルト《ソナタ K.545》のようなスケール的な動きでは、片手ずつ速いテンポで動かして感覚をつかんでから両手に戻すと、自然に安定します。
速く弾けるようになるためのステップ練習
テンポを一気に上げず、段階的に速くしていくことが重要です。
メトロノームを使って、次のようにテンポを上げていきましょう。
1️⃣ ゆっくりのテンポで正確に弾く(音・リズム・指使いを確認)
2️⃣ テンポを少しだけ上げて同じ精度で弾く
3️⃣ 崩れたらすぐに戻す
このとき、「崩れないテンポ=今の実力」と捉えましょう。
焦らず、1段階ずつ上げていくことが、最も確実な上達法です。
私はこうしています
私もメトロノームはよく使用していました。
特に私の場合はゲーム感覚で、
「このテンポで弾けたら、ミッションクリア。テンポを2速くしよう。」
といった具合に、楽しんでゆっくりから徐々に速く弾く練習を繰り返していました。
弾けなかったりすると「悔しい!」となり、弾けなかった部分だけを繰り返し練習します。
そうして何度も立ち返りながら繰り返しているうちに、頭にも指にもしっかりと記憶が根付き、指まわりもよくなっていきました。
厄介なのは、弾けるようになったと思って翌日また練習を開始すると、弾けなくなっていてまたやり直すことも…
(そうこうしているうちに、安定して弾けるようになります。)
速く弾くばかりでは、決して弾けるようになりません。
ゆっくりから、楽しんで少しずつテンポをあげていってほしいです。
まとめ|速く弾く力は「慣れ」ではなく「準備」
速いテンポで弾くためには、
・指の準備ができているか
・体の使い方が適切か
・頭の中で音楽が先に鳴っているか
この3つがすべて揃っている必要があります。
ただ「もっと速く!」と繰り返すより、「速く弾くための準備を整える練習」を積むことで、
確実にテンポアップができ、本番でも崩れない演奏ができるようになります。
焦らず、確実に積み重ねていきましょう。
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