ピアノの演奏で欠かせない要素のひとつが「ペダル」。
初心者のうちは「音をつなぐために踏むもの」と思われがちですが、実はそれだけではありません。
ペダルは“音を響かせるため”の道具であり、ただつなぐために使うと音が濁ってしまうこともあります。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
ペダルの本当の役割と、響きをコントロールするための基本的な使い方を解説します。
ペダルの役割とは?「響きを作る」ための魔法の装置
ピアノのダンパーペダル(右ペダル)は、踏むと弦からダンパーが離れ、音が響き続ける仕組みになっています。
つまり、ペダルの役割は「音を持続させること」ではなく、「複数の音を自然に共鳴させ、響きを豊かにすること」なのです。
ペダルを踏むことで生まれる共鳴音(ハーモニクス)は、演奏の深みを大きく左右します。
響きが美しくなることで、音楽の空間が広がり、表現の幅が一気に広がるのです。
ペダルでやってはいけないこと
音を“消さない”まま踏み続ける
ペダルを踏みっぱなしにすると、和音が混ざり合い、音が濁ってしまいます。
一度踏んだペダルは「和音が変わるたびに上げる」が基本。
耳をよく使って、前の響きが残らないように使いましょう。
(あえてにごらす時もありますが)
フレーズを“つなぐためだけ”に踏む
ペダルをつなぎの代わりに使うと、指のレガートが育ちません。
指だけでのレガートには限界がありますが、まずはペダル無しで音をなめらかにつなぐことを意識します。
その上で、響きに厚みを加えるためにペダルを使うと自然に聴こえます。
ペダルを活かすためのコツ
半踏みを試してみよう
常に全踏みではなく、半分だけ踏む「ハーフペダル」を使うと、響きを調整できます。
少し浮かせることで濁りを防ぎながら、音の余韻を残すことができます。
たとえば、ショパン《前奏曲 作品28-4》では、和音が変わるたびに少しずつ踏み替えると、湿ったような美しい響きが得られます。

フレーズの「終わり」でペダルを切る
ペダルは、“次の音を迎える準備”のために切ったりします。
フレーズの終わりで少し早めに上げると、音楽に呼吸が生まれ、次の展開に自然につながります。
曲によってペダルの使い方を変える
ドビュッシーのような印象派作品
ドビュッシーやラヴェルでは、和音の響きをぼかして「光のにじみ」を作るためにペダルを多用します。
ただし、踏みっぱなしではなく、音の変化に合わせて繊細に踏み替えることが大切です。
ベートーヴェンやシューベルトのような古典派作品
古典派の曲では、ペダルは控えめにします。
明瞭さを保つことが大切なので、ペダルの踏みすぎには注意しなければなりません。
たとえばベートーヴェン《ソナタ第8番「悲愴」第2楽章》では、内声の動きを濁さないように、浅めのペダルで響きを添えると効果的です。

【ペダルへの意識が音楽を変えた体験談】
生徒さんを教えていると、ペダルに対して勘違いしている様子をよくみかけます。
「書いてあるから踏む」というのが一般的な考えです。
どうしてペダルを使うのかということまで、普通の先生はなかなか教えないと思います。
大人の生徒さんで、ペダルの踏むタイミングはだいたい合っているけれど、どこか濁っている方がいました。
その時は以下の2点が原因でした。
・前の響きが残った状態で踏み変えている(耳で確認できていない)
・踏むのが常に深すぎて、響きが洪水のようにあふれかえってしまっている
いずれも「耳を使って響きを確認できていなかった」のが原因と思われます。
ですが、私が少しそのことを指摘したら響きが一気に変わりました。
ちょっとの意識で変えることができるものだと実感する出来事でした。
弾くだけでも大変なことは分かっていますが、その少し先の上達をめざして、
生徒さんたちにはペダルへの意識を変えていってほしいと思っています。
(もちろんこのブログを読んでくださっているみなさんにも)
まとめ:ペダルは“音をまとめる”のではなく、“音を育てる”もの
ペダルは、音をただつなげるための補助ではなく、音を「響かせ」「育てる」ための表現手段です。
踏み替えや半踏みを意識することで、ピアノ全体が共鳴し、音楽が生き生きと広がります。
大切なのは、どんな響きを作りたいかをイメージして踏むこと。
ペダルの使い方ひとつで、あなたの演奏は驚くほど豊かになります。
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