音大を目指すか悩んでいる人へ
ピアノや声楽、作曲などを本格的に学びたい――そんな思いから「音大に進むべきかどうか」で悩む人は少なくありません。
けれども実際に音大を卒業した後、どのような道が開けているのか、具体的にイメージできる人は多くないでしょう。
この記事では、音大卒業後の主な進路や働き方について整理し、進学を検討するうえでのヒントをお伝えします。
4歳からピアノを始めて音高・音大と進み、約30人の生徒にピアノを教えながら現役で演奏活動を続ける私が、音大生の一般的な進路内容をお伝えしていきます。
音大卒業後の一般的な進路
進路内容
音楽教室講師
特にピアノをやっている人は、この進路に進むことが多いです。
ピアノは習い事としていまだに根強い人気があるため、音大卒業者ならば簡単に講師になることができます。
もちろん、教えるのにはまた別のノウハウが必要になってきますが、私が卒業した東京音楽大学では、そういった進路に進みたい人に向けた「ピアノ指導法」という授業がありました。
のちに記載しますが、音楽教室の講師を務めながらフリーで演奏活動している人も多いです。(事実、私がそうです)
海外留学
普通大学と比べてどの程度か分かりませんが、これも音大卒業者には多い進路選択です。
向こうの大学で修士をとったり、そのままその土地で働きながら学びを続けている人もいます。
ですが、この選択肢を取るにはいくつかの条件が必要になります。
・ある程度、家庭が裕福であること、もしくは演奏者としてとても優秀であること。
・語学の勉強ができること。(これは割と努力次第でどうにでもなる)
能力がなくてもお金があれば海外留学はできるし、お金がなくても演奏者としてとても優秀であれば、どこかから奨学金を得て海外留学することができます。
どちらの条件も欠けていると、卒業後そのまま海外留学というのはなかなか厳しいです。
あとの可能性としては、一般企業などに就職して自分でお金を貯めてから留学するという手もあります。
大学院進学
大学の4年間というのは、本当にあっという間です。
大学で素晴らしい先生に出会い、やっとわかるようになってきたかな・・・?というときに卒業は訪れます。
本気で学びたいと思っている人にとって、4年という期間はあまりにも短すぎる時間です。
大学院進学は「もう少し今の先生のもとで学びたい」という学ぶ意欲にあふれた人が選ぶことが多い進路です。
私もその一人でした。結果から言うと、大学院の2年を足しても短い時間だったと感じています。
一般企業に就職
すっぱり音楽とはさようなら、もしくは趣味程度にして心機一転一般企業に就職する人もいます。
就職する先は、音楽系だけでなく音楽とはまったく関係のない企業であることも多いです。
人それぞれで一概には言えませんが、「ひとつのことを粘り強く続けてきた」として音大出身者は企業から評価されたりもします。
このように、バリバリ働いて稼ぐという道もあります。
学校教員
音大生は、教職課程をとって教員免許を持っている人が多いです。
在学時は「念のため」と保険程度に教職課程をとっている人が多いのですが、いざ生活費を稼がなければならないという状況で、教員という仕事を選ぶ人は一定数います。
私も在学時に教職課程をとり、教員免許を持っています。
学校の先生にはなっていませんが、免許を取得していたことで、今母校である埼玉県立大宮光陵高等学校の非常勤講師として副科ピアノを学生に教えることができています。
自衛隊や警察などの音楽隊への所属
ピアノや声楽ではない楽器の人が目指すことが多いです。
私もあまり詳しくはないのですが、自衛隊などの音楽隊に入るのは難易度が高いと聞いたことがあります。
そして、入隊後は音楽だけをやればいいのではなく、普通の隊員のように体を鍛える訓練もあるようです。(人伝いなので曖昧です)
詳細は、各団体の募集内容を確認してください。
フリーランスの演奏家(ほかの仕事もしながら)
フリーの演奏家という仕事のみで生活している音楽家は、ごく一握りでしょう。
教える仕事をしたり、他の仕事をしたり。
