
「ピアノを習い始めたけれど、家にはどの楽器を用意すればいいの?」
「最初から高いアップライトピアノを買って、三日坊主になったらどうしよう……」
ピアノを始める際、もっとも大きなハードルとなるのが楽器選びです。
住宅事情、騒音問題、そして「将来どこまで本気で続けるかわからない」という不安。
実家に譲り受けられるピアノがあるという幸運なケースを除けば、ほとんどの方が「電子ピアノで十分? それとも無理してでも本物を買うべき?」と頭を抱えます。
今回は、ピアノ指導の現場を見てきた視点から、後悔しないための「楽器選びの基準」を本音でお伝えします。
筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。
意外な事実? ヨーロッパでも「電子ピアノ」が主流の理由

「本場ヨーロッパではみんな本物のピアノを弾いている」と思われがちですが、実はそうでもありません。
ドイツやフランスなど、アパルトマン(集合住宅)が多い地域では、日本以上に騒音問題が発生することも。
そうした背景もあり、世界的にも電子ピアノは広く使われています。
「ピアニストになるわけじゃないし、まずは電子ピアノから」という選択は、決して間違いではありません。
大切なのは「どの電子ピアノを選ぶか」という中身の問題です。
【警告】「なんとなく安いから」で選ぶのが一番キケンな理由

電子ピアノを選ぶ際、絶対に避けてほしいのが「とりあえず安ければいい」という基準で選ぶことです。
特に注意してほしいのが、「鍵盤の重さ」です。
ネット通販などで売られている安価なキーボードや、極端に鍵盤が軽い電子ピアノは、ピアノの練習には向きません。
なぜなら、それらは「正しい指の力」を奪ってしまう可能性があるからです。
例えるなら、「柔らかいものばかり食べ続けて、あごの筋肉や歯が育たない状態」と同じです。
スカスカと軽い鍵盤で練習していると、指の筋肉が鍛えられません。
その結果、いざレッスン室の本物のピアノを弾いた時に「重くて指が動かない」「思ったような音が出ない」と挫折してしまう初心者が非常に多いのです。
もし電子ピアノを選ぶなら、必ず楽器店で鍵盤のタッチを確認し、生ピアノに近い重さがあるものを選んでください。
アップライトピアノが「変な癖」を防いでくれる

一方で、やはり「本物(アコースティック)」であるアップライトピアノには、電子ピアノにはない大きなメリットがあります。
一番の利点は、「変な癖がつくのを防げる」ことです。
電子ピアノは、どう弾いてもスピーカーから「整った音」が出てしまいます。
しかし、本物のピアノは指先の繊細なコントロールがそのまま音に現れます。
「まだ習いたてだから騒音が心配」という方も多いですが、初心者の頃の音量はそれほど大きくありません。
また、最近のアップライトピアノには消音機能(サイレント機能)が付いているものも多いですし、厚手のカーペットを敷くなどの対策で解決できるケースも多々あります。
「高い電子ピアノ」を買うなら「中古のアップライト」という選択肢

もし、予算として20万円〜30万円程度の「高級な電子ピアノ」を検討しているなら、ぜひ「中古のアップライトピアノ」も選択肢に入れてみてください。
「新品じゃないと良くないのでは?」と思われるかもしれませんが、ピアノはメンテナンス次第で何十年も持つ楽器です。
実は、新品のピアノは鍵盤の動きがまだ硬く、馴染むまでに時間がかかることもあります。その点、しっかり調整された中古ピアノは、むしろ弾きやすく、音も馴染んでいることが多いのです。
中古のアップライトピアノであれば、高級な電子ピアノとほぼ同等の価格で見つかることもあります。
「楽器のせいで上達が妨げられる」というリスクをゼロにできることを考えれば、非常にコスパの良い選択と言えるでしょう。
【筆者の経験談】「指の力が足りない」と悩んでいた教え子の話

私自身の指導経験の中で、今でも忘れられない生徒さんがいます。
その子はとても練習熱心で、家では完璧に弾けていると言っていました。
しかし、レッスンのグランドピアノの前に座ると、どうしても音が弱々しく、速いパッセージが転んでしまうのです。
原因は、ご自宅で使っていた「安価な電子ピアノ」にありました。
鍵盤が非常に軽く、指先を置くだけで音が鳴ってしまうため、指の付け根の筋肉が全く育っていなかったのです。
結局、その生徒さんは「少し高価な、本物に近い鍵盤の重さを持つ電子ピアノ」に買い替えることになりました。
買い替えてからの上達は目覚ましく、「以前より鍵盤は重たく感じるけれど、弾きやすくなったよ」と笑顔で話してくれました。
「道具が人を作る」とは言いますが、特にピアノという繊細な楽器において、その影響は計り知れません。
本気で「道」を目指すなら、最終的にはグランドピアノへ

もし今後、コンクールで上位を目指したり、音楽高校・大学への進学を考えたりするほど本格的になるのであれば、最終的には「グランドピアノ」への買い替えが必要になります。
なぜなら、ピアノの本質は「音を作る」という作業にあるからです。
打鍵のスピード、離鍵のタイミング、ペダリングによる響きの変化。
これらの繊細なニュアンスを100%表現し、耳を鍛えるには、グランドピアノの構造が必要不可欠だからです。
最初からそこまで準備する必要はありませんが、「ピアノを弾くことは、音を練り上げることである」という視点は、楽器選びのどこかに持っておいて損はありません。
まとめ:あなたの「今」と「未来」に最適な一台を

楽器選びに「正解」はありませんが、「後悔しないための基準」はあります。
- スペースや騒音が最優先なら:鍵盤の重さにこだわった「中上位モデルの電子ピアノ」
- 上達の効率と正しい癖を優先するなら:予算を抑えた「中古のアップライトピアノ」
「ピアニストになるかわからないから……」と謙遜する必要はありません。
初心者だからこそ、良い楽器があなたの手助けをしてくれます。
ぜひ、楽器店に足を運び、実際に鍵盤に触れて、「この音と一緒に過ごしたい」と思える一台を見つけてくださいね。
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筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。

