上手な演奏をするには、体を上手に使う必要がある
ピアノ演奏に限らず、楽器を演奏するときは体を上手に使うことが求められます。
なぜなら、実際に演奏するのは頭の中ではなく体を使って行うものだからです。
・ピアノ演奏がいかに体と密接に関わっているのか。
・実際に体のどこを使うのか。
私が二十数年間レッスンを受けてきた中で教わった、ピアノ演奏における体にまつわる話をお伝えできればと思います。
私が教わったなかで、体の使い方に関する印象的な話
ピアノは背中から弾く
大学に入るまで、ピアノは指で弾くものだと思っていました。
(もちろん全身を使って弾きますが)
「自分の背中に天使の羽が生えているように、そこから腕がついていて指がついていてピアノを弾いているんだ」と教わりました。
ピアノを弾いている先生の背中に手をあて、実際に背中の筋肉が動いているのを感じるという経験をしました。
背中から弾くイメージを持つことで、広い範囲で体を使って弾くことができるようになります。
指だけだとどうしても可動域が限られてしまって、出すことのできる音の種類が少なくなってしまいます。腕の自由がきかず、テクニックにも限界が出てきてしまいます。
「ピアノは背中から弾く」
ぜひ皆さんに覚えてもらいたいキーワードです。
腕の先に指先がついている
これも私が教わったなかで「これは」と思った体の使い方の表現でした。
指があって腕がついているのではなく、腕があってその先に指がついている。
一見当たり前のことを言っているように思えますが、この指と腕の順番が入れ替わってしまうと、演奏に大きな差が生まれます。
指があって腕がついている→指ありきで腕は二の次
腕の先に指がついている→腕の重みがあってそれを指で支えながら動かしている
体を適切にイメージすることは、最大限自分の体を演奏に生かすために必要です。
人間の腕はとても重い
皆さん、自分の腕一本がどれほど重いか知っていますか?
また、その腕の重みを感じたことはありますか?
片方の腕はソファーのひじ掛けにだらけるつもりで、もう一方の手でその腕を持ってみましょう。
これをしてみると、腕一本でかなりの重さを感じるはずです。
そして、ピアノを弾く時はその腕の重みを指の第一関節で支えるのです。(次に続きます)
指の第一関節で自分の全体重を支える(くらい)
腕の重みを支えられるくらいの強靭さが、指の第一関節には必要です。
次のことも試していただきたいです。
譜面台より手前のピアノのふちにすべての指の第一関節をひっかけましょう。そこに全体重をかけるつもりで指に負荷をかけましょう。
腕一本どころではなく、「全体重を支えられるくらい」というところまできました。
小さいお子さんは、まだ関節が安定していないので無理はしないでくださいね。
それくらいの重さがかかっても指や手が「ぐにゃん」とせず支えることができる、これが理想の指の強さと脱力具合になります。
頭を下げるな
以下の記事でもこのことについて少し触れています。
耳は左右についているものですが、頭を下げてしまうと耳の向きが下に向いてしまい、部屋に自分の音がどのように響いているのか聞こえづらくなってしまいます。
頭の向きも、ピアノを弾く時には重要なのです。
腰から弾く
右も左も和音をつかんでfで演奏するときに、指だけだと威力が足りないので、腕も背中も使って、腰からエネルギーを引っ張りあげるように弾く、ということもします。
いかにピアノを弾くのは全身を使うかわかる表現ですね。
よく先生からは「パワーが足りない。そこは腰から弾くんだよ!」と言われます。
指の骨をあてる
常時骨をあてて弾くわけではないのですが、粒の整ったコロコロした音を出したいときに使います。
「指だけではなく、指の骨も使う」
これにも私はびっくりしました。
①鍵盤のふたを閉じ、そのふたの上に手を置きます。
②ピアノを弾く手の形(丸まった状態)にして、指や手のひらをくっつけた状態で一本ずつふたをたたきます。
そのとき指の骨があたるように「コツコツ」と鳴らすことができたら、指(打鍵)がしっかりしている証です。
ふたのうえで「コツコツ」鳴らすのは、やってみると分かりますが結構難しいです。
手首はやわらかく保つ
どんな時でも手首(腕も)を固めて弾くことはありません。
腕の重みを指で支えながら、手首を上下左右にまわすことができれば、手首は自由の状態であることが分かります。
ですが、手首をまわすときにどこかぎこちなかったり、そもそも回転できないという人は要注意です。
手首をぶらぶらする必要はありませんが、自由がきく状態に保つことは、テクニックの上達を手助けする大きな要素になります。
指の始まりは第三関節からではなく手首から(手のひら)
皆さん、指はどこから始まっているか知っていますか?
手のひらの先の第三関節から始まっていると思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、指の始まりは手首の方、手のひらで隠れているところから始まっているのです。
手の骨の模型を見ていただくのが一番手っ取り早いと思うのですが、それを見ると、各指の骨は手首の方の関節から始まっているのが確認できます。
これがピアノ演奏にどう関わってくるのかといいますと、ピアノを弾いて指を動かすときに第三関節から動かすのでは不十分で、手のひらに隠れている根本から指を動かす必要があるときがあります。
指の開始位置を勘違いしていると、それだけ可動域が狭くなり出せる音の威力、質が変わってきます。
第三関節から動かすのと、手のひらに隠れた根本から指を動かすのと、どちらがよりしなやかで強い音が出せるでしょうか。
どちらにも利点はあるので、場所に応じた使い分けが必要です。
指を棒のようにして鍵盤を突き刺す
指をしならせたり寝かせたりすることもあれば、指を針のようにまっすぐにして鍵盤を突き刺すような弾き方をすることもあります。
曲によっては手をチョップのようにして低音を叩くこともあります。
手というのは、本当に多様な動きがとれて形を変えることのできる優れものです。
いろんな形に変形させながら音に変化を加えていきます。
まとめ
体の使い方に関する印象的かつ実用的なお話をしました。
私たちがピアノを弾く時、使っているのは指だけではありません。
指、手のひら、手首、腕、ひじ、背中、腰、といった全身を使ってピアノを弾きます。(足も使います)
演奏との関係を切っても切り離せない体について、考えるきっかけになればうれしいです。
また面白い体の使い方を思いだしたら、ご紹介します。
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