♯23 イタリア語の速度記号

楽典・音楽史

楽譜の始めに書かれている「速度記号」。皆さんはいくつ知っていますか?

「Allegro」「Moderato」「Andante」・・・

これらの速度記号は、実はイタリア語なのです。

今回は速度記号の紹介と、それにまつわる面白い話を紹介します。

結論

速度記号のほとんどはイタリア語だが、本来のイタリア語にはない意味のものもある。

詳しく見ていきましょう。

比較的早いもの(Moderato含む)

まず、比較的早いものから順に紹介します。

「Allegro」・・・・・読み「アレグロ」・・・・・意味「速く」

「Allegretto」・・・・・読み「アレグレット」・・・・・意味「やや速く」

「Moderato」・・・・・読み「モデラート」・・・・・意味「中くらいの速さで」

これらは、よく使われる速度記号です。

つぎに、「Allegro」より速い速度記号を紹介します。

「Vivace」・・・・・読み「ヴィヴァーチェ」・・・・・意味「活き活きと速く」

「Presto」・・・・・読み「プレスト」・・・・・意味「急速に」(つまり非常に速く)

「Vivo」・・・・・読み「ヴィーヴォ」・・・・・意味「活発に」

比較的遅いもの

今度は、速度記号の中でも比較的に遅いものを紹介します。

「Andantino」・・・・・読み「アンダンティーノ」・・・・・意味「やや遅く」

「Andante」・・・・・読み「アンダンテ」・・・・・意味「ゆっくり歩くような速さで」

ここまではよく見かける速度記号だと思います。

次に「Andante」よりも遅い速度記号を紹介します。

「Lento」・・・・・読み「レント」・・・・・意味「ゆるやかに、気楽に遅く」

「Adagio」・・・・・読み「アダージョ」・・・・・意味「ゆるやかに」

「Largo」・・・・・読み「ラルゴ」・・・・・意味「幅広くゆるやかに」

ちょっと変わった速度記号

ここでは、ちょっと変わった速度記号を紹介します。

※ここに載っているものがすべてではありません。

「Allegro moderato」・・・読み「アレグロ・モデラート」

え、速いの?そうでもないの?どっちなの?

と思われた方もいると思います。

この言葉の意味は、「ほどよく速く」。

つまり、イメージとしては「速い(Allegro)、けどModerato寄りで速すぎないように」といった感じですかね…(笑)

「Tempo di minuetto」・・・読み「テンポ・ディ・メヌエット」

この言葉の意味は「メヌエットの速さで」。

またまた、「え。どういうこと?それはいったい速いの?遅いの?」

と思われた方もいるでしょう。

これがどういった速さかを考えるには「メヌエット」がどういうものか知らなくてはなりません。

「メヌエット」とは

4分の3拍子の踊り。とても優雅で、貴族たちが踊っていたもの。

速いテンポでは、優雅に踊れません。

つまり、「Tempo di minuetto」とは比較的ゆったりとしたテンポであるということです。

この「Tempo di ~」は、他にもこんなものがあります。

「Tempo di valse」・・・意味「ワルツの速さで」

「Tempo di marcia」・・・意味「マーチの速さで」

「Tempo di polacca」・・・意味「ポロネーズの速さで」

「Allegro ma non troppo」・・・読み「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」

