
発表会やコンクールまで、いよいよあと1週間。
「まだここが不安」「もっと弾き込まないと失敗するかも」と、焦りを感じてはいませんか?
実は、本番1週間前の過ごし方で最も大切なのは、猛練習することではありません。自分自身を最高の状態に整える「調整(コンディショニング)」です。
この時期にむきになって練習し、心身を削ってしまうのは、高確率で失敗を招くキケンな行為。
今回は、プロのピアニストも実践している、本番で120%の力を出し切るための過ごし方について解説します。
筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。
「練習」から「調整」へ。本番1週間前の鉄則

本番1週間前になったら、思考を「上達するための練習」から「本番で出し切るための調整」に切り替えましょう。
健康的な生活と十分な睡眠
どんなに素晴らしいテクニックを持っていても、体が疲れていては指が思い通りに動きません。
- 睡眠を削らない:脳の疲れはミスタッチに直結します。
- 食事をしっかり摂る:集中力を維持するためのエネルギーを蓄えましょう。
「健康な体に、健全な音楽が宿る」という意識で、まずは生活のリズムを整えることが第一歩です。
本番と同じ「時間・衣装・靴」でシミュレーション
意外と見落としがちなのが、環境のシミュレーションです。
- 同じ時間に弾く:本番が午後2時なら、家でも午後2時に集中して1回通してみる。
- 衣装と靴を着用する:特に靴は重要です。ヒールの高さや底の厚みで、ペダルの踏み心地は劇的に変わります。
本番さながらの「予行演習」をすることで、当日の違和感を最小限に抑えることができます。
賢い「微調整」のやり方:録音と楽譜の確認

この時期の練習は、量より「質」と「客観性」が重要です。
自分の演奏を録音して聴く
「弾いているつもり」と「聞こえている音」のギャップを埋めましょう。
録音を聴くのは勇気がいりますが、客観的に自分の演奏を聴くことで、「ここはもっと丁寧に」「この音は出しすぎ」といった冷静な判断ができます。
楽譜をじっくりと「眺める」
ピアノに向かわない時間も、立派な練習です。楽譜を広げ、隅々まで眺めてみてください。
「ここにこんな指示があった」「この和音の構成音は何だったか」と再確認することで、暗譜の不安が解消され、演奏の解像度が上がります。
細かいパッセージの「丁寧なさらい」
むやみに通し練習をするのではなく、苦手な箇所や細かいパッセージだけを抜き出し、ゆっくりと丁寧に確認します。
指の動きを「再プログラミング」するようなイメージで、ぬかりなくチェックしましょう。
本番1週間前に「やってはいけない」3つのこと

焦りからくる以下の行動は、演奏を壊す原因になります。
- 過度な練習(弾きすぎ)
腱鞘炎のリスクだけでなく、脳が疲弊して集中力が散漫になります。 - 速いテンポでの通し練習ばかりする
速いテンポでばかり弾いていると、指が滑りやすくなり、暗譜が飛ぶ原因になります。この時期こそ「ゆっくり練習」を混ぜることが不可欠です。 - 「失敗したらどうしよう」と悩みすぎる
ネガティブな想像は、体に余計な力み(緊張)を生みます。不安になったら「どう弾きたいか」というポジティブなイメージに書き換えましょう。
【筆者の経験談】猛練習の罠。私がコンクールで学んだ「引き算」の勇気

私には、コンクール前に忘れられない大失敗の経験があります。
本番1週間前、「どこまで仕上げればいいのか」という出口のない不安に襲われ、ただ焦りに任せて毎日何時間もピアノに向かい続けました。
「これだけ練習したのだから大丈夫」——そう自分に言い聞かせ、指を動かし続けることでしか不安を打ち消せなかったのです。
しかし、本番前日のレッスンで先生から告げられたのは、「全然良くない」という厳しい言葉でした。
ある友人が言った「本番1週間前に焦って練習しているようでは、すでに失敗している」という言葉が、今なら痛いほどわかります。
私の先生も、「本番が近づくにつれて、練習時間は徐々に減らしていくのがベストだ」と教えてくれました。
必死に詰め込むほど、音楽は余裕を失い、硬くなってしまう。
この経験を経て、私は本番1週間前こそ、あえて「ピアノから離れる時間」を作るようにしています。
それは単なる休息ではなく、自分の演奏を客観的に捉え直すための、大切な「熟成期間」なのです。
最後に:自分が楽しまないと、聴き手は楽しめない

音楽は「音を楽しむ」と書きます。
本番で聴いている人に何を伝えたいのか。どんな景色を見せたいのか。改めてその曲の魅力を考えてみてください。
聴いている人を楽しませる最大の秘訣は、演奏しているあなた自身が、その瞬間の響きを楽しむことです。
「これだけ準備したんだから、あとは楽しむだけ!」
それくらいの気概で、当日を迎えてください。適度にリラックスし、集中力を高めたあなたの演奏は、きっと聴く人の心に響くはずです。
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筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。

