日々の生活の中で、ふとした瞬間に心が動くことがあります。
朝の柔らかい光、雨の音、誰かの優しい言葉、思いがけない出来事……。
こうした瞬間に「自分はどう感じたか」に意識を向けることは、感性を磨く第一歩です。
感性は生まれつきのものだけではなく、日常生活の中で意識して育てることができます。
４歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
ピアノ演奏での表現を高める習慣について、お話しします。
1. 心が動いた瞬間に気づく
例えば、通勤中に聞いた鳥のさえずりに「嬉しい」と感じたり、
夕焼けを見て「切ない」と思ったりする瞬間。
こうした小さな心の動きに注目するだけで、日常の景色がより鮮やかに感じられるようになります。
重要なのは、ただ感じるだけでなく、その「感情」に名前をつけて意識することです。
「楽しい」「悲しい」「ほっとする」など、言葉にして自覚することで、自分の感覚を整理できます。
心が動いた瞬間に意識を向ける習慣を作ると、些細な出来事にも敏感になり、日常に小さな喜びや発見が増えていきます。
2. 自分の感情を観察する習慣
日常生活の中で感情の変化に気づくことは、感性を鍛えるトレーニングになります。
例えば、カフェでコーヒーを飲んでいるとき、ふと香りや味に心が動いた瞬間を観察します。「あ、この香りで気持ちが落ち着いた」「苦味で目が覚めた」という小さな気づきです。
こうして日常の中で心が動いた瞬間に気づく習慣を積み重ねると、
音や声のわずかな変化にも敏感になり、表現力を高めることにもつながります。
些細な音の違いに心が反応することで、より豊かな表現が可能になるのです。
3. 感情を記録して整理する
感性を磨くためには、感じたことを記録するのも有効です。
簡単な日記やメモアプリに、心が動いた瞬間とその理由を書き留めてみましょう。
例えば、「朝、カーテン越しの光を見て心が穏やかになった」
「道端の花を見て懐かしい気持ちになった」といった内容です。
書くことで感情を言語化し、自分の感覚に深く向き合うことができます。
日々の小さな心の動きを記録することは、感受性を高め、音の変化や表現力に敏感になる習慣にもなります。
4. 他の芸術や自然に触れて感覚を刺激する
日常生活の中で心を動かす習慣をさらに豊かにするために、
絵画や映画、写真など他の芸術にも触れることが効果的です。
自然の景色や光、色彩の変化、音の響きに意識を向けるだけでも、感情は自然に揺さぶられます。
例えば、美術館で絵を眺めて「この色彩は温かく感じる」と思う瞬間、
映画のワンシーンで涙が出そうになる瞬間、すべてが感性を磨くトレーニングです。
感覚を刺激する経験を重ねることで、音のちょっとした変化にも心が動くようになり、表現力を豊かにすることができます。
5. 日常の感性は誰でも磨ける
豊かな感性は特別な才能ではなく、日常の中で誰でも自然に感じられるものです。
自然や身近な風景、他者との関わり、芸術作品など、日々の小さな刺激に意識を向けることで、
心の動きに気づき、感受性を育むことができます。
日常生活で心が動いた瞬間に注目することは、音の小さな変化にも反応し、豊かに表現できる力を育てる第一歩です。
誰でも意識すれば感性を磨くことができ、日常の景色や出来事がより鮮やかに感じられるようになります。
「あなたは感じることができない」と言われた過去｜筆者の経験談
私は昔からどこか冷静に物事をみてしまう部分があって（感情的になることも今では多いですが）、
歳の割には落ち着いていると、まわりからよく言われました。
演奏では表現するということがわからなくて、ただ指を動かす練習を重ねているだけでした。
そのおかげといっていいのか、譜読みは早い方ですし、テクニックもある程度は身に付きました。
ですが、楽譜にあるちょっとした音の変化に心を動かすことができなくて、
「あなたはこの先も（音楽のちょっとした変化を）感じることはできないよ。」
とまわりの人に言われたことがあります。
私はその言葉を言われたとき、ものすごく悔しかったのを今でも覚えています。
そこからどのようにしたら感性を磨けるのか、ということを考え始めました。
それこそ、美術や舞台などほかの芸術も積極的に見に行きましたし、
「いま自分はどのように感じているのか」ということに頻繁に目を向けるようになりました。
そうして少しずつ、自分の内側にある微細な感情の揺れに耳を澄ます習慣が生まれ、
気づけば音楽の中の“わずかな違い”にも小さな感動を覚えるようになっていました。
まだ道半ばですが、あの言葉をバネにして歩いてきた時間が、いまの私の支えになっています。
まとめ
日常生活で心が動いた瞬間に気づくことは、
感性を磨き、表現力を高めるための簡単で効果的な方法です。
自然や他者、芸術に意識を向け、自分の感情を観察し記録することで、
音の細やかな変化にも心が反応し、豊かに表現できるようになります。
小さな気づきの積み重ねが、生活や人生、音楽をより彩り豊かで深みのあるものにしてくれます。
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