♯104 ピアノのアクセントは“強く弾く”だけじゃない|意味・重心・感情で変わる表現法を徹底解説

練習法と上達のヒント

ピアノの譜面に出てくるアクセント(>)。
多くの人は「ここを強く弾く」という指示だと思っています。

しかし、アクセントの本質はもっと奥深く、決して“音量を上げる”だけの記号ではありません。
アクセントとは、音楽の中に意味や重心、感情を与えるための大切な表現なのです。

今回は、4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、

ピアノにおけるアクセントの本当の役割を、できるだけ具体的にお話ししたいと思います。


■ アクセント=「強い音」では、音楽が硬くなる

アクセントを“強打”として捉えてしまうと、音が硬くなり、流れが止まってしまうことがあります。
とくに初心者のレッスンでは、アクセントがついた瞬間だけ突然 ff のように大きく弾いてしまい、フレーズが分断されてしまうことも少なくありません

しかし実際のアクセントは、単に「大きく」ではなく、

  • その音に注目を集める
  • 語り口の重心を置く
  • 次への推進力をつくる
  • 音楽の中の“意味”を強調する

といった役割を持っています。

つまり、アクセントは 音量ではなく“意味”の強調 なのです。


■ アクセントは「言葉のイントネーション」と同じ

アクセントを理解するヒントとして最もわかりやすいのは、言葉のイントネーションとの共通点です。

たとえば日本語でも、微妙にイントネーションを変えるだけで、伝わるニュアンスはまったく違いますよね。

ピアノのアクセントも同じ。
どのように“重心”を置くかによって、音楽が語りかける意味が変わります。

  • 少し沈むように重さをのせるアクセント
  • 息を吸うように軽く前へ押すアクセント
  • ささやくようなアクセント
  • 不安や痛みを感じさせる、内側に向いたアクセント

どれも記号は同じ「>」ですが、表現はまったく違います。


■ 感情のアクセント:痛み・叫び・ためらい

アクセントには、感情を伝える役割 もあります。

たとえばショパンのノクターンに出てくるような、さりげないアクセント。
それは決して派手な強調ではなく、「心の痛み」や「言葉にならない叫び」をにじませるためのごく繊細なタッチ で弾かれます。

クラシック音楽には「表情記号」だけでは表しきれない感情があり、アクセントはその感情の“道しるべ”になります。

  • 少し沈み込むようなアクセント → 悲しみ
  • 上へ跳ね上がるアクセント → 驚きや喜び
  • 横へ流れるアクセント → ため息や迷い

このように、アクセントの種類によって、音楽が語りかける情緒が変わっていきます。


■ アクセントを“重さ”で弾くということ

鍵盤の上では、「強く叩く」ではなく “重さをのせる” というアプローチを取ることもあります。

重さのアクセントとは…

  • 指の腹に少しだけ体の重力を預ける
  • 打鍵スピードをむやみに上げず、重心を音に沈める
  • 手首が固まらず、自然に動ける状態を保つ

これらを意識するだけで、アクセントの質は大きく変わります。

重さをのせたアクセントは、音が深く、柔らかく、でもしっかりと響きます。
聴く側は「ここが大事なんだ」と自然に感じ取ることができます。


■ アクセントは「音楽をどう語るか」を示すもの

アクセントの意味を考えずに弾いてしまうと、音楽は単調になります
しかし、アクセントの“言葉としての役割”を理解できると、演奏は一段と立体的になり、伝わる力を持つようになります。

アクセントは、音楽にメッセージを宿すもの。

  • この音は何を語りたいのか
  • どんな気持ちでここへ向かっているのか
  • なぜ作曲家はここに印をつけたのか

その意味を考えながら音を出すことで、演奏はより説得力を帯びていきます


アクセントの真意を探る|筆者の経験談

アクセントとほぼ同等の意味を持つ音楽用語で
「sf(スフォルツァンド)」というものがあります。
こちらもアクセント同様「強く弾く」だけでは、意味がないと思っています。

「なぜ、作曲家がそこにアクセントやsfをつけたのか」
その意味を考えて、「強く弾く」以外の意味を持たせられた時に、
初めてアクセント、またはsfは意味のあるものになります。

と言っている私ですが、昔弾いていた曲を弾き直したりすると、ついつい癖でただ強く弾いてしまっていることがあります。

こうして皆さんにお伝えしているように見えて、実は自分への戒めとしても、このブログを書いています。

■ まとめ

アクセントは“強く弾く記号”ではありません。
それは、音楽に 重心・ニュアンス・感情・方向性 を与えるための大切なサインです。

  • 言葉のイントネーションのように、意味を持たせる
  • 重さをのせ、音に深みを与える
  • 感情を含ませ、内面を表現する
  • フレーズ全体の流れを整える

アクセントの本質を理解すると、同じ曲でも驚くほど表現が変わります。
音楽が語りだし、聴く人の心に深く届く演奏へと繋がっていくはずです。


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