♯250 ピアノは教室に通うだけで弾ける?家で練習しないと上達しない理由と親の関わり方


「毎週ちゃんとお月謝を払ってピアノ教室に通わせているのに、なかなかスラスラ弾けるようにならない……」

「家で全然練習しないけれど、ピアノ教室に行かせていればそのうち自然と弾けるようになるの?」

お子さんにピアノを習わせている親御さんから、このようなお悩みを本当によく耳にします。

最近は共働きのご家庭も増え、毎日のお仕事や家事に追われ、お子さんが家でどれくらいピアノを練習できているのか把握しきれていないご家庭も多いのではないでしょうか。

まず最初にお伝えしたいのは、お忙しい親御さんたちを責めるつもりはまったくありません。 毎日仕事や育児をこなすだけでも本当に大変なことだと、心から尊敬しています。

ですが、ピアノ講師としてどうしてもお伝えしたい真実があります。

それは、「ピアノは、教室に通わせているだけでは絶対に弾けるようにはならない」ということです。

なぜピアノは家で練習しないと上達しないのか。スイミングや英語などの他の習い事との違い、そして忙しいご家庭でも無理なくできる「親の関わり方」についてお話しします。

筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

ピアノはスイミングとは違う!「新しい言語」を覚えるほどの超高度な脳の処理

なぜ「教室に通うだけ」では弾けるようにならないのか。
その最大の理由は、ピアノが他の習い事とは比べものにならないほど「脳の処理量」が多い習い事だからです。

例えば、スイミングや体操であれば、レッスン時間中にプールに入ったり体を動かしたりすることで、その場である程度の筋力やフォーム、感覚が身につきます。

しかし、ピアノは全く違います。ピアノをたった1小節弾くだけでも、子どもの脳内では以下のような複雑な情報処理が瞬時に行われています。

  1. 楽譜を目で見て、何の音か瞬時に見極める
  2. 音符の並びから「リズム」を正しく理解する
  3. どの指を使って鍵盤を押さえるか(指番号)を判断する
  4. 左右それぞれの手で、まったく異なる動きを同時にコントロールする
  5. 弾いた音を自分の耳で聴いて、タッチや音量を微調整する

これらを0.1秒単位で同時にこなす作業は、「まったく新しい外国語をイチから覚える」のと同じくらい高度で難しいことなのです。

「週に1回30分の英会話」で、英語がペラペラになるでしょうか?

わかりやすい例として、英語の習い事をイメージしてみてください。

もし、家ではまったく予習も復習もせず、英語の音声も聞かず、アルファベットすら見ない状態で、「週に1回、たった30分のレッスン」に通っているだけで、その子は英語がペラペラに喋れるようになるでしょうか?

絶対に喋れるようにはなりませんよね。

ピアノもそれと全く同じです。
1週間は168時間あります。そのうちの「たった30分」教室でピアノに触れただけで、新しい言語をマスターするような複雑な指の動きや読譜が身につくはずがありません。

それなのに、なぜかピアノだけは「教室に通わせて先生に預けていれば、そのうち勝手に弾けるようになるだろう」と思われてしまいがちです。

ここに、親御さんと指導者の間にある最大のギャップが存在しています。

「忙しい」と「無関心」は違う。通わせるだけで終わらせないでほしい

「そうは言っても、仕事でクタクタだし、家で練習に付き添う余裕なんてない……」

そう思われる親御さんもいらっしゃると思います。冒頭でもお伝えした通り、忙しい生活の中で完璧に練習を見守ることが難しいのは重々承知しています。

ですが、「忙しいこと」と「無関心であること」は違います。

「月謝を払って通わせているんだから、あとは先生がなんとかしてくれるだろう」と丸投げしてしまうのは、ピアノという習い事においてはお子さんを一番苦しめることになってしまいます。

家で全く弾かずにレッスンに来ると、先週やったことを思い出すだけで30分が終わってしまいます。進まないから弾けない、弾けないから楽しくない、楽しくないから家でも練習しない……という負のループに陥ってしまうのです。

せっかく始めたピアノです。「どうしたら楽しく上達していけるか」「どうしたら家でピアノに触れる時間を作れるか」を、親御さんも先生と一緒に考えてほしいと願っています。

ピアノは「毎日少しずつ脳に刷り込ませる」ことでしか弾けるようにならない

ピアノの上達に近道はありません。毎日少しずつ、脳と指の神経回路に反復して刷り込ませていくことでしか、弾けるようになる道はないのです。

「でも、世の中には練習しなくても耳コピでパッと弾けちゃう天才もいるじゃないですか」と思うかもしれません。

しかし、日々の地道な努力なしに感覚だけで弾けてしまうのは、ほんの一握りの特別な才能を持った子だけです。

そして、そうした「天才」と呼ばれる子どもたちでさえ、本人は「練習」だと思っていないだけで、毎日ピアノの前に座って長時間音を鳴らし、ピアノに触れて遊んでいるのです。
日常的にピアノに触れているからこそ、指が自然と動くようになっているのです。

天才ですらピアノに触れ続けているのですから、普通の子どもたちが上達するためには、毎日の地道なタッチがどうしても必要不可欠です。

忙しい共働き家庭でもできる!「家でピアノに触れさせる」3つの工夫

毎日1時間もガッツリ横について練習させる必要はありません。大切なのは「毎日少しでもピアノの存在を意識させること」です。

1. ピアノの蓋(ふた)を開けっぱなしにしておく

ピアノの蓋が閉まっていてカバーがかかっていると、それだけで触るハードルが上がります。いつでも座ってポンと鳴らせるように、蓋を開けておくのがおすすめです。

2. 「1日5分だけ」「1回弾くだけ」をルーティンにする

「宿題の前に1回だけ弾く」「ご飯ができる前に1曲だけ鳴らす」など、生活の動線に組み込んでしまいましょう。

週1回まとめて30分弾くよりも、毎日5分弾くほうが、子どもの脳には圧倒的に定着します。

3. 「どんな曲やってるの?聴かせて!」と声をかける

教えてあげる必要も、間違いを指摘する必要もありません。
「ママ(パパ)、その曲聴きたいな!」と興味を持って声をかけてあげるだけで、子どもは「関心を持ってもらえている」と感じ、ピアノに向かうモチベーションが生まれます。

まとめ:せっかくのピアノを「一生の宝物」にするために

ピアノは、弾けるようになれば一生を通じて子どもの心を支え、豊かな自己表現のツールになってくれる素晴らしい習い事です。

だからこそ、「ただ通わせているだけ」で弾けないまま終わってしまうのは、あまりにももったいないと感じます。

ピアノ教室は、弾き方のコツを学び、音楽の楽しさを広げる場所。
そしてご家庭は、その種を毎日少しずつ水やりをして育てる場所です。

「忙しい毎日の中で、どうやってピアノと付き合っていくか」。

ぜひ一人で抱え込まず、レッスンの先生にも相談してください。
私たちはいつだって、お子さんが楽しくピアノを弾き続けられるよう、親御さんと一緒に歩んでいきたいと思っています!

演奏会情報・無料個別相談はLINE公式アカウントから

演奏会への出演情報のご案内、ピアノや練習に関する個別のご相談はLINE公式アカウントでお知らせ・やり取りします。

ご相談は1対1のやり取りとなり、他の方に内容がみられることはありません。
配信は必要なときのみ行っていますので、お気軽にご登録ください。

筆者プロフィール:

4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA