演奏を豊かにする第一歩 ― タッチで変わるピアノの強弱
ピアノで強弱をつけるといっても、特別な技術が必要なわけではありません。
実は、鍵盤に触れる“タッチの仕方”を少し工夫するだけで、音の強さや雰囲気はぐっと変わります。
今回は、初心者の方でもすぐに試せる、タッチを使った強弱のつけ方をご紹介します。
この記事を読めば、いつもの演奏が一歩豊かになり、音楽にもっと表情を与えられるようになります。
4歳からピアノを始めて音高・音大と進み、約30人の生徒にピアノを教えながら現役で演奏活動を続ける私が、詳しく解説します。
タッチで簡単に強弱をつけるコツ&練習法
強く弾く=力を入れる?それだけじゃない
初心者の方の中には、「強く弾くには力をいれればいい」と思っている方も多いかもしれません。
たしかに”強く押す”という感覚は間違ってはいませんが、実際にはそれだけでは不十分です。
ピアノの音の強さは、鍵盤を叩く「強さ」と「スピード」によって決まります。
スピードが音に与える影響
鍵盤を押す速さが速いほど、ハンマーが弦に当たる勢いが増し、音が大きくなります。
逆に、ゆっくりと鍵盤を押すと、ハンマーの勢いが弱くなり、柔らかく優しい音になります。
このスピードのコントロールこそが、強弱をつくるカギとなります。
鍵盤の重さを感じながら
ポイントは、「鍵盤の重さを感じながらコントロールすること」。
ただ力任せに叩くのではなく、手首や腕の重みを使いながら、どれくらいのスピードで鍵盤を押すかを意識してみてください。
例えば、
・力強く盛り上がる部分では、スピードと力を両方意識してしっかりと弾く。
・優しく語りかけるような部分では、指先のコントロールを丁寧にして、ゆっくりと鍵盤を沈める。
このように、音の「出だし」をコントロールすることで、表現がガラリと変わってきます。
タッチで強弱をつけるための練習法
まずは強弱をつくる感覚を身につける
一つの音と一つの指を使って、タッチで強弱をつけるための練習をします。
練習するときはどの指でもどの音でも構いません。ですが、はじめは中音域程度で練習することをおすすめします。(聴き取りやすさのため)
使う指と音を決めたら、変えないようにしましょう。
指は一本しか使いませんが、実際を想定して手の形はピアノを弾く時の手にしましょう。
①(条件)同じ一つの鍵盤を、同じ指で叩きます。
②まず、一本の指でできるだけの一番大きい音を出します。
③そこから何度も鍵盤を叩き、少しずつ小さい音を出していきます。
★そのときに急に音が小さくならないように気をつけましょう。あくまでも少しずつです。
④音が鳴る限界の小ささまで弾き、音が出なくなったらおしまいです。
⑤①~④を繰り返し行い、なるべくはじめより多くの強弱の変化をつくれるように練習します。
曲のなかだとどうしても強弱をつけられないという人も、このような練習を行うことで、どのようにしたら強弱をつけられるのかということが感覚として身につきます。
実際に曲の中で強弱をつける
強弱を指のタッチでつくる感覚が身につけられたら、今度は実際に曲のなかで強弱をつけられるように練習します。
慣れないうちは、片手ずつ強弱をつける練習をしましょう。
フォルテの場合
これは比較的につけやすい強弱記号だと思います。
フォルテを出すときに気をつけてほしいポイントがあります。
・フォルテだからといって力任せに攻撃的で汚い音を出さない。
・フォルテを出すときは、体はリラックスした状態で。腕の重みを利用して大きい音を出すようにする。
・鍵盤を叩く「スピード」にも意識してみましょう。
ピアノの場合
大きい音を出すよりもこちらの方が難しいと思います。
先ほどの練習で培った感覚を思い出しながら、ピアノを作ります。
指のスピードが速すぎると大きな音が出やすく、ゆっくりすぎると音がならないことがあります。
こちらもフォルテ同様、タッチの「スピード」にも気をつけましょう。
指先で鍵盤を叩く強さやスピードを変えて、曲のメロディーだったり和音だったりをゆっくり確認していきましょう。
まずはフォルテとピアノをつけることを意識して練習し、慣れてきたらメゾフォルテやメゾピアノでも弾けるように練習してみましょう。
まとめ
ピアノの強弱表現は、演奏者の心を音にのせるための大切な手段です。
そしてその第一歩が、鍵盤を押す「強さ」と「スピード」の理解とコントロールにあります。
普段の練習でも、ただ指を動かすだけでなく、「どんな音を出したいのか」をイメージしながら弾いてみてください。
きっと音に表情が出てくるはずです。
ぜひ、今回紹介した方法も試してみながら、練習してみてください。
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