♯196 ピアノの練習から遠ざかる理由は「ちゃんと」の呪い?挫折しそうな心を救う「遊ぶ」練習のススメ


「ピアノを弾きたい気持ちはあるのに、なぜか足がピアノに向かない……」
「練習しなきゃと思えば思うほど、腰が重くなってしまう」

そんな経験はありませんか?

実は、あなたがピアノから遠ざかってしまう理由は、練習不足や根性がないせいではありません。
むしろ、あなたが「ピアノに対して真面目で、一生懸命に向き合おうとしているから」こそ陥ってしまう罠があるのです。

今回は、私自身が最近気づいた「練習を苦痛に変えてしまう正体」と、もっと気軽に、もっと楽しくピアノの前に座れるようになるためのマインドセットについてお伝えします。

筆者プロフィール:
4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。

私たちを追い詰める「練習はちゃんとすべき」という呪い

ピアノの練習を始めようとするとき、私たちの頭の中には無意識にたくさんの「しなければならない」が浮かびます。

  • 一音一音、意味を考えて音を出さなければならない
  • 常に正しい体の使い方を意識しなければならない
  • 止まらずに最後まで弾けるようにしなければならない
  • 最初から両手で完璧に合わせなければならない

このように「ちゃんとやらなければいけない」というハードルを高く設定してしまうと、ピアノに向かうこと自体が「重労働」や「苦行」のように感じられてしまいます。

本来、音楽は自由で楽しいものであるはずなのに、いつの間にか「こなさなければならないタスク」に変わってしまう。

この「ちゃんと」の呪いこそが、私たちがピアノから遠ざかってしまう最大の理由なのです。

「ちゃんと」を求める頑張り屋さんほど、練習ができなくなる矛盾

不思議なことに、「ちゃんと練習しなきゃ」と強く思っている人ほど、実は効率的な練習ができていなかったり、練習時間が減ってしまったりすることがあります。

なぜなら、「完璧な練習」を自分に課すと、少しでも体調が悪かったり、時間がなかったりするとき「今日は(完璧にできないから)、やめておこう」という思考が働いてしまうからです。

「ちゃんと」という言葉は、音楽において非常にあいまいで実体のないものです。

完璧を求めるあまり、ピアノの蓋を開けることすら怖くなってしまう。
これは、ピアノを愛し、真剣に取り組んでいる「頑張り屋さん」だからこそ陥る、切ないパラドックスといえるでしょう。

「練習」という言葉を捨てて、「ピアノと遊ぶ」時間を増やす

もしかしたら、「練習」という言葉そのものが、私たちにプレッシャーを与えているのかもしれません。
「練習」と聞くと、何かを克服し、向上させ、成果を出さなければならないような気がしてしまいます。

そこで提案したいのが、もっと「遊ぶ感覚」でピアノに触れることです。

  • 好きなフレーズだけを何度も繰り返して、音の響きに浸る
  • 楽譜通りではなく、適当に音を鳴らして今の気分を表現してみる
  • 片手だけで、メロディの美しさを味わう

これらは一見、不真面目なことのように思えるかもしれません。
しかし、これも立派な「ピアノとの対話」であり、音楽的な経験です。

「練習」という高い壁を乗り越えようとするのではなく、ただ「ピアノという楽器と遊ぶ」ために椅子に座る。

そう考えるだけで、心のハードルはぐっと下がります。

思考を変えたら、ピアノの椅子が「一番近い場所」になった

実は私自身、最近まで「練習したくない時期」を過ごしていました。
その原因を深掘りしてみると、やはり「ちゃんとした練習をしなければならない」という思い込みに縛られていたことに気づいたのです。

「今日は指のトレーニングをして、新曲の譜読みをここまで進めて、暗譜の確認もして、音をもっと磨いて……」

そんな計画を立てるだけで、ピアノが遠い存在になっていました。

しかし、「今日はただピアノの前に座って、好きな音を出すだけでいい」と思い直した瞬間、驚くほど腰が軽くなりました

不思議なことに、気軽に弾き始めたときの方が、リラックスして体が動き、新しい表現のインスピレーションが降ってくることも多いのです。

「ちゃんと」を捨てて「気楽に」向き合う

これが、長くピアノと付き合っていくための秘訣だと確信しました。

インスピレーションは「リラックス」した瞬間にやってくる

音楽的な発見や、技術的なブレイクスルーは、実は必死に眉間にシワを寄せている時よりも、ふっと力が抜けて音楽を楽しんでいる時に訪れます

「しなければならない」という義務感で頭がいっぱいになっている時は、脳も身体も緊張し、新しい感覚を受け入れる余裕がありません。

一方で、遊ぶ感覚でピアノに触れている時は、脳がオープンになり、音の細かな変化や身体の心地よい使いかたに気づきやすくなります。

「今日は5分だけ、ピアノと遊ぼう」

そんな軽い気持ちで蓋を開けてみてください。
その5分が、結果としてどの「ちゃんとした練習」よりも、あなたの音楽を豊かにしてくれるはずです。

まとめ:頑張りすぎるあなたへ

もし今、あなたがピアノを弾くことを「重い」と感じているなら、それはあなたがピアノに対して誠実である証拠です。
でも、その誠実さで自分を苦しめないでください

ピアノは、あなたを評価する試験官ではありません。あなたの感情を受け止め、一緒に遊んでくれる最高のパートナーです。

「ちゃんと」できなくても大丈夫。止まっても、間違えても、片手だけでも、それは素晴らしい音楽の時間です。

今日からは「練習」という言葉を少し横に置いて、もっと気軽に、もっと自由に、大好きなピアノの音と触れ合ってみませんか?

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筆者プロフィール:

4歳よりピアノを始め、埼玉県立大宮光陵高校音楽科、東京音大ピアノ演奏家コース、同大学院修士課程を修了。コンクール受賞歴多数。奨学金授与、短期留学を経験し、現在は演奏活動と並行し累積50名以上の指導に携わる。現役奏者の視点から、ピアノ上達のヒントや本番に強いメンタル術を発信中。


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