ピアノのレッスンでは、正しい音やリズム、指遣いといった技術的な指導はもちろん大切です。
けれど、私が特に重視しているのは、
生徒自身が「音楽をどう感じるか」「どう弾きたいのか」を自分の頭で考えられるようにすること。
その力こそが、演奏を“自分のもの”にする鍵だと考えています。
そのために、レッスンでは “質問” を使った働きかけを多く取り入れています。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
「ピアノレッスンで大切にしている質問」についてお話しします。
まずは「良いところ」を言葉で伝える
生徒の演奏が終わったら、最初に必ず「良かったところ」を伝えます。
「フレーズの流れが綺麗だったよ」
「最初の音がとても柔らかくて素敵だったね」
ただ「上手だったよ」と言うのではなく、具体的に良かった点を伝えるようにしています。
こうした一言があるだけで、生徒は安心し、心を開いてくれるようになります。
これは、次のステップとして「自分で考える」レッスンにつながる大切な土台です。
言われるだけだと“受け身”。質問は「考えるきっかけ」をつくる
アドバイスをただ伝えるだけでは、生徒はどうしても受け身になってしまいます。
「先生がこう言ったから、そう弾く」
これでは、自分の頭で音楽を組み立てる経験が育ちません。
だからこそ私は、すぐに答えを教えるのではなく、まず 質問 を投げかけます。
「どこが一番盛り上がる部分だろう?」
「色(雰囲気)が変わるところはどこかな?」
質問されると、生徒は自然と“考え始めます”。
この 考える時間 が、演奏を深めるためには欠かせません。
質問に答えながら、
「ここは少し優しくしたい」
「この前に小さくしてクライマックスをつくろう」
といった表現のイメージが、自分の中に芽生えていくのです。
生徒のイメージは否定しない
質問をすると、生徒それぞれに違う答えが返ってきます。
「私はここが一番強いと思った」
「私はここが優しい感じだと思う」
そのイメージは、私と違っていても決して否定しません。
なぜなら、演奏には「正解がひとつだけ」ということはないからです。
むしろその子自身の感じ方こそ、その生徒の音楽の個性。
私の役割は「そのイメージをどう音にしていくか」を一緒に考えることです。
生徒のイメージを尊重すると、安心して自分の考えを言えるようになります。
そして、その“自分の音楽観”を育てていく過程こそが、レッスンの醍醐味だと思っています。
生徒からの「なぜ?」は成長のサイン
質問を続けていくと、自然と生徒のほうからも「なぜ?」が出てくるようになります。
「なんでここ弱くするの?」
「なんでこの指使いがいいの?」
私は、この“なぜ?”をとても大切にしています。
疑問を持つことは、自分の演奏を主体的に考えている証拠だからです。
そして、できる限り丁寧に答えるようにしています。
「なぜ?」に向き合う時間は、生徒の理解を深めるだけでなく、
音楽を自分の意思で選び取る力につながります。
自分で気づいたことは、ずっと残る
こちらが「こうしてね」と指示しただけの変化は、その場ではできても定着しにくいものです。
しかし、生徒が自分で考え、気づき、納得して選んだ表現は、深く身につきます。
「考えるレッスン」には時間がかかることもありますが、
長い目で見ると、この積み重ねが演奏の質を大きく引き上げてくれます。
自分のイメージを持ち、それを音に反映できる生徒は、
曲が変わっても自分で表現を組み立てられるようになります。
演奏するうえでも大切な「質問力」|筆者の経験談
ピアノレッスンだけでなく、ピアノを弾くうえで「質問力」はとても大切な力です。
「なぜこのように書かれているのだろうか」
「ここはどんなふうに弾いたらいいだろうか」
「作曲家は何を思って和声進行にしたのだろう」
このように考えることが、より良い演奏へとつながります。
私も練習するうえで、問いを立てることを大切にしています。
小さいうちは「質問を立てる」ということも一人ではなかなかできないと思うので、
その役目を代わりに私が担えたらと考え、レッスンで生徒さんに質問するようにしています。
「たしかに、なんでだろう」と考えるだけでも、次の思考を促すきっかけになります。
「そっか!だからそうなっているんだ!」とある考えを発見した時の生徒さんの表情は、
とても生き生きしています。
まとめ|質問は“自立した演奏”を育てる
質問を通して生徒が自分で考えるレッスンは、時間も手間もかかります。
でも、その中で育まれる「考える力」「感じる力」は、将来の大きな財産です。
・受け身ではなく、自分で考える
・イメージを持ち、それを音にする
・疑問をもち、それを解決しようとする
こうした力をレッスンで育てていくことで、生徒はただ弾けるだけでなく、
“音楽をつくる人”へと成長していきます。
これからも、生徒の気づきを尊重し、対話を通して音楽を育てるレッスンを続けていきたいと思います。
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