♯43 ピアノの本番でのステージマナー|出入り・おじぎ・椅子の調整を徹底解説

ピアノ教育

なぜステージマナーが大切なのか?

ピアノの演奏は、音楽そのものだけでなく「舞台での立ち居振る舞い」も含めて評価されます。

どんなに美しい演奏をしても、入退場やおじぎ、椅子の調整がぎこちないと、聴衆に落ち着かない印象を与えてしまいます。

逆に、自然で洗練されたステージマナーを身につけておけば、舞台に出る最初の一歩から観客に安心感や期待感を与えることができます。

4歳からピアノを始めて音高・音大と進み、約30人の生徒にピアノを教えながら現役で演奏活動を続ける私が、ピアノの本番で欠かせない「出入りの仕方・おじぎのタイミング・椅子の調整」について、分かりやすく解説します。

ピアノ演奏を引き立てるステージマナーの基本

出入りの仕方

ステージに出るときは視線や背筋をまっすぐに

当たり前のことですが、ステージに出るときは背筋はまっすぐにして、しっかり前を見て堂々と歩きます。

猫背でおどおど出てきてしまったら、せっかくの素敵な演奏も台無しになってしまいます。

自信にあふれた姿で登場しましょう。

靴音や衣装が乱れないように注意

靴音や衣装にも気を配って歩く必要があります。

女性はドレスを着たりする場合が多いので、裾を軽く持ち上げて歩くことになると思います。

そのときにどのようにドレスを持ち上げるか。裾の長さにもよると思いますが、

お客さんに見えない手の方にドレスを寄せて、軽く裾を持ち上げる。

これがスマートでおすすめです。

靴音も「カツ!カツ!」と大きな音をたてないよう、気を付けましょう。

弾く前の静寂から、音楽は始まっています。

自然に腕を振る

なんとなく足だけ動かして入場してくると、不自然な印象をお客さんに与えます。

ー私の実体験ー

とある本番で演奏した時のこと。

演奏を終えた後、先生からのコメントをドキドキしながら受け取り読み始めたら、コメントの内容が演奏ではなく入場の時の歩き方の指摘から始まっていて、とても驚きました。

「入場の時、腕が振れていないのがおかしい。歩く時は自然に腕を振るように。」

と書かれていました。

あとにも先にも指摘を受けたのはその時だけでしたが、登場の仕方が印象に影響することを強く実感した出来事でした。

前に出している足とは異なる向きの手を出して、両足と両手が交互になるように出しましょう。

あくまでも自然に登場するのがポイントです。


おじぎの仕方

観客席の中央に立ってから一呼吸置く

舞台に歩き出て観客席の中央に立っておじぎするとき、すぐに頭を下げてはいけません。

しっかりお客さんと向き合ってからおじぎするようにしましょう。

なんのためにおじぎをするのか。

それは、これから自分の演奏を聴いてもらう人たちに「よろしくお願いします。」とあいさつするためです。

なんとなくの流れでおじぎをしないようにしましょう。

軽く微笑む

おじぎをする前と後で、軽く微笑むのもおすすめです。

満面の笑みは不自然なので、あくまでも「軽く」微笑むことが重要です。

そうすることで、聴いている人たちにポジティブで前向きな印象を与えることができます。

演奏が終わった後のおじぎは、演奏の出来不出来によってなかなか軽く微笑むのはむずかしいかもしれませんが、上手に演奏できなかったからといってそれを顔に出しすぎるのはよくありません。

重ねて言いますが、おじぎを演奏前と演奏後にするのは聴いている人たちにあいさつと感謝の気持ちを伝えるためです。

不機嫌な顔をしてあいさつされたら、良い気持ちはしないでしょう。

それと同じです。

背筋を伸ばしたまま腰から軽くおじぎ

おじぎするときは、頭だけを前に落とすのではなく、腰からゆっくりとしっかり曲げるようにします。

そのとき、背筋はのばしたままにするといいでしょう。

2~3秒ほど静止してからゆっくり戻る

おじぎしている時間も大切です。

腰から曲げておじぎをした後、すぐに元の姿勢にもどってしまうと軽い印象を与えてしまいます。

かといって、おじぎする時間が長すぎるとそれはそれで重い印象を与えます。

適切な長さでおじぎをすることが重要になります。

心の中で「これから演奏をするので聴いてください。」と唱えながらおじぎをすると、ちょうどよい長さになります。

演奏を終えた後は、「聴いていただきありがとうございました。」と心の中で唱えるとよいでしょう。

これを行うと、おじぎしている時間は2~3秒程度になります。


椅子の調整

ピアノの演奏にとって椅子の高さや位置は、集中力や演奏の質に直結します。

ただし、調整に時間をかけすぎると聴衆が待たされてしまうため、手早くスマートに行うことが必要です。

お客さんにお尻を向けない

椅子を調整する際にお尻をお客さんにみせると、失礼になります。

椅子の後ろに回り込んで、お客さんと向き合う形で椅子を調整しましょう。

椅子を調整する

椅子の高さは「手首が自然と鍵盤と水平に」になる高さに、前後は「ペダルが踏みやすい距離」かを確認しましょう。

まごつかないように、あらかじめ普段の自分の椅子の高さを把握しておく必要があります。

調整は静かに

回すタイプの椅子ならそんなに音はたたないと思いますが、自分で自在に高さを調整できるタイプの椅子は、高さを変える際に音がなりやすいので注意が必要です。

座った後も、「ちょっともう少し後ろの位置がいいな」と思って椅子を持ち上げずにおしりで押すと、大きな引きずった音が出やすいので特に気をつけましょう。

何度も言いますが、ピアノで音を鳴らす前の静寂から音楽は始まっています。

髪の毛や顔に手をやらない

これは髪の長い女の人に多い仕草だと思いますが、座ったあと髪の毛や顔をいじっている人がいます。

髪を耳にかけ直すくらいならいいですが、勢いよく髪の毛を肩の後ろにまわしたり、髪や顔をいじったりしていると、聴いている人の集中力を削ぐ原因になりかねません。

余計な仕草はとらないように、気をつけましょう。

調整が終わったら姿勢を整え、呼吸をしてから演奏へ

椅子の調整も終え、いざ演奏を始めるときは、一呼吸してから始めます。

曲によっては演出として呼吸を入れずすぐに演奏を始めるパターンもありますが、焦った印象を与えないためにも、だいたいの場合は一呼吸してから演奏をするといいでしょう。

聴いている人への印象も大切ですが、良いパフォーマンスを届けるために自分の心を整えることも大切です。


まとめ|ステージマナーは演奏の一部

出入り・おじぎ・椅子の調整は、演奏そのものと同じくらい大切な要素です。

聴衆は、あなたがステージに現れた瞬間から演奏が始まっていると感じています。

落ち着いた出入り、自然なおじぎ、スマートな椅子の調整を意識するだけで、音楽の印象は大きく変わります。

「演奏の仕上げはステージマナー」──この意識を持って、次の本番に臨んでみてください。

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