
「どうしてそんなに長くピアノを続けられたのですか?」
「先生にとって、ピアノの原点はどこにあるのですか?」
レッスンで時折そんな質問をいただくことがあります。
私の答えは、迷うことなく一つです。それは、4歳から高校卒業まで通い続けた「地元のヤマハ音楽教室」での日々です。
今の私があるのは、決して特別な才能があったからではありません。
そこには、共に切磋琢磨した仲間の存在と、どんな時も私の味方でいてくれた先生の言葉がありました。
今回は、私の音楽人生の根っこにある、大切にしている記憶を紐解いてみたいと思います。
筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。
始まりは「自然な流れ」だった

私がピアノを始めたきっかけは、実はとてもシンプルでした。
先に二人の兄がピアノを習っていたため、「次は私の番」というごく自然な流れで、4歳の時にヤマハの幼児科コースの門を叩きました。
振り返ってみれば、私はピアノ以外の習い事に通ったことがありません。
水泳も習字も塾も経験せず、ただ、最初に与えられたのがたまたまピアノだった。
でも、その「たまたま」が私の人生を決定づける一生の宝物になったのです。
仲間の刺激と、エレクトーンの響きに包まれたグループレッスン

小学校一年生からは「専門コース」に進み、個人レッスンとグループレッスンの週2回、音楽漬けの日々が始まりました。
特に印象に残っているのは、9人ほどの仲間と過ごしたグループレッスンです。一人一台のエレクトーンに座り、みんなでアンサンブルをしたり、声を合わせて歌ったり。
私は最初から何でもできたわけではありません。
グループレッスンで行われる「聴音(耳で聴いて楽譜に書くこと)」がどうしても苦手で、こっそり友達のノートを見せてもらっていた……
なんていう、今だから言える苦い思い出もあります。
でも、そこには最高の刺激がありました。
「あの子、もうあんなに難しい曲を弾いている!」
「あの子が作る曲、なんて素敵なんだろう」
自分より後に始めたはずなのに、猛烈な勢いで追いついてきた優秀な友達の姿に、幼いながらも「私も頑張らなきゃ」と背中を押されました。
エレクトーンの発表会で、動きの激しいヴァイオリンパートを夢中で担当したこと。先生のピアノの周りにみんなで集まって、大声で歌ったこと。
あの日々が、「音楽はみんなで楽しむものだ」という大切な感覚を私に植え付けてくれました。
「ちなみちゃんは上手」先生がくれた魔法の言葉

個人レッスンでは、教本がどんどん進んでいくのが嬉しくて仕方がありませんでした。
あまりに早いペースで進んでいたので、正直に言うと「どの曲を弾いたか」という細かい記憶はあまり残っていないほどです(笑)。
そんな私を支えてくれたのは、いつも優しく、そして真っ直ぐに私を認めてくれた先生の存在でした。
「ちなみちゃんは上手よ。もっと自信を持って」
先生はいつもそう言って、私の良いところを伸ばしてくれました。
厳しい指導で叩き込まれるのではなく、先生が私の「一番の味方」でいてくれたこと。
それが、私がピアノを「嫌い」にならずに済んだ、一番の理由だったと思います。
(母はそこそこ厳しいタイプだったので、バランスが取れていたのかもしれません。笑)
コンクールでの栄光と、初めて知った悔し涙

小学校2年生から、コンクールという勝負の世界にも足を踏み入れました。
初めて受けた所属楽器店のコンクールでは、運よく「最優秀賞」をいただくことができました。
あの時の、胸が弾むような嬉しさは今でも鮮明に覚えています。
しかし、学年が上がるにつれて、現実は甘くないことを知りました。
練習を重ねても思うような結果が出ず、ステージの裏で悔し涙を流したことも一度や二度ではありません。
でも、そんな「思うようにいかない日々」さえも、今となっては私の演奏に深みを与えてくれる大切な財産となっています。
高校を卒業するまで、ずっとヤマハでお世話になりました。
大きくなってからも、ゲストとして発表会に呼んでいただいたりと、私の音楽生活は常にあの温かい場所に守られていました。
最後に:あなたの「原点」を一緒に作りたい

私のピアノ講師としての原点は、間違いなくあのヤマハでの日々にあります。
「音楽は楽しい」「先生は味方」「仲間がいるから頑張れる」
今、私は教える立場になりました。かつての私が先生からもらった「自信」というギフトを、今度は私が生徒さんたちに手渡したい。
そう願って、毎日のレッスンに向き合っています。
「大人から始めたから、自信がない」
「なかなか上手く弾けなくて、自分が嫌になる」
もしそんなふうに思うことがあったら、思い出してください。かつての私も、聴音ができなくて友達を頼ったり、コンクールで泣いたりしていたことを。
ピアノは、いつだってあなたの味方です。
そして私も、あなたの音楽人生の「一番の味方」でありたいと思っています。
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筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。

