♯44 作曲家の背景を知ると演奏が変わる!ピアノの表現を深めるためのヒント

ピアノ教育

なぜ作曲家の人生を知ることが演奏に役立つのか

ピアノを演奏するとき、私たちは楽譜に書かれた音をただ再現しているわけではありません。

その一音一音の背景には、作曲家が生きた時代、体験した出来事、そして心の中に抱えていた思いがあります。

作曲家の人生やエピソードを知ることで、同じ曲でも見える景色や感じる色合いが変わり、演奏の説得力が増していきます。

4歳からピアノを始めて音高・音大と進み、約30人の生徒にピアノを教えながら現役で演奏活動を続ける私が、「作曲家の背景を学ぶことで演奏がどう変わるのか」、そして実際に「どのように調べて活かせばいいのか」を解説します。

作曲家の背景を知ることで演奏が深まる理由

音楽は作曲家の人生の一部

モーツァルトの明るさ、ベートーヴェンの力強さ、ショパンの繊細さ。

こうした特徴は偶然ではなく、彼らの人生や時代背景と強く結びついています。

作品と作曲家の人生が分かりやすく結びついている例をいくつか紹介します。

ベートーヴェン(1770–1827)

ナポレオン戦争や革命の時代に生き、社会が大きく変化していた背景が音楽に表れています。

・交響曲第3番「英雄」

当初はこの曲を革命の理想を体現する人物としてナポレオンに献呈しようとしました。

しかし、ナポレオンが皇帝に即位して独裁者となったことに失望し、結局献呈はしませんでした。

「英雄」は、自由と人間の尊厳を讃える音楽として構想されながら、ナポレオン個人ではなく普遍的な英雄像へと転じたのです。

ショパン(1810–1849)

祖国ポーランドを離れ、亡命者としてパリで活動しました。祖国を想う気持ちが作風に濃く影響しています。

・練習曲集 Op.10-12「革命」

1831年、故郷ポーランドで起こった「十一月蜂起(ロシア支配に対する独立運動)」の鎮圧を知ったときに作曲されたといわれます。

ショパン自身はすでに国外におり、祖国に戻れずそのまま亡命者のような立場になりました。

ショパンが直接戦場に立つ代わりに、亡命先から祖国喪失の痛みと怒りを音楽で表現したものとされています。

プロコフィエフ(1891–1953)

20世紀ソ連という激動期に生き、国家と芸術の間で葛藤しました。

・ピアノソナタ第7番「戦争ソナタ」

第二次世界大戦中の1942年に作曲。

この作品の激しく力強い音楽表現は、世界大戦やソヴィエト体制の深刻な社会状況が作品に反映されていると考えられます。


調べ方のヒント

伝記や書簡を読む

自分が演奏する作曲家の伝記や、作曲家が書いた手紙、その作曲家に詳しい人の解説を読むのがおすすめです。

作曲されたときのことだけでなく、作曲家の人生や思考を知ることが演奏には大切です。

「その人が何を大切にしてどんなふうに生きたのか」

これを知ることで、演奏へのヒントをつかむことができます。

作曲家が何を考えていたのかなんて正確に知ることは不可能ですが、想像することはできます。

「何を思ってこの曲を作曲したのか」

残されたいろんな資料を駆使して想像します。

調べる際は、ネットでも書籍でも構いません。信頼できるものを利用しましょう。

時代背景を知る

作曲家が生きた時代の社会情勢や当時の文化を知ると、作品の雰囲気を理解しやすくなります。

当たり前ですが、西洋音楽を作った作曲家たちと今を生きる私たちの環境や常識はまったく異なります。

今の私たちの物差しで作品を測ってしまうと、作品への理解はとんちんかんなものになってしまうでしょう。

私たち演奏家は、作曲家の想いを汲んで演奏しなければ意味がありません。

作曲家がどのような環境に置かれて、どんな想いで作曲したのか。

時代背景からも読み取りましょう

他の作品と比較する

同じ作曲家の別の曲を聴くと、その時期特有の気分や作風の変化がわかります。

自分が演奏する曲だけでなく、積極的に同じ作曲家の異なる作品を聴くようにしましょう。

言葉には言い表せない、作曲家特有のなにかを感じ取れるはずです。

それは、表現を考える際にきっと役に立つはずです。

私もレッスンの際に、よく同じ作曲家の別の作品を聴くようにと言われていました。


私がレッスンで先生から言われたこと

これまで幾度となくレッスンを受けてきた私ですが、いつも先生から言われていました。

「作曲家や作品について調べること」(ネットでもかまわない)

これをおろそかにしていると、必ず怒られました。

「それを知らないで弾けるわけがない」と。

ピアノを弾いていると、どうしても目の前の難しいパッセージを弾くことに一生懸命になってしまって、作曲家や作品のことを調べるといった作業が後回しになってしまうことがあります。

それは、私の場合習慣によるところも大きいかもしれません。

ピアノの前に座って弾くという習慣はあるけれど、作品の背景を調べるという行為が根付いていない、ということです。

今では調べるようになりましたが、「あの時はどうして後回しにしてしまったのだろう」と後悔しています。

これを読んでくださった皆さんには、ぜひ早い段階で作品や作曲家を調べる重要性に気づいていただきたいです。


まとめ

作曲家の人生を知ることは、演奏に「説得力」と「深み」を与えてくれます。

楽譜の裏側にあるストーリーを知ることで、演奏が自分自身の表現として輝き出すのです。

次に練習する曲があれば、ぜひその作曲家について少し調べてみてください。

きっと音の響きが違って聴こえるはずです。

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