
「楽譜の指示通りにペダルを踏んでいるのに、なぜか音が濁ってしまう……」
「ペダルを踏みかえるたびに、音がブツ切れになってスムーズに聞こえない」
ピアノの練習をしていて、このような悩みに直面したことはありませんか?
実は、ピアノのペダルは「楽譜通り」に踏むだけでは、綺麗な響きを作ることはできません。
ペダルは単に音を伸ばすための道具ではなく、ピアノの音色を操る魔法の杖です。
しかし、その使い方は非常に繊細。
この記事では、ピアノの音が濁る決定的な原因と、プロも実践している「濁らせない・途切れさせない」ペダルの踏みかえタイミングについて詳しく解説します。
筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。
なぜ「楽譜通り」に踏むと音が濁るのか?

ピアノの楽譜を見ると、音符の真下に「Ped.」という記号や、凸凹した線でペダルの指示が書かれていることが一般的です。
素直な人ほど、その記号の真上で「鍵盤を押すのと同時」にペダルを踏んでしまいがちです。しかし、実はこれが音が濁る最大の原因です。
同時踏みの落とし穴
鍵盤を叩く瞬間にペダルを踏んでしまうと、その直前に鳴っていた音の残響をペダルが拾ってしまいます。
前の音の響きと新しい音の響きが混ざり合い、結果としてモコモコとした「濁った音」になってしまうのです。
また、ペダルを連続して踏み替えるレガートなどの場面では、
鍵盤を叩くのと同時にペダルを踏んでしまうと、ペダルが上がるタイミングで音も「ブツッ!」と途切れてしまいます。
生徒さんの演奏でよく見られるのは、このような「ブツッ!」と途切れてしまうペダルの使い方です。
濁りを一掃する「0.2秒の時差」:後踏みペダルのコツ

音が濁らず、かつ音を途切れさせないための魔法のテクニック。
それが「後踏み(あとぶみ)ペダル」です。
コツは非常にシンプルです。
「鍵盤を押し下げた一瞬後に、ペダルを踏む」
これだけです。
具体的な手順
- 古いペダルを上げる: 新しい鍵盤を押さえるのと「同時」に、踏んでいたペダルをパッと離します。これで前の響きが消えます。
- 鍵盤を保持する: 指は鍵盤を押さえたままにしておきます。
- 新しいペダルを踏む: 鍵盤を押した約0.2秒後、音が鳴ったのを確認してからペダルを深く踏み込みます。
この「0.2秒」の遅れが重要です。
指で鍵盤を押さえている間にペダルを踏みかえることで、前の音の残響をカットしつつ、新しい音の響きだけをキャッチして伸ばすことができるのです。
タイミングが遅すぎてもダメ
「遅ければいい」というわけではありません。
0.2秒を過ぎ、指を鍵盤から離した後にペダルを踏んでも、もう音は伸びません。
指が鍵盤を離れる前に、確実にペダルを踏む感覚を掴みましょう。
楽譜のペダル指示は「あくまで目安」と心得よう

ここで一つ、大切な真実をお伝えします。
「楽譜に書いてあるペダルの指示は、かなり大雑把なもの」だと思ってください。
作曲家や出版社の意図としてペダル記号は書かれていますが、
それは「ここで響きを豊かにしてほしい」という程度のニュアンスであることが多いのです。
ペダルは「オン・オフ」のスイッチではない
初心者の方は、ペダルを「踏むか・離すか」の2択で考えがちです。
しかし、ピアノ上級者の足元はもっと複雑に動いています。
- 踏む深さ: 全開で踏むこともあれば、半分(ハーフペダル)、あるいは4分の1だけ踏むこともあります。
- 踏みかえの頻度: 楽譜には一本の長い線が引かれていても、耳で聞いて濁りを感じれば、その間で細かく踏み直しています。
一流のピアニストは、自分の耳で「今の響きが美しいか」を常に判断し、リアルタイムで踏む深さやタイミングを微調整しているのです。
【筆者の経験談】耳と体で覚える!ペダル上達へのステップ

私はこれまで多くの生徒さんの横で、ペダリングの指導をしてきました。
その中で強く感じるのは、「弾くことに夢中になっていると、自分の音が濁っていることにさえ気づけない」という難しさです。
特にピアノを始めたばかりの方にとって、手と足の両方に神経を配るのは至難の業。
「ペダルを踏むだけで精いっぱい」という状態になるのは当然のことです。
そこで私のレッスンでは、以下のようなアプローチで感覚を養ってもらっています。
① 「手」を「足」に見立ててタイミングを視覚化
生徒さんが弾いている横で、私の手を生徒さんの足の動きに同期させて動かします。
「はい、ここで上げる!今、踏む!」と、手の動きをガイドにすることで、
理想的な「0.2秒の時差」を視覚とセットで体感してもらいます。
② 役割分担で「聴くこと」に専念する
「自分が弾きながら踏む」のが難しいときは、役割を分けます。
私がピアノを演奏し、生徒さんにはペダル操作だけをお願いするのです。
自分で弾かなくて済む分、生徒さんは「音の重なり」や「濁り」を聴き取ることに100%集中できます。
「あ、今濁った!」「今のタイミングだと綺麗!」という実感が、上達への一番の近道になります。
いきなりすべてを完璧にするのは難しいですが、こうした多角的な練習を繰り返すことで、生徒さんたちは確実にタイミングを掴んでいきます。
ペダルを踏みかえるべき「3つのベストタイミング」

では、具体的にどのような場面で踏みかえるべきなのでしょうか。
基本となるのは以下の3つのポイントです。
① 和音が変わるとき
もっとも基本的なタイミングです。
コード(和音)が変わる場所では、必ずペダルを踏みかえましょう。
ドミソの響きの中にレファラの音が混ざると、一気に不協和音となり音が濁ります。
② 隣同士の音が続くとき(音階など)
「ドレミファソ」のように隣り合った音が連続する場面は、もっとも音が濁りやすい箇所です。
メロディのラインをハッキリさせたいときは、ペダルを細かく踏みかえるか、あえて踏まない選択が必要です。
③ 右手のパッセージが細かいとき
楽譜に「ペダルをずっと踏みっぱなしにする」ような指示があっても、
右手のメロディが細かく動いていて「音がモヤモヤするな」と感じたら、勇気を持ってペダルを上げてください。
「ペダルを離す勇気」を持つことで、演奏にキレと透明感が生まれます。
まとめ:耳を澄ませて「理想の響き」を探そう

ピアノの音が濁る原因は、鍵盤とペダルを同時に動かしてしまうことにあります。
- 鍵盤を押した0.2秒後にペダルを踏む
- 前の音をしっかり消してから、次の音をキャッチする
- 楽譜の指示に縛られすぎず、自分の耳で濁りをチェックする
この3点を意識するだけで、あなたのピアノの音色は驚くほどクリアで美しく変わります。
最初は足の動きに意識がいってしまい、指がもつれるかもしれません。
まずはゆっくりとした曲で、「打鍵→一瞬待って踏む」というサイクルを練習してみてください。
ペダルをマスターすれば、ピアノはもっと豊かに、もっと表情豊かに響いてくれます。
理想の響きを目指して、今日から「0.2秒の魔法」を取り入れてみませんか?

筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。
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