♯136 子供の才能を伸ばす電子ピアノの選び方|「重さ」と「表現力」が鍵となる理由


「ピアノを習わせたいけれど、家にアップライトピアノやグランドピアノを置くスペースがない」
「マンションなので騒音トラブルが心配」
「最初から高価な本物のピアノを買うのは、経済的に少し勇気がいる」

お子様がピアノを始める際、多くの方が直面するのが「楽器選び」の悩みです。

理想を言えば、最初からアコースティックピアノ(アップライトやグランドピアノ)で練習してほしい。指導に携わる者として、その思いは拭えません。

しかし、現代の住環境やライフスタイルを考えると、電子ピアノという選択肢が現実的であることも重々承知しています。

ですが、ここで一つ強くお伝えしたいことがあります。

「鍵盤がついていれば、どれも同じ」と考えて電子ピアノを選んでしまうのは、非常にもったいないことであり、時にお子様の成長にとってリスクにもなり得ます。

今回は、後悔しない電子ピアノ選びの基準と、なぜ「本物に近いタッチ」が重要なのかについて、指導現場の視点から紐解いていきます。

筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。

電子ピアノ選びで「価格」よりも優先すべきこと

最も大切なことは「いかに本物のピアノに近いか」

家電量販店や楽器店に行くと、数万円から数十万円まで、幅広い価格帯の電子ピアノが並んでいます。

「初心者だから安いものでいい」「高いものは多機能すぎて使いこなせない」と判断してしまいがちですが、
実は電子ピアノの価値は機能の多さではなく、「いかに本物のピアノに近いか」という一点に集約されます。

本物のピアノと同じ「88鍵」あるものを選ぶ

選ぶ際の最低条件は、まず「88鍵」というフルサイズであること
そして、単に音が鳴るだけでなく、「タッチの重さ」「音色の変化」が本物に近いものを選ぶことが不可欠です。

特に注意したいのが、鍵盤を押し込んだ時の抵抗感、いわゆる「重さ」です。

ここを疎かにしてしまうと、のちに大きな壁にぶつかることになります。

幼児期だからこそ「鍵盤の重さ」が重要な理由

鍵盤の重さは、選ぶ際にとても重要なポイント

なぜ、それほどまでに鍵盤の重さにこだわる必要があるのでしょうか。
それは、ピアノが「全身を使って音を出す楽器」だからです。

特に3歳から6歳前後の幼児期は、体の骨格や筋肉が急速に発達する時期です。
この大切な時期に、おもちゃのような軽い鍵盤で練習する癖がついてしまうと、ピアノを弾くために必要な「指の力」や「関節の支え」が育ちません

柔らかいものばかり食べて、あごや噛む力が育たないのと同じです。

楽に弾ける「軽い鍵盤」は落とし穴

軽い鍵盤は、指先を少し動かすだけで簡単に音が鳴ってしまいます。一見、楽に弾けているように見えますが、実はこれが落とし穴です。

正しい姿勢で、腕の重さを指先にのせ、関節でしっかりと支えて鍵盤を底まで押し込む。

この一連の動作が身につかないまま成長してしまうと、いざ本物のピアノを弾いた時に「鍵盤が重くて指が動かない」「音が弱々しくて響かない」という事態に陥ります。

ピアノは「音を作る」芸術である

電子ピアノだけで練習を完結させることには、もう一つの懸念があります。それは、ピアノの本質が「指の運動」ではなく「音を作る芸術」であるという点です。

アコースティックピアノは、鍵盤を叩く強さ、スピード、離し方によって、無限の音色が生まれます。

一音一音に感情を込め、自分の耳で音を聴き、理想の響きを探求する。このプロセスこそが、音楽的な感性を養うのです。

表現力の高いモデルを

一方、多くの電子ピアノは、録音された音を再生する仕組みです。
叩き方による音色の変化には限界があり、どうしても「誰が弾いても同じような音」になりがちです。

だからこそ、少しでも「自分の打鍵によって音が変化する感覚」を味わえる、表現力の高いモデルを選ぶ必要があります。

とはいえ、電子ピアノでの音作りは限界があるため、
導入期は電子ピアノ、表現を求めるような段階になってからアコースティックピアノに代える、というのもひとつの手です。

筆者の経験談:上達の鍵は「最初の楽器選び」にあり。実体験から伝えたいこと

私自身、ピアノとの出会いは電子ピアノ(母いわく、当時としてはかなり高価なものだったそうです)でした。その後、上達に合わせてアップライトピアノ、グランドピアノへと練習環境を変えてきました。

今振り返ると、非常に恵まれた環境で学ばせてもらったと感じています。

時代は移り変わり、現在は最初からアコースティックピアノを用意されるご家庭は少なくなりました。住宅事情や騒音問題も無視できない現実です。

実際に私の教室でも、電子ピアノで練習しているお子さんは多いです。

レッスンはグランドピアノで行うため、生徒さんからは「鍵盤が重い」という声もあれば、逆に「弾きやすい」という声も聞かれます。

ただ、気になるのはその影響です。

長期間、鍵盤の軽い電子ピアノで練習してきた生徒さんの中には、指の関節の支えが弱く、音色やリズムが不安定になってしまうケースも見受けられます。

日頃使う楽器が、指の発達や奏法に影響を与えるのは間違いありません。
最初についた癖を後から修正するのは、想像以上に大変な作業です。

たとえ専門の道に進まなくても、「いつかあの難曲を弾きたい」と思ったとき、楽器による癖が大きな壁になってしまうのはとてももったいないことです。

ピアノを生涯のパートナーとして楽しむためにも、最初の楽器選びはぜひ慎重に考えていただきたいです。

音楽を一生の宝物にするために

もちろん、電子ピアノには、
「音量調節ができる」「ヘッドホンが使える」「置き場所を選ばない」といった、
アコースティックピアノにはないメリットがあります。

環境が許さない中で無理に本物を購入し、騒音を気にして練習が疎かになるよりは、納得のいく電子ピアノで毎日楽しく鍵盤に触れる方が、お子様にとっては幸せなことでしょう。

だからこそ、選び方には妥協しないでほしいのです。

本格的に音楽の道を志すのであれば、いずれは本物のピアノが必要になる時が来るかもしれません。しかし、その前段階として、電子ピアノは「音楽を好きになるための土台」を支える重要なパートナーです。

「指の力を育てる重さがあるか」
「自分の表現に音が応えてくれるか」

この視点を持って楽器を選んでみてください。

適切な道具は、お子様の指先を守り、耳を肥やし、音楽を奏でる喜びをより深いものにしてくれるはずです。

筆者プロフィール:

4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA