ピアノ練習というと、「まずは片手で最後まで弾けるようにしてから、両手を合わせる」
というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
しかし実際には、最初から両手で練習するほうが、曲の全体像を早くつかめて、
仕上がりのスピードも早いというメリットがあります。
この記事では、4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
- 最初から両手で練習したほうが良い理由
- 片手練習を効果的に使うタイミング
- ポリフォニー作品における「声部練習」についての注意点
を具体的に解説します。
「両手で練習しても全然進まない…」
「片手練習をどれくらいやれば良いかわからない」
そんな方に、今日から使える練習の流れをお届けします。
1. ピアノ練習の理想は“最初に両手”から始めること
多くの人が「片手→両手」という順番を思い浮かべると思いますが、実は最初から両手で練習するほうが効率的です。
両手で始めると、役割の違いが自然に理解できる
ピアノの音楽は、多くの場合、
- 右手:メロディー
- 左手:ハーモニー・伴奏
という役割を担います。
最初から両手で弾くことで、
「このメロディーをどう歌わせるか」
「左手はどのくらいの存在感で支えるのか」
といった音楽的な関係性を早い段階で体感できます。
片手練習では、メロディーと伴奏のバランスをイメージしづらいため、両手に戻したときに時間がかかりやすくなります。
両手練習は“音楽の完成図”を早くつかめる
片手だけで練習していると、「両手になった途端に崩れる」ということがよく起こります。
これは、片手練習だけでは両手の協調動作を身につけられないためです。
両手で始めれば、最初の段階から
- 動きの連動
- 聴くべき声部
- 音の重心
をつかめるため、完成までのスピードが圧倒的に早くなります。
2. 片手練習は“必要なところだけ”効かせるのが正解
両手で全体をつかんだうえで、コントロールしにくい部分だけピンポイントで片手練習を使うのが効果的です。
片手練習を使う場面
- メロディーの歌わせ方を丁寧に整えたいとき
- 伴奏の粒をそろえたいとき
- 指の動きがもつれるパッセージを滑らかにしたいとき
- ハーモニーのバランス調整が必要な箇所
こうした“弱点の補修”に片手練習はすぐれています。
ただし、曲全体を片手で最初から最後まで仕上げる必要はありません。
片手をやりすぎると、両手を合わせるタイミングが遅くなり、かえって効率が下がることもあります。
3. ポリフォニーは片手練習ではなく“声部練習”
バッハなどのポリフォニー作品では、1つの手の中に複数の声部が入ることがよくあります。
そのため、正確には「片手練習=声部練習」ではありません。
声部練習とは?
- 実際にその声部を担当する指で弾く
- 声部ごとに歌わせ方や動きを理解する
- どの声部が主役か、どこで受け渡すかを把握する
こうした作業が、ポリフォニーの本来の練習方法です。
特に、同じ手で2声を弾くときは、
「親指の声が主役なのか、小指の声が主役なのか」
というコントロールがとても重要になります。
片手で全部を均一に弾いてしまうと、役割の違いや声部の違いがわかりにくくなるため、
ポリフォニーは“声部単位”で整理することが上達の近道です。
4. 効果的な練習ルーティン例(今日から使える)
- まずは両手でゆっくり全体を把握する
- 弾きにくいところを発見したら
→ その部分だけ片手練習・声部練習 - それから両手に戻して、バランスと役割を確認
- あとは、都度両手と片手の練習を取り入れる。(どちらかだけでずっと弾かない)
- 最終的にテンポアップと表現を作り込む
この流れがもっとも負担が少なく、もっとも早く仕上がる練習方法です。
両手から音楽を作るのがピアノ上達への道|筆者の経験談
普段子供たちを教えていると、
「先生、今日は片手しか弾けなかった」と言う生徒は多いです。
まだピアノに不慣れなうちは片方ずつの練習でも問題ありませんが、
その習慣だけ残って、いつまで経っても両手から練習することができないのでは、
大きく2点の弊害が生まれると私は思っています。
1. 最初に曲の全体のイメージを持ちづらく、後からそれを作るのが大変
2. 片手が最後まで弾けてから両手に取り掛かるのでは、2倍以上の時間がかかる
私は、バッハの平均律(ポリフォニー)を練習していたときに、
先生からこう言われたことがあります。
「ゆっくりでもいいから、最初から両手で弾けるようにしなさい。」
私が当時弾いていたのは、4つの声部が複雑に重なるポリフォニー音楽でした。
それでも先生は「最初から両手で弾けるように」とおっしゃいました。
それは「いきなり両手からでも音楽を作れるように」という先生の教示だったと
私は思っています。
片手で練習することは、とても良いことです。
ですがその習慣だけ残って、いつまでも「片手から練習」ではピアノの上達は遠いです。
まとめ|両手から始めることで、音楽の本質が見えてくる
ピアノの練習は、
「片手で最後まで弾けてから両手」
という固定観念にしばられなくて大丈夫です。
- 基本は両手からスタート
- 必要なところだけ片手を使う
- ポリフォニーは片手ではなく、声部で整理する
この3つを押さえるだけで、
仕上がりのスピードも、音楽の理解も、表現の深さも大きく変わります。
あなたの練習がよりスムーズに、そしてより音楽的になることを願っています。
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