「どうしたらピアノが上手くなれるんだろう?」
レッスンをしていると、生徒さんからこのように聞かれることがあります。
ピアノの上手さというのは、単に“速く弾ける”とか“ミスが少ない”ということではありません。
もっと深いところ、「聴く力」や「音へのこだわり」「心の在り方」が関わっています。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
「ピアノが上手な人に共通していること」を5つ紹介します。
① 自分の音をよく“聴いている”
上手な人ほど、弾いているときに自分の音をよく聴いています。
ただ鍵盤を押すだけでなく、「今、どんな音が鳴ったか」「自分が想像している音が出せているか」を意識しているのです。
冷静に自分が出している音を聴くことは、自分が理想としている音を出せているかどうかを確認するために必要です。
「なんとなく弾く」ではなく、「耳を使って弾く」。
この意識が上達への大きな一歩です。
② 音に“表情”をつけられる
上手な人の演奏には、言葉のような抑揚があります。
同じ曲でも、音の強弱やタッチの細やかな違いで、人がしゃべったり歌ったりしているように聞こえる。
これは、ただ力加減を変えているわけではなく、
音に「表情」をつけているからです。
たとえば
- 柔らかく語りかけるような音
- 息をのむような静けさ
- 明るくはじけるような響き
ピアノを“喋らせる”ことができる人は、聴く人の心を自然と惹きつけます。
③ 練習の仕方が上手い
上手な人は、練習の仕方も上手です。
やみくもに弾くのではなく、「なぜ弾けないのか、どこが弾けないのか、どんな音を出すのか」を考えながら練習しています。
- なにが原因でつまずいているのか考える
- 弾けないところを明確にする
- 音を出さずに出したい音を頭でイメージする
こうした“工夫”を積み重ねる人ほど、確実に上達します。
「弾けるようになるまでやる」ではなく、
「弾けるようにするために考える」──これが、上手な人に共通する姿勢です。
④ 弾くときに“力が抜けている”
ぱっと聴いて力強そうな演奏でも、実は無駄な力は一切入っていません。
手首や腕、肩の力が抜けていて、動きがしなやか。
「力を抜くと、音が鳴らないのでは?」と思われがちですが、
実際は逆で、柔らかい音から芯のある音まで自由に出せるようになります。
“頑張って弾こう”とするよりも、
“音を出す感覚を楽しもう”という気持ちで鍵盤に触れると、自然と音が変わってきます。
⑤ 音楽を“楽しんでいる”
結局のところ、これがいちばん大事です。
上手な人ほど、心からピアノを楽しんでいます。
もちろん努力もたくさんしています。
ですが、練習の中に小さな発見を見つけたり、
「このフレーズ、きれいだな」と思える瞬間を味わっている。
その“楽しむ気持ち”が音に乗ると、聴く人にも自然と伝わります。
音楽は「上手く弾く」ことより、「どう感じて弾くか」。
上達の原動力は、いつでも“楽しむ心”です。
曲の好きなところが伝わるように弾く|筆者の経験談
大学時代、私はコンクールをいくつか受けていました。
あるコンクールの本番5日間前、先生のレッスンを受けたときの話です。
私は一生懸命先生の前で弾きましたが、先生からのコメントは芳しくないものでした。
そのときに同じ門下の先輩が先生に挨拶にきて、私にもアドバイスをくれました。
「その曲のどこが好きですか?それが聴いている人に伝わるように弾けばいいんじゃないかな。」
私はそれを聞いてはっとしました。
弾くことに意識を向けすぎて、肝心な「その曲が好き」という気持ちをいつのまにか見落としてしまっていたのです。
以降、不安に囚われそうになる時には「この曲のいいところをお客さんに伝わるように弾こう」と強く意識するようにしています。
技術的な上手さも、もちろん大切ですが、それよりもピアノが上手な人に大切なのは「音楽が好き」という心だと、私は思います。
まとめ|上手な人ほど、音と心に誠実
ピアノが上手な人に共通するのは、
テクニックよりも「音と真剣に向き合う姿勢」です。
- 音をよく聴く
- 表情をつける
- 練習を工夫する
- 力を抜く
- 音楽を楽しむ
これらは、どんなレベルの人でも意識できることです。
ひとつずつ心がけていけば、あなたのピアノもきっと変わります。
ピアノは“音を奏でる”だけでなく、“自分と向き合う”時間でもあります。
焦らず、比べず、あなたらしい音を育てていきましょう。
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