Allegroはすでに紹介しました。

それ以外の言葉を説明すると、

「ma」は「しかし」、「non」は「ない」、「troppo」は「過度に」

となります。つまり「Allegro ma non troppo」とはどういう事かというと、

「速く、しかし速すぎないように」という意味です。

この速度記号は本当によく見かけます。

遅い速度記号より「Allegro」とセットになっていることが多い気がします。

もちろん、「Andante」とセットになれば、

「Andante ma non troppo」・・・意味「ゆっくり歩くような速さで、しかし遅すぎないように」

となります。「~ma non troppo」、とても便利な用語ですね。

速度記号にまつわる面白い話

ここでひとつ、速度記号にまつわる面白い話をします。

タクシーでイタリアの空港に向かっていた日本人女性。

飛行機の時間まで時間がありません。

イタリア人のタクシー運転手さん(男性)に急いでいることを伝えたい・・

でもそれを伝える英語も思いつかないし、ましてやイタリア語なんて思いつかない。

そこで、音楽を学んでいた女性はイタリア語の音楽用語で「Allegro(速く)」という言葉を思い出しました。

タクシー運転手さんに向かってこう言いました。

「Allegro!」

これを聞いても、タクシー運転手は急ぐ様子をまったく見せませんでした。

女性は焦って「Piu Allegro!Piu Allegro!」と叫びました。※Piuは「もっと」という意味。

そうしたら、タクシー運転手はやっぱり急がないで歌ったり笑ったりし始めました。

伝わっていないと思った女性は「Molto Allegro~~~!!」と叫びます。※Moltoは「非常に」という意味。

さすがのイタリア人運転手も事の重大さに気づきます。

ですがそれは彼女が急いでいることではなく、自分に恋心を抱いているのではないかということです。

実は「Allegro」に速いという意味はないのです。

イタリアの人は「Allegro」を「陽気に」「楽しい」「明るい」といった意味で使います。

これではタクシー運転手さんが急いでくれないのも当たり前なのです。

引用:「これで納得!よくわかる音楽用語のはなし イタリアの日常会話から学ぶ」関孝弘著、全音楽譜出版社より

速いという意味のない「Allegro」がどうして「速く」という意味の音楽用語になってしまったのか。

興味がある方は、引用にも載せたこちらの本を読んでみてください。

「Allegro」のほかにも速度記号にまつわるイタリア語の話が載っていてとても面白く、おすすめです。

また機会があれば、私のブログでも内容を紹介します。

速度記号の紹介と、ちょっと変わった速度記号、速度記号にまつわる面白い話と本の紹介をしました。

速度記号の主なものは以下です

「Allegro」・・・・・読み「アレグロ」・・・・・意味「速く」

「Allegretto」・・・・・読み「アレグレット」・・・・・意味「やや速く」

「Moderato」・・・・・読み「モデラート」・・・・・意味「中くらいの速さで」

「Andantino」・・・・・読み「アンダンティーノ」・・・・・意味「やや遅く」

「Andante」・・・・・読み「アンダンテ」・・・・・意味「ゆっくり歩くような速さで」

★Allegroより速いもの

「Vivace」・・・・・読み「ヴィヴァーチェ」・・・・・意味「活き活きと速く」

「Presto」・・・・・読み「プレスト」・・・・・意味「急速に」(つまり非常に速く)

「Vivo」・・・・・読み「ヴィーヴォ」・・・・・意味「活発に」

★Andanteより遅いもの

「Lento」・・・・・読み「レント」・・・・・意味「ゆるやかに、気楽に遅く」

「Adagio」・・・・・読み「アダージョ」・・・・・意味「ゆるやかに」

「Largo」・・・・・読み「ラルゴ」・・・・・意味「幅広くゆるやかに」

★ちょっと変わった速度記号

「Allegro moderato」・・・読み「アレグロ・モデラート」・・・意味「ほどよく速く」

「Tempo di minuetto」・・・読み「テンポ・ディ・メヌエット」・・・意味「メヌエットの速さで」

「Tempo di valse」・・・読み「テンポ・ディ・ヴァルス」・・・意味「ワルツの速さで」

「Tempo di marcia」・・・読み「テンポ・ディ・マルチア」・・・意味「マーチの速さで」

「Tempo di polacca」・・・読み「テンポ・ディ・ポラッカ」・・・意味「ポロネーズの速さで」

「Allegro ma non troppo」・・・読み「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」・・・意味「速く、しかし速すぎないように」

「Andante ma non troppo」・・・読み「アンダンテ・マ・ノン・トロッポ」・・・意味「ゆっくり歩くような速さで、しかし遅すぎないように」

以上、参考になればうれしいです!

基本的なものばかりなので、ぜひすべて覚えましょう。

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