調号から調を判断する?
前々回、前回と「調」についてお話してきました。
「調」とは音楽を演奏するうえにおいて、とても大事な要素です。
皆さんは「調」についてどこまで理解していますか?
今回の記事を読めば、きっとあなたも「調号(調を表す記号)」から何調かを簡単に判別できるようになります。
まず、♯と♭では判別方法が異なります。
そこさえ押さえられれば、ばっちりです。
「調号」から「調」を判定する具体的な方法
「調号」から「調」を判定するには、まず長調から判定するのが鉄則です。
※慣れてくれば短調からの判別も可能です。
皆さん、前回の記事に載せた♯・♭の呪文は、何も見ずに言うことができますか?
前回の記事をまだ読んでいないという方のために、もう一度書きます。
調号を簡単に覚えられる♯の魔法の呪文は、
「ファドソレラミシ」!
♭の魔法の呪文は、
「シミラレソドファ」!
です。
これを前提として解説していきます。
♯の場合
長調の判別
手順は4つ。
1.書かれている最後の♯に注目します。
2.その♯がついた音から半音上がります。
3.半音上がった音をハ二ホヘトイロハ(日本音名)に読みかえます。
4.それに「長調」という言葉をくっつければ完成。
半音とは、白鍵・黒鍵ともに含めた隣同士の音のこと。
ちなみに半音+半音で「全音」というものもあります。
言葉で見てもイメージしづらいと思うので、具体例をいくつか出して説明します。
〈例1〉♯1個の場合

1.この場合はファの♯ひとつしかないので、最後の♯はファの♯とし、注目します。
2.ファの♯から半音上がります。

★印がファの♯の位置、○で囲まれたところが半音上がったところです。
ここでは「ソ」の音になりますね。
3.あとはそれをハニホヘトイロハに読みかえる。
「ソ」の音は、ハニホヘトイロハ(日本音名)に読みかえると、
「ト(日本音名)」になります。
4.これに「長調」という言葉をくっつけて、
「ト長調」
となります。これで♯における長調の判別ができました。
〈例2〉♯3個の場合

1.最後の♯は「ファドソ」の」「ソ」。これに注目する。
2.ソの♯から半音上がる。

★印がソの♯。赤○印が半音上がったところ。
ここでは、「ラ」の音になります。
3.半音上がった先の音「ラ」を、ハニホヘトイロハ(日本音名)に読みかえる。
「ラ」→「イ(日本音名)」
4.それに「長調」という言葉をくっつける。
というわけで、♯3個の長調は、
「イ長調」
となります。
短調の判別
今度は、〈例1〉♯1個(ト長調)の短調判別として解説続けます。
まず短調は、長調の判別ができたら行う手順として3つあります。
1.長調から3度下げる。
(正確には「3度」ではなく「短3度」。ここでは便宜上「3度」としています。)※別記事で解説予定。
2.それをハニホへトイロハ(日本音名)に読みかえる。
3.それに「短調」という言葉をくっつければ完成。
-3度についての補足①-
音楽の世界では、音と音の距離を「○度」という言葉で表します。(これを「音程」といいます)
0度は存在せず、同じ音同士は「1度」です。
つまり3度とは【ドとミの関係】【レとファの関係】【ミとソの関係】【ファとラの関係】【ソとシの関係】…といった具合です。
〈例1〉♯1個(ト長調)の場合
1.「ト」=「ソ(イタリア音名)」から3度下がる。
ソ→ファ→ミ
2.それを「ハニホヘトイロハ(日本音名)」に読みかえる。
「ミ」→「ホ(日本音名)」
3.さらにそれに「短調」という言葉をくっつければ完成です。
「ホ短調」
あっという間に判別成功です。
♯の短調判別で注意すべきポイント
短調は、長調が判別できていれば簡単に判別が可能なのですが、落とし穴があります。
〈例2〉♯3個(イ長調)の短調判別で、その落とし穴を説明します。
〈例2〉♯3個(イ長調)の場合
1.「イ」=「ラ(日本音名)」から3度下がる。
ラ→ソ→ファ
2.それを「ハニホヘトイロハ(日本音名)」に読みかえる。
「ファ」→「ヘ(日本音名)」
(3.これに「短調」という言葉をくっつけて、完成!)
といきたいところなのですが、ここで落とし穴。
「ヘ短調」では不正解です。

