
発表会の選曲シーズンが近づくと、ピアノの先生たちの頭を悩ませるのが「曲のマンネリ化」や「生徒同士の曲被り・ネタ切れ」ではないでしょうか。
「毎年同じ作曲家や、使い慣れた曲集ばかり選んでしまう……」
「過去のプログラムを見返したら、数年前と似たようなラインナップになっていた……」
もちろん、広く愛されている定番の名曲を選ぶことや、曲が被ること自体は決して悪いことではありません。何十年も受け継がれる作品には、それだけ子どもたちの基礎力を伸ばす確かな教育的価値があるからです。
とはいえ、指導者としても「いつもとはちょっと違う素敵な曲に出会わせてあげたい」「自分の選曲の引き出しを広げて、生徒をワクワクさせたい」と思うものですよね。
今回は、手持ちの曲集をめくるだけでは終わらない、私が実際に新しい発表会曲を発掘するために実践している「3つのリサーチ手法」と、選曲時の大切な注意点をご紹介します!
筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。
自宅の楽譜棚だけだと限界?選曲が偏ってしまう理由

発表会の選曲を始めるとき、まず真っ先にやるのは「自宅の本棚にある子ども用の曲集をパラパラとめくること」だと思います。
私自身もまずはここからスタートします。しかし、自分の手元にある楽譜だけを見ていると、どうしても「自分がよく知っている曲」「使い勝手の良いお気に入りの曲集」に偏ってしまい、結果として毎年の選曲が似通ってしまいがちです。
生徒一人ひとりの「今のレベル」にぴったり合った、いつもと違う新鮮な名曲を見つけるためには、普段の自分の本棚の外へとアンテナを広げることが欠かせません。
では、私は具体的にどこから新しい曲のアイデアを仕入れているのか、実際に役立っている3つの方法をお話しします。
手法①:最も確実!「コンクールの課題曲リスト」をリサーチする

新しい曲を探す上で、私がもっとも有効的だと感じているのが「各種ピアノコンクールの課題曲リスト」をチェックすることです。
コンクールの課題曲には、著名な教授や指導者たちが「その年齢・その学年の子どもが弾くのにふさわしい」と厳選した作品がずらりと並んでいます。
バロック・古典・ロマン・近現代(邦人作品含む)まで幅広く網羅されており、普段の教材では見かけないような隠れた名曲の宝庫です。
探し方のコツとレベル調整のポイント
- 課題曲リストを眺めて、知らない曲や気になるタイトルがあれば、YouTube等で音源を積極的に聴いてみる
- その曲が生徒さんの「今のレベル」や雰囲気に合っているかイメージする
- 学年の指定をそのまま当てはめない工夫をする
特に大切なのが3つ目です。コンクールの課題曲は、全体的に標準レベルよりやや高めに設定されていることも少なくありません。
「〇年生だから〇年生の課題曲から選ばなければ」と杓子定規にするのではなく、生徒さんの現在の進度や実力に合わせて「1〜2学年下の課題曲」から探してみると、無理なく挑戦できて背伸びしすぎない、今のレベルにちょうど良い名曲が見つかりやすくなります。
手法②:お宝の山!「過去の発表会やコンクール」のプログラムを参考にする

