♯209 三日坊主の私がピアノだけは20年続けられた理由。壁を乗り越えた先にある「本当の楽しさ」の正体


「何を始めても長続きしない」

「子どもがピアノを嫌がってすぐに辞めたがっている」

そんな悩みを抱えている方は少なくありません。

私は4歳からピアノを始め、気づけば二十数年が経ちました。
習い事はピアノ一本。塾にも行かず、水泳や書道といった王道の習い事も経験せず、学校以外の時間の多くをピアノに注いできました。

しかし、実を言うと私は、決して「継続のプロ」ではありません。新しく買ったノートはいつも3ページで止まってしまうような、典型的な三日坊主です

そんな私が、なぜピアノだけは二十数年も続けてこれたのか。そして、継続した先にしか見えない景色とはどのようなものなのか。

今回は、ピアノを通して学んだ「継続することの本質」と、私が生徒たちに一番伝えたい「本当の楽しさ」についてお話しします。

筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

「ピアノだけ」に注いだ時間が教えてくれたこと

私の子供時代を振り返ると、そこには常にピアノがありました。
多くの友人が塾やスポーツ、複数の習い事に追われる中、私の放課後は驚くほどシンプルでした。

学校の宿題を終えたら、あとはピアノに向かう。ただそれだけです。

他の習い事をしていなかった分、エネルギーのすべてを鍵盤にぶつけることができました。

今思えば、この「選択と集中」が、私の中にピアノという太い軸を作る大きな要因だったのだと感じます。

「あれもこれも」と手を広げるのではなく、一つのことに深く潜り込む。
それは、情報が溢れ、効率が求められる現代において、とても贅沢で、そして尊い経験だったのだと、大人になった今、改めて実感しています。

三日坊主の私を突き動かした「目に見える成果」

そんな私ですが、冒頭でもお伝えした通り、基本的には飽き性です。
日記帳を買っても最初の一週間だけ。新しい勉強ノートも、3ページ目以降は真っ白なまま。

そんな私が、なぜピアノの練習だけは毎日続けられたのでしょうか。

その答えは、シンプルですが目に見える成果」があったからです。

当時、ヤマハの曲集を使ってレッスンを受けていた私は、毎週先生から新しい曲をもらっていました。練習して、次のレッスンで「合格」の丸をもらう。その積み重ねが、子供心にたまらなく嬉しかったのです。

一週間に1〜2曲、新しい世界が開けていく感覚。
「先週は弾けなかったフレーズが、今日は指に馴染んでいる」という小さな成功体験。

この「小さな階段」が絶え間なく用意されていたからこそ、飽き性の私でも、気づけば数年、そして十数年と歩みを進めることができました。

大きな目標も大切ですが、目の前の小さな「丸」こそが、継続のガソリンになるのです。

「思ってたのと違う」という壁の向こう側

ピアノを教えていると、ある程度のレベルに達した時に「思っていたのと違う」「練習が苦痛で、楽しくない」と壁にぶつかり、辞めてしまう子を多く見かけます。

確かに、基礎練習は地味ですし、難しい曲になればなるほど、一筋縄ではいかない壁が現れます。表面だけをなぞって「楽しいところ」だけを味わおうとすると、この壁はあまりにも高く、冷たく感じられるでしょう。

しかし、私が二十数年の経験から断言できるのは、「本当の楽しさは、その壁を乗り越えた先にしかない」ということです。

指が勝手に動くような一体感、作曲家の意図と自分の感情がリンクする瞬間、そして何百回と練習してようやく理想の音が鳴った時の震えるような感動。

これらはすべて、苦しいとも思える練習(実際には苦しいだけではない)を乗り越えた人だけが味わえるものです。

いつまでも表面だけをなぞって、壁の手前で引き返してしまうのは、人生において本当の果実を味わう前に諦めてしまうことと同じではないでしょうか。

それはピアノに限らず、どんな仕事や趣味においても言えることだと思うのです。

ピアノの道に進まなくても、得られる一生の財産

私は今、ピアノを教える立場にあります。生徒さん全員に、ピアニストになってほしいと思っているわけではありません。

むしろ、ピアノを通して「継続することの楽しさ」「壁を乗り越える達成感」を知ってほしいと願っています。

人生には、必ずつらい時期や、逃げ出したくなるような高い壁が現れます。
そんな時、「あの時、ピアノであんなに苦労したけれど、乗り越えたらあんなに楽しかった」という記憶があれば、一歩踏み出す勇気が湧いてくるはずです。

「これを乗り越えたら、きっとまた面白い景色が見える」という確信は、何物にも代えがたい自信になります。

私が教える生徒さんたちには、少なくともその「継続の先にある光」を知ってほしい。そのお手伝いをすることが、私の使命だと思っています。

結びに:ノート1冊を使い切る旅へ

……と、偉そうなことを書いてしまいましたが、私の手元には今日も、3ページだけ書き込まれた新しいノートが転がっています(笑)。

ピアノの楽しさは知り尽くしているつもりですが、「ノートを書き続ける本当の楽しさ」については、私はまだ入り口にすら立っていないのかもしれません。

せめてこのノートが一冊終わるまでは……と、私自身も日々試行錯誤の連続です。


何かを続けることは、時に苦しく、時に自分を疑いたくなる作業です。でも、その先には必ず、続けた人にしか見えない美しい景色が待っています。

皆さんも、自分なりの「継続の先」を探してみませんか
ピアノの鍵盤を叩くその一歩が、あなたの人生をより深く、豊かなものにしてくれると信じています。

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筆者プロフィール:

4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。


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