
「毎日練習しているのに、なかなか思うように指が動かない……」
「もっと綺麗な音を出したいけれど、どうすればいいのか分からない」
そんな風に、自分の演奏に行き詰まりを感じている方はいませんか?
実は、ピアノ上達への一番の近道は、意外と身近なところに隠されています。
それは、レッスンの時に「先生の弾き方をじっくり観察して、その技を盗むこと」です。
ピアノは、楽譜を読む力だけでなく、体の使い方や音の聴き方を学ぶ「全身の習い事」。
今回は、初心者の方から経験者の方まで、今日から実践してほしい「レッスン時間を120%活用する観察のコツ」をお伝えします。
筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。
私の体験談:大学生の頃、先生の「手」を食い入るように見ていた日々

ここで少し、私自身の話をさせてください。
私が音楽大学に通っていた頃、レッスンの時間はいつも先生の動きに釘付けでした。先生が弾くときの手の形、指の角度、そして腕や肩、体全体の使い方はどうなっているのか……。
一瞬も見逃さないつもりで、食い入るように観察していたのを覚えています。
正直に言うと、観察してすぐに「あ、こういうことか!」と全てが分かったわけではありません。
「なぜ先生の手はあんなに滑らかなんだろう?」
「どうしてあんなに楽そうなのに、深い音が出るんだろう?」
と、疑問ばかりが浮かぶ日もありました。
でも、「まずはじっと見る」。これを繰り返しているうちに、ある日突然、自分の体と先生の動きがリンクする瞬間がやってくるのです。
「あ、あの時の先生の手首の使い方は、この音を出すためだったんだ!」
と、パズルのピースがはまるように理解できる時が必ず来ます。
今すぐ何かに気づけなくても大丈夫です。まずは「じっと見る」ことから始めてみてください。その観察の積み重ねが、数ヶ月後、数年後のあなたの音を変えてくれます。
先生の「手の形」をじーっと見てみよう

まず最初に注目してほしいのが、一番身近な「手の形」です。
ピアノを弾くとき、指先だけに注目していませんか? もちろん指の動きも大切ですが、本当に見てほしいのは「手のひらの空間」や「指の角度」です。
先生が弾いているとき、手の中にはふわっとした空間がありませんか?
あるいは、指の第一関節がしっかり支えとして機能しているでしょうか。
なぜ「手の形」を真似するの?
正しい手の形は、単に見た目が美しいだけでなく、一音一音をハッキリと、かつ楽に響かせるための「土台」になります。
「先生の親指の付け根はどうなっているかな?」
「和音を弾くとき、手のひらはどんな風に広がっているかな?」
そんな風に、間違い探しをするような感覚で、先生の手元を観察してみてください。
形を真似するだけで、今まで出しにくかった音が驚くほどスムーズに出るようになることがあります。
「体全体の動き」に隠された魔法をマネしてみよう

次に、視点を少し広げて、指先よりももっと大きな「体全体の使い方」に注目してみましょう。
ピアノは指だけで弾く楽器ではありません。腕の重さ、肩の脱力、そして背中や腰の支えなど、全身を使って音を作ります。
音が硬くなってしまいがちな方は、ぜひ先生の「手首」や「肩」の動きを観察してみてください。
観察のポイント:
- 手首の柔らかさ: フレーズの終わりで、先生の手首がふわっと浮き上がっていませんか?
- 腕の重さ: 深い音を出すとき、先生は腕全体の重さを鍵盤に預けていませんか?
- 肩の力加減: 難しい速いパッセージを弾くときほど、先生の肩はリラックスして見えませんか?
「先生は、あんなに楽そうに弾いているのに、どうしてあんなに豊かな音が出るんだろう?」
その秘密は、無駄な力を抜く「脱力」と、体全体の連動にあります。
先生の体の動きをそのまま自分の体にコピーするつもりで、その空気感ごと盗んでみてください。
「動き」が変わると「音」がどう変わるか聴いてみよう

「見る」ことの次は、いよいよ「聴く」ことです。ここで大切なのは、先生の動きと、そこから生まれる音をセットで感じることです。
先生がお手本を弾いてくれるとき、ただ「上手だな」と聴くだけではもったいありません。
「今、先生が手首をふわっと柔らかく使ったとき、音はどう変わったかな?」
「指を立てて弾いたときと、寝かせて弾いたとき、音の明るさはどう違う?」
そんな風に、【動き=原因】と【音=結果】を自分の中で結びつけてみましょう。
音の変化に注目するヒント:
- 優しくささやくような音のとき、先生はどんな風に鍵盤に触れているか。
- キラキラした明るい音のとき、指先のスピードはどうなっているか。
「この音を出すためには、この動きが必要なんだ!」という発見があれば、お家での練習の質は劇的に変わります。
先生の音を耳でコピーして、自分の楽器でもその再現にチャレンジしてみてください。
まとめ:観察することは、音楽への理解を深めること

「技を盗む」というと、なんだか職人修行のように難しく聞こえるかもしれません。でも、最初は「先生の真似っこ」から始めていいのです。
大切なのは、すぐに結果を求めすぎないこと。
「今日は先生の手首の動きだけをじっと見てみよう」
「今日は先生が弾くときの背中のラインを観察してみよう」
そんな風に、小さなポイントを絞って観察を続けてみてください。
私自身が大学生の時に経験したように、じっと見ることで得られた知識は、いつか必ずあなたの指先に宿ります。レッスンは、最高の「お手本」が目の前にある贅沢な時間です。
次のレッスンでは、ぜひ「観察の目」と「発見の耳」を持って、先生の音の秘密をたくさん持ち帰ってくださいね。
その積み重ねが、あなただけの素敵な音色を作っていくはずです。
★演奏会のお知らせ★
2026年10月12日(月祝)彩の国さいたま芸術劇場小ホールにて、チェロ奏者の入江晴美さんとのコンサート、「橋本智菜美ピアノリサイタルシリーズⅡ Duo Recital ーブラームスに寄せてー」を開催いたします。18:00開演(17:30開場)。
チケットお申し込みはこちらまで→chinalustig.bbb16@gmail.com

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筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