それでもなんとか練習時間を生み出して、土曜日や日曜日に演奏会を開く。お客さんを集める。
フリーランスの演奏家は、なかなかタフです。
悩みとしては、
・お金を稼ぐということに全振りできないこと。(練習をしながらお金も稼いでいるため)
・練習時間を確保すること。
といったものがあります。
人によって働くことと練習することとの時間の割合は異なりますが、まわりを見てもフリーランスの演奏家は多い印象です。
そのほかの進路
主な進路はご紹介しました。それ以外の「こんなパターンもあるよ」ということで、そちらも簡単に紹介します。
※自分がピアノを専攻しているため、ピアノの方の進路多めです。
・合唱団の伴奏
・吹奏楽などの部活動指導
・管弦楽団など、オーケストラ団体への加入
・声楽なら「二期会」への加入※気になる方は調べましょう。簡単にいうなら、オペラや声楽全般の育成・研究団体です。
・フリーの伴奏者
・バレエ団の専用伴奏者
・ミュージカル俳優を目指して活動(声楽専攻)
・音楽事務所に所属
・結婚
ピアノの人が演奏で生計を立てようとすると、伴奏が主になってきます。
ソロでの仕事はほとんどなく、ピアノでお金を稼ぐなら伴奏が手っ取り早いからです。
私(執筆者)の場合
私は、学生のときからいろんな仕事をしていました。
大学に通いながら、早朝はコンビニで働いて、昼間はある時はカフェで働き、ある時は合唱団の伴奏にいき、夜は船でBGM演奏の仕事をし帰宅は0時前、翌朝また朝勤に行くみたいな生活を、毎日ではありませんがよくしていました。
夜、船でピアノを弾いていたと思ったら、翌朝コンビニでたまったゴミ箱の替えをしている自分に「いったい自分は何者なんだろうか」と笑ってしまうくらいでした。
話を戻しますと、私は練習に仕事にと目まぐるしく過ぎていった大学生活のあと、「もっと今の先生のもとでピアノを学びたい」と思いから大学院進学を決めました。
大学院を修了したあとは、大学の先生から紹介していただいた音楽教室で講師になり、修士試験(実技)の成績が良かったことで、大学に残り仕事をすることになりました。★
★「ピアノ演奏研究員」という声楽や指揮の学生のレッスンでピアノ伴奏を行う仕事です。
その仕事は2年で契約満了となり、あたらしく別の音楽教室で講師をやりながら、今度は高校の先生に声をかけていただき母校である埼玉県立大宮光陵高等学校の音楽科で副科ピアノを指導することになりました。
私はまわりの人に恵まれていて、運がよかったと思っています。
それに加えて、学生時代から続けているコンビニの朝勤を週2回、不定期でシンフォニークルーズという船でBGM演奏の仕事をしています。
ソロやアンサンブルの演奏会も時々開いています。伴奏を引き受け、オーディションやコンクールでピアノを弾いたりもします。
そういった意味だと私もフリーランスの演奏家です。
我ながら、いろんな仕事をしてピアノを続けています。
一つの例として、卒業後いろんなことをしながら働いている人もいるということは頭にあってもよいと思い、このように細かく話をしました。
音大に入ってからも、みんな進路に悩んでいます。
よく学生から「卒業後、どうやって生きていったらいいんだ」という話を耳にしますが、音楽を本当に続けたい気持ちがあれば正直どうとでもなります。
「お金をたくさん稼ぐ」ことだってやり方次第ではいくらでもできます。
要は、本人次第ということです。
まとめ
だいぶ夢のない話になってしまったかもしれませんが、音大卒業者のリアルな進路内容をお伝えしました。
私は音楽大学に進学して心からよかったと思っています。
そこでしか出会えなかったであろう貴重な友人や先生との出会い、経験がありました。
各家庭には事情があり、音楽大学に進学することを容易に決められない人もいると思います。
ですが、後悔だけはしないようにこれからの自分の進路を選択していってほしいです。
今回の私の話が少しでも参考になればうれしいです。
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