♯58 ピアノ上達の近道は「ゆっくり練習」だった!テンポを落とすと上手くなる理由

練習法と上達のヒント

ピアノの練習をしていると、つい「早く弾けるようになりたい!」という気持ちが先に立ってしまいますよね。
ですが、上達する人ほど「ゆっくり弾く練習」を大切にしています。

ゆっくり弾くのは、単に“スピードを落とす”という意味ではなく、音のつながり・体の使い方・耳の働きすべてを磨く時間です。

4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、

なぜ「ゆっくり練習」が一番の近道なのかその理由と具体的なやり方を解説します。

速く弾くと、間違ってもそのまま指が動いてしまい、自分のミスに気づかないまま定着してしまうことがあります。

ゆっくり弾くことで「どの指でどの音を弾いているのか」を冷静に確認でき、“正しい運指”と“正しい動き”が身につきます。

例えば、ショパンのエチュードOp.10-1(ハ長調)のように音型が連続する曲では、速いテンポで弾くと腕に力が入りやすく、音が転んでしまうことも。

まずはテンポを落として、一音ずつきれいに響かせる練習を重ねることで、結果的にテンポを上げても安定した演奏ができます。

ゆっくり練習をすると、自分の音を聴く余裕が生まれます。
音量のバランス、ペダルの濁り、フレーズの流れ、それぞれの音の音色など、速いテンポでは見逃してしまう細部に気づけるのです。

たとえばバッハの平均律を弾くとき、それぞれの声部の独立を聴き分けるには、ゆっくり練習や声部を取り出しての部分練習が欠かせません。

ゆっくり弾きながら「どの声部が主役か」「今どういう音で弾いているか」を耳で確かめることは、自分の演奏を冷静に聴くということにおいてとても大切なことです。

テンポを落とすことで、手や腕、肩の使い方を意識できます。
速いテンポでは「弾けているようで、実は無理な力を使っている」ことが多いのです。

ゆっくり練習では、

・腕の重みを鍵盤にのせる感覚
・手首や肘の自然な動き
・脱力して弾くフォーム

を確かめながら弾くことができます。

ゆっくりとしたテンポで弾くことで、どの関節をどう使うと音が自然に響くかを体が覚えます。

「ゆっくり弾く=機械的に弾く」ではありません。
テンポを落としても、フレーズの方向性・呼吸・表情を保ちながら練習することで、「遅いテンポでも音楽的に弾く力」が身につきます。

これは本番での演奏力にもつながります。
ゆっくり練習で音楽的に練習できている人は、緊張する本番でも安定して音楽的に弾くことができます。

具体的に「音楽的に練習する」とは、

・音に抑揚や変化をつける

・フレーズを意識する

・アクセントやスタッカートなどのアーティキュレーションを確認する

・自分の音をよく聴く

といったことです。

ピアノに触れられない時間でも、頭の中で「ゆっくり譜読み」するのはとても効果的です。
通勤や通学の電車の中でじっくり楽譜を眺めながら、

・指使いの確認
・フレーズの流れのイメージ
・楽譜に書かれている音の意味を考える

こういったことをしておくと、次に鍵盤に向かったときの理解が深まります。

私は、性格的にとてもせっかちです。(正確には、せっかち“でした”。)
練習をするときも、なんとなく速い通し練習ばかりしていました。
そのおかげで指はまぁまぁ動くようになりましたが、「音楽的に演奏する」ということがどういうことか分かっていませんでした。

今でもそんな自分と格闘する日々ですが、変わる意識を持つきっかけになったのは、師事している先生からのお言葉でした。

『速い練習しかしていないでしょ。全然自分が出している音を聴けていないし、音に変化もない。体の使い方も間違っている。』

私はすぐ感情的に熱くなってしまうところがあります。
弾けないところがあると、むきになってずっと繰り返し速く弾いてしまうことが、無意識のうちに多々ありました。
そういうときこそ、冷静になって“ゆっくり練習”をすべきだったと今では思います。

そのとき、先生に言われた言葉がもうひとつあります。

『急がば回れ』

ピアノの練習こそ遠い道にも思える丁寧な練習を積み重ねることが大事で、結果的にその方が早く目的を達成することができるというわけです。
肝に銘じたいと思っています。

「早く弾けるようになりたい」と思うほど、実は“ゆっくり弾く勇気”が必要です。

ゆっくり練習は、

  • ミスを防ぐ
  • 耳を育てる
  • 体の使い方を整える
  • 音楽性を深める

という4つの力を同時に伸ばします。

焦らず、ひとつひとつの音を味わいながら弾く時間こそ、ピアノ上達への最短ルートです。
一緒にがんばりましょう。

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