言っていることが違うじゃないか!
と言われる前に解説します。
短調の落とし穴
「イ長調」の「イ」から3度下がった音、「ファ(日本音名)」という音は、調号上すでに♯がついた状態として提示されています。
〈例2〉の図をもう一度出しましょう。

ここでの調号は、「ファドソ」。
ファに♯を付けることが義務付けられています。
よって、♯3個(イ長調)の短調判別の正解は、
「嬰ヘ短調」
となります。
「嬰(えい)」とは日本語で♯のこと。
ちなみに「変(へん)」とは日本語で♭のこと。
自分で割り出した答えが調号にすでに含まれていないか、よく確認しましょう。
♭の場合
つづいて♭の場合で調判別していきます。
♯の長調の判別とは手順が異なります。
長調の判別
♭の長調判別の手順は3つです。
1.最後の♭から二番目の♭に注目する。
2.それを「ハニホヘトイロハ(日本音名)」に読みかえる。
3.さらにそれに「長調」という言葉をくっつけて、完成。
先ほどと同じように、二つ例を出して解説します。
〈例3〉♭2個の場合

1.最後から二番目の♭に注目する。
ここでの♭の順番は「シミ」
よって注目するのは「シ」の♭になります。
2.それを「ハニホヘトイロハ(日本音名)」に読みかえる。
「シ♭」→「変ロ」
3.さらにそれに「長調」という言葉をくっつけて、完成!
よって、答えは
「変ロ長調」
となります。
♭の長調判別で注意すべきポイント

あれ?♭1個だったら、一つ前ってどこに注目するの?
〈例4〉♭1個の場合

「シ♭」しか調号がついていないので、一つ前ってどこだろう?と思われた方がいましたら、すばらしいです。
私流の解釈なのですが、
1.最後から二番目の♭に注目する。(あれ?どこだろう。)
一番前まできたら、一番後ろに戻って注目する!
「シミラレソドファ」
→の向きとしては、シから大きく回ってファに向かうイメージです。
あとは、今までと同じ手順を行います。
2.それを「ハニホヘトイロハ(日本音名)」に読みかえる。
「ファ」→「ヘ(日本音名)」
3.さらにそれに「長調」という言葉をくっつけて、完成!
よって、答えは
「ヘ長調」
となります。
短調の判別
♭の短調判別は、♯の短調判別と手順は同様です。
1.長調から3度下げる。
(正確には「3度」ではなく「短3度」。ここでは便宜上「3度」としています。)
2.それをハニホへトイロハ(日本音名)に読みかえる。
3.さらにそれに「短調」という言葉をくっつければ完成。
順番に先ほどの例に戻って見ていきましょう。
〈例3〉♭2個(変ロ長調)の場合
1.「変ロ」=「シ♭」から3度下げる。
シ→ラ→ソ
2.それをハニホへトイロハ(日本音名)に読みかえる。
「ソ」→「ト(日本音名)」
3.さらにそれに「短調」という言葉をくっつければ完成。
よって、答えは
「ト短調」
となります。
〈例4〉も同様に判別ができます。
〈例4〉♭1個(ヘ長調)の短調は、ファから3度下の二短調です。
♭の短調判別で注意すべきポイント
♯(短調)での注意ポイントと同様に、3度下の音がすでに調号に含まれていないか確認してください。調号に含まれていた場合は、「変」が始めにつきます。
まとめ
長くなりましたが、これらを知っているのと知らないのでは、学ぶ進み具合に差が出ます。
♯の調判定
- 長調は、調号の最後の♯から半音上がった音をハニホヘトイロハに読みかえる。
- 短調は、長調から3度下に下がってハニホヘトイロハに読みかえる。ただし、3度下の音がすでに調号に含まれていないか確認する。
♭の調判定
- 長調は、調号の最後から二番目をハニホヘトイロハに読みかえる。ただし、♭1個は「シミラレソドファ」の一番後ろをハニホヘトイロハに読みかえる。
- 短調は、長調から3度下に下がってハニホヘトイロハに読みかえる。ただし、♯(短調)と同様、3度下の音がすでに調号に含まれていないか確認する。
ぜひこの記事をじっくり読み直してもらって、例で出した以外の調号でも調判別して練習してくださいね。
あとは、実際に鍵盤でその調号を使って音階(音の階段)を弾いてみると、ぐっと理解が深まるはずです。
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