次におすすめなのが、過去の発表会やコンクールの自由曲で、他の方がどんな曲を弾いていたかプログラムを振り返ることです。
実は私、自分が子どもの頃に出演した発表会のプログラムを今でも大切に残しています。
もちろん、自分が小さかった頃と現在とでは流行りの曲や教材の傾向は異なります。
しかし、古いプログラムをめくってみると、「あ、こんな素敵な曲があったんだ!」「この曲、今のあの子のレベルにぴったりかもしれない」という新鮮な発見がたくさん眠っているのです。
昔は気になる曲があっても音源を手に入れるのが一苦労でしたが、今は手元に楽譜がなくても、タイトルさえ分かればYouTubeやサブスクで気軽に音源を聴ける時代です。
他のお教室のプログラムやコンクールの演奏曲リストは、まさに「選曲アイデアのお宝の山」と言えます。
【超重要】「聴いた印象」と「実際の楽譜のレベル感」のギャップに注意!
この方法で曲を探すとき、絶対に気をつけてほしい落とし穴があります。
それは、「音源を耳で聴いた印象」と「実際に楽譜を見たときのレベル感」は、驚くほどかけ離れていることがあるという点です。
- 聴いた感じは華やかで難しそうなのに、楽譜を見たら今のレベルでも十分に弾きやすい曲(発表会向き!)
- 聴いた感じはシンプルで簡単そうなのに、楽譜を開いたらポリフォニーや跳躍が複雑で、今の生徒さんのレベルには高すぎる曲
耳だけで判断してしまうと、「思ったより難しくて本番に間に合わない!」あるいは「簡単すぎて弾きごたえがない」というミスマッチになりかねません。
音源で良さそうな曲を見つけたら、最後は必ず実際の楽譜を目で見て、生徒さんの今のレベルと照らし合わせて弾けるかどうかをしっかり考えることが何より大切です。
※生徒さんのモチベーションを高める具体的な選曲基準や声かけについては、こちらの記事でも詳しく書いていますので、ぜひあわせてご覧ください。
👉 ♯95 ピアノ発表会の選曲で大切にしていること|生徒の“弾きたい気持ち”を育てるレッスンの工夫
手法③:最新の工夫!「ChatGPT(生成AI)」に相談してみる

そして最近、新しいアプローチとして取り入れているのが「ChatGPTなどの生成AIに選曲の相談をしてみること」です。
例えば、以下のように具体的な条件を指定して尋ねてみます。
「小学校3年生、ブルグミュラー前半レベルの子が弾く発表会曲で、あまり定番すぎず、中間部がドラマチックなおすすめの曲を5曲教えてください」
AIに尋ねると、自分がまったくノーマークだった作曲家の小品や、海外の教材から面白そうな曲をサッと提案してくれることがあります。
「自分一人では絶対に思いつかなかった視点」をくれるブレインストーミングの相手として、一意見を聞いてみるのはとてもありだと思っています。
ただし「鵜呑み」は絶対にNG!
AIを使う上で最も注意しなければならないのは、「情報を決して鵜呑みにせず、必ず自分で精査すること」です。
AIは時々、実在しない曲名を教えてきたり、実際のレベル感とズレた提案をしてきたりすることがあります。
AIの提案はあくまで「アイデアのきっかけ」として受け止め、実在する曲なのか、本当に生徒さんの今のレベルに合っているのかは、プロである私たち指導者が楽譜と音源で責任を持って確認することが不可欠です。
まとめ:いつもと違うアプローチで、選曲をもっとワクワクする時間に

発表会の選曲は、生徒さんの成長を左右する大切な仕事であると同時に、先生自身のエネルギーを大きく使う作業でもあります。
いつも同じ曲集ばかりになって「ネタ切れ」や「マンネリ」を感じたときは、ぜひ次の3つのアプローチを試してみてください。
- コンクールの課題曲リストから、今のレベルに合わせて学年を柔軟に調整して探す
- 過去のプログラム(他人の選曲)から掘り起こし、最後は必ず実際の楽譜を見て生徒のレベルと照らし合わせる
- 生成AIに条件を投げて、アイデア出しの壁打ち相手にしてみる(鵜呑みは厳禁)
先生自身が「こんな素敵な曲があったんだ!あの子の今のレベルにちょうど良さそう」とワクワクしながら選んだ曲は、必ずレッスンを通して生徒さんにもその魅力が伝わります。
今年の発表会は、ぜひ新しい曲との出会いを楽しみながら、彩り豊かで生徒が輝くプログラムを作ってみてくださいね!
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筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

