ピアノを上達させるには、曲を弾くだけでなく、基礎力を養う練習が欠かせません。
その代表格が「ハノン」です。
しかし、ハノンをただ繰り返すだけでは、指の運動になってしまい効果は限定的です。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
レッスンで実践しているハノン練習のポイントを、具体的な手順と意識すべき点とともにご紹介します。
まずは音階から弾かせる
ハノン練習の出発点は音階です。
ここで意識するのは、指の動きだけでなく、調性感覚です。各調の特性を感じながら弾くことで、曲の中で転調や異なる調に出会ったときにも迷わず演奏できます。
例えば、ハ長調とヘ長調では手の形や指の感覚が微妙に変わります。
(ヘ長調はシに♭がつく)
こういった違いを理解して練習することは、曲の表現力を育てる大切なステップです。
演奏するときに気をつけるポイント
・親指の力を抜く
・指くぐりさせるときに手首をひねらない(手首は鍵盤に対して平行移動)
・でこぼこならないように弾く
・均等に弾く練習と音楽的に弾く練習両方やる(上行形はクレッシェンド、下行形はディミヌエンド)
慣れてきたら、少しずつテンポアップします。
スムーズに弾けるようになるまで繰り返し練習しましょう。
アルペジオは必須練習
ハノン練習でアルペジオを取り入れるのも重要です。
曲の中でアルペジオは非常によく登場するため、手の跳躍や指のスムーズな移動感覚を養うことができます。
アルペジオを弾くときは、指先だけでなく、手首や腕も連動させる意識を持ちましょう。これにより、演奏中の安定感と音のつながりが自然に生まれます。
演奏するときに気をつけるポイント
・無理やりすべての音をつなげる必要はない(つながらないところは指をはなし、手首を平行移動させる)
・それよりも元の和音の形を意識することが大切
・右手と左手のバランスを聴きながらそろえる
・音階と同様に親指の力は抜く
・♭や♯などの黒鍵を弾く時は、面積がせまいので指を伸ばして指の腹で弾く
こちらも慣れてきたら、テンポアップしましょう。
指の独立性と速度の強化
ハノンの最初の番号(1~30番あたりまで)は、指の根本から一本ずつ動かすことを意識します。
単に速く動かすのではなく、強靭で素早い指を育てることが目的です。
さらに、リズム練習を組み合わせることで、長さも太さも異なる各指の強度を均等にすることもできます。
これらは、速いパッセージや複雑なフレーズを弾く際に非常に役立つスキルです。
ゆっくりの速さから、テンポアップしていきます。
つまづいてしまうところは、特に重点的にリズム練習をしましょう。
8分音符と16分音符を組み合わせたものを、いろいろな形に変えて弾くこと。
(ハノンと最初の方のページにリズム例が載っています)
ハノンは「準備体操」と考えてOK
ハノンは曲を弾く前の“退屈な練習”ではありません。
むしろ、演奏の準備体操と考えるとよいでしょう。
- 指や手をほぐす
- 調性感覚を整える
- 速度やリズムの基礎を養う
これらの効果により、曲の練習や本番にスムーズに移行できます。
ハノンを毎日の習慣にすることで、演奏力の土台が自然と築かれていきます。
ハノンで得られる演奏スキル
ハノンで鍛えられる力は、曲の演奏にそのまま直結します。
- 指の独立性:複雑な和音やポリフォニーでも安定して弾ける
- 速度:速いパッセージも正確に演奏可能
- 調性感覚:転調や多調性の曲でも迷わない
- 音色コントロール:指ごとに音色を変えられる表現力
単純な指の運動に見えて、実は演奏力全体の底上げにつながる練習です。
音階やアルペジオ以外にも、トリル(すばやく交互に指を動かす)や同音連打、オクターヴの移動、3度の音階など、幅広い基本技術を練習することができます。
大人になってあらためて感じるハノンの重要性|筆者の経験談
私も小学生のときから、ハノンは弾いていました。
最初は弾く意味も分からず、「なんとなく宿題だから弾く、でも難しい」といった感じで練習していました。
特に、音階練習の最後についているカデンツ(終止)の和音の音が覚えられなくて、苦戦した記憶があります。
今となっては、何も見ずに弾けるようになりました。
大人になって自分が教えるようになってからは、ハノンの重要性をあらためて感じています。
ピアノを弾くうえで必要な、基本中の基本の技術と知識がつまっているからです。
(もう少し上の技術を身に着けるには、ツェルニーの練習曲が必要ですが…)
指の独立は、ピアノを上達を目指すには必要不可欠ですし、
曲のなかに音階やアルペジオが出てくるたびに一から練習をするのでは、譜読みの速度も遅いままです。
ハノンと先ほど話したツェルニーは、私ももう一度ちゃんと練習し直したいと思っています。
まとめ
ハノンはただの練習曲ではなく、演奏力を支える土台です。
- 音階で調性感覚を養う
- アルペジオで手の跳躍を整える
- 指一本ずつ動かし、強靭で素早い指を育てる
この3つを意識するだけでも、演奏の精度や表現力が大きく変わります。
毎日の短時間でも良いので、ハノンを準備体操として取り入れることをおすすめします。
習慣化することで、曲の演奏がより滑らかで表現豊かになり、ピアノ演奏が一段と楽しくなるはずです。
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