♯21 「耳で聴いて」演奏する

ピアノ教育

皆さん、演奏しているときの自分の音を聴けていますか?

「自然に聞こえてくるし、当たり前じゃん。」

これが実はそうでもないのです。

聴くというのは、意識下のもとで初めてちゃんと聴けているのです。

この記事でわかること

「聴くとはどういうことか知ることで、本当の意味で自分の音を聴けるようになります。

自分の音を聴くことは、よりよい演奏を目指すうえで必要不可欠です。

自分の音を聴けていない人に、名ピアニストはいません。

「聞く」と「聴く」の違い

たしかに、物理的には演奏しているとき音は聞こえています。

ですが、これは「聴く」ではなく「聞く」です。

「聴く」と「聞く」の違いを皆さんは知っていますか?

「聞く」・・・音を耳で感じ取る。自然に耳に入ってくる。

「聴く」・・・聞こうとして聞く。注意してよく聞く。

引用 「日本国語大辞典」(小学館)より

意識して注意深く聴かなければ、それは「聴いて」いるのではなく、「聞いて」いるだけになってしまいます。

私たち演奏家は、意識して「聴かねば」なりません。

人間は約80%も視覚に頼っている

そもそも私たち人間は、約80%視覚からの情報に頼っているといわれています。

ピアノを弾くという行為は、簡単なものではありません。

視覚に頼って、間違えないように鍵盤や楽譜を見ていることがほとんどです。

ですが、音楽は「耳で楽しむ芸術」です。

そして「耳で作る芸術」です。

弾く、という行為は最終的に耳にうったえかけなければなりません。

音をつくるときに頼りにするべきは「耳」のはずなのに、いつしか視覚だけに頼りきって、実は自分の音を聴けていない、ということが起こります。

ウィーンの先生に言われた「あなたは自分の音が聴けていない」

私が通っていた高校では、有志でヨーロッパ研修旅行というものに参加できました。

私が初めて外国に行ったのは、高校2年生の冬のヨーロッパ研修旅行のときで、チェコのプラハとオーストリアのウィーンへ1週間ほど行きました。

ウィーンでは現地の先生のレッスンを受けることができ、私はウィーン国立音楽大学の教授でいらしたマーティン・ヒューズ先生のレッスンを受けることができました。

私は、ベートーヴェンのピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」の第1楽章を披露しました。

演奏を終えた後、先生から言われた言葉を私は忘れられません。

「あなたは、自分が演奏している音を聴けていない。」と。

当時の私はとても未熟で、先生から一体何を言われているのかわかりませんでした

それこそ、「聴いているのに!」と思っていました。

そのあとレッスンを受けた、私のライバル的な存在でいつも切磋琢磨していた友人は、

先生から「音をよく聴いているね。」と言われていました。

その時は、本当に悔しかったです。

私と彼女の違いはいったい何なのか。私はそれからずっと考えていました。

今ならわかるその違い

私の演奏には何が足りなかったのか。

聴いていると思っていた私は、本当に自分の音を聴いていたのか。

私は「聴いて」いたのではなく「聞いて」いただけでした。

弾くのに一生懸命になっていて、聴いているつもりになって、右から左に聞き流していただけでした。

ましてや、注意深く聴くということはしていませんでした。

「聴く」ことの重要性もわかっていませんでした。

私にとって音楽は「耳で作るもの」ではなく、いかに指を動かすかになってしまっていたのです。

大学に入りいろんな演奏に触れ、「聴けている」人の演奏とそうでない人の演奏を見分けられるようになりました。

それから、次に紹介する練習法に取り組んだのも、私が耳で聴くということをできるようになった大きな要因でした。

視覚に頼らない練習法

部屋の電気を消して、暗闇のなかでピアノを弾く

これは、私が教わっていた教授の先生から教わった練習方法です。

部屋の電気を消して真っ暗のなかで演奏することで、視覚ではなく聴覚に意識を向けることができます。

暗闇に目が慣れてきてしまうと効果は少し薄れますが、鍵盤が見えない状態でピアノを弾くと、自分の音がよりクリアに聞こえます。

部屋の電気を消しても暗くならない場合は、目を閉じて演奏するのも効果的です。

それから、ゆっくり弾いて注意深く聴くという練習方法もあります。

音は自然に聞こえてくるからこそ、「自分の音を耳で聴く」という作業は本当に難しいです。

ましてや「自分の音を耳で聴く」ということの本当の意味を理解して、実践できている人がどれくらいいるでしょうか。

「聞く」と「聴く」の違い

「聞く」・・・音を耳で感じ取る。自然に耳に入ってくる。

「聴く」・・・聞こうとして聞く。注意してよく聞く。

引用 「日本国語大辞典」(小学館)より

人間は約80%視覚に頼っています

ピアノを弾いている時に自然に聞こえてくるのは「聞く」という行為で、私たちピアニストは自分の音を「聴く」ことが大切です。

注意深く「聴く」からこそ音を作ることができ、人の耳にうったえかけることができます。

自分の音を「聴く」練習として、「部屋の電気を消して、暗闇のなかでピアノを弾く」ことが効果的です。

はじめはとても難しく感じますが、クリアに聞こえる自分の音にびっくりするはずです。

ゆっくり弾いて、自分の音を聴くのも効果的な練習方法です。

そういった訓練を経て、少しずつ自分が出している音を聴けるようにしていきましょう。

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