ピアノを習い始めた頃や子供の時は、譜読みのスピードを上げ、多様なテクニックを学ぶために「たくさんの曲をこなすこと」が重視されます。
しかし、ある程度ピアノを続けていると、一つの曲と数ヶ月、あるいは数年単位で向き合う場面が増えてきます。
「ずっと同じ曲を弾いていて、上達しているのかな?」「他の曲も弾かないと取り残されるのでは?」と不安に思うこともあるかもしれません。
私自身、20年以上ピアノを弾いてきて、一つの作品を長く深く掘り下げることの重要性と、特有の難しさを痛感しています。
今回は、一つの曲を長く練習するメリット・デメリット、そして「マンネリ」を打破して演奏を進化させる方法について、私の実体験を交えて詳しくお伝えします。
筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。
なぜ初心者は「たくさんの曲」を弾くべきなのか?

ピアノを始めたばかりの時期に多くの曲を弾くのは、主に「譜読みのスピードを上げるため」と「多様なスタイルに触れてテクニックの引き出しを増やすため」です。
この時期に一曲に固執しすぎると基礎体力がつきにくい側面はありますが、ある程度の基礎ができた後は、「一曲をどこまで深められるか」が上達の鍵となります。
一つの曲を長く練習するメリット:音の「意味」を追求する

最大のメリットは、「音が並んだら終わり」という段階を超えて、音色を磨き、作品の本質に向き合えることです。
特にコンクールなどの準備で先生のレッスンを何度も受け、試行錯誤を繰り返す中で、短期間の練習では決して見つけられなかった「本当の音楽との向き合い方」が見えてきます。
また、一度弾いた曲を少し寝かせてから再び取り組むと、以前は気づかなかった新しい表現のアイディアが湧いてくることもあります。
長く弾き続けることのデメリット:マンネリと自己流の罠

長く向き合うからこそ、気をつけなければならない「戒め」もあります。
何度も弾いていると、作曲家の素晴らしいアイディアも「当然のもの」として流してしまい、新鮮な感動が薄れてしまう「マンネリ化」。
そして、指が慣れることで楽譜の指示を確認しなくなり、自分勝手に弾いてしまう「自己流の罠」です。
慣れた頃こそ、もう一度真っさらな状態で楽譜に立ち返る勇気が必要です。
マンネリを打破するための具体的な対策

もし「練習が作業になっている」と感じたら、以下の方法を試してみてください。
- 一定期間、その曲を封印する: 数週間〜数ヶ月離れることで、耳と脳をリセットします。
- 「初めて弾くフリ」をする: 今、この瞬間に初めて楽譜を見て、その美しさに感動しているかのように演奏してみる。練習してきたことを頭から消去する。
- 楽譜を新調する: 書き込みのない新しい楽譜を見ることで、視覚的な慣れを防ぎます。
【実録】10年越しのブラームスと、初めて向き合うチェロ作品

私自身、今まさに「熟成」と「新鮮さ」の両方に向き合っています。
10月のリサイタルで演奏するブラームスのピアノソナタ第3番(1・3楽章)は、実は浪人生の頃から弾き続けている、私にとって特別な「熟成」の曲です。
数年経った今でも「こんな発見があるのか!」と驚かされる毎日で、昔よりも冷静に、かつ深く音楽を作れている実感があります。
一方で、今回共演する入江晴美さんとのチェロ作品(フォーレ、メンデルスゾーン、ブラームスのチェロソナタ)は、私にとっての「新曲」です。
長年温めてきた曲を深める充実感と、新しい曲に触れる高揚感。
この両方があるからこそ、音楽家としてのバランスが保たれているのだと感じます。
「譜読みが終わってからが本当のスタート」——これは、長年ブラームスと歩んできた私が、今一番強く感じていることです。
10/12(月・祝) デュオリサイタル「ブラームスに寄せて」のお知らせ

長年温めてきたソロのブラームスと、チェロとの新たな対話。この二つのコントラストをぜひ会場でお楽しみください。
Young Artist 支援プロジェクト
橋本智菜美 ピアノリサイタルシリーズⅡ
Duo Recital ―ブラームスに寄せて―
- 日時: 10月12日(月・祝) 開場 17:30 / 開演 18:00
- 会場: 彩の国さいたま芸術劇場 小ホール
- 出演: 橋本 智菜美 (Pf.)、入江 晴美 (Vc.)
- プログラム:
- フォーレ:シチリアーノ Op.78
- メンデルスゾーン:無言歌 ニ長調 Op.109
- ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 Op.38
- ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 へ短調 Op.5
- チケット: ¥1,800(全席自由)
- 主催: さくらMusic Office
- お申込み・お問合せ: office@sakuramusic.jp
演奏会情報・無料個別相談はLINE公式アカウントから
演奏会への出演情報のご案内、ピアノや練習に関する個別のご相談はLINE公式アカウントでお知らせ・やり取りします。
ご相談は1対1のやり取りとなり、他の方に内容がみられることはありません。
配信は必要なときのみ行っていますので、お気軽にご登録ください。

筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

