
「毎日練習しているのに、ちっとも上手くならない」
「自分にはピアノの才能がないんじゃないか……」
ピアノを続けていると、一度はそんな風に自分を疑ってしまう時期がありますよね。周りと比べて焦ったり、昨日弾けたところが今日弾けなくなっていたりすると、やる気が削がれてしまうのも無理はありません。
確かに、他の習い事と同じようにピアノにも「向き不向き」は存在します。
しかし、二十数年ピアノと歩み、多くの生徒さんを見てきた中で私が感じるのは、上達しない理由は決して「才能の有無」だけではないということです。
今回は、なぜ「上達しない」と感じてしまうのか、その本当の理由と、停滞期を抜け出すための心の持ち方についてお話しします。
筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。
「向き不向き」の正体は、才能ではなく「性格」にある

まず、残酷なようですが「向き不向き」について触れないわけにはいきません。ただ、それは「指が長い」とか「絶対音感がある」といった身体的な才能のことではありません。
ピアノが上達しにくいタイプの一つは、「他に夢中なことが多すぎる人」です。
時間は有限です。ピアノの他に熱中している趣味や活動がたくさんあれば、当然ピアノに触れる時間は物理的に減ってしまいます。
上達にはある程度の「投下時間」が必要なため、これは向き不向き以前の問題と言えるかもしれません。
もう一つは、「すぐに結果を求めて投げ出してしまう性格」です。
ピアノは、今日練習して明日いきなり弾けるようになる魔法のような楽器ではありません。地道な反復練習を積み重ねて、少しずつ指に記憶させていく「コツコツ型」の習い事です。
そのため、一時の感情で「弾けない!もう無理!」とすぐに鍵盤を閉じてしまうタイプの方は、上達の波に乗る前に挫折してしまいがちです。
しかし、これらはあくまで「今のスタイル」の話。
性格や時間の使い方は、意識次第で変えていくことができます。
上達を阻む最大の原因は「成功体験」の不足

私が考える「上達しない人」の最も大きな共通点は、「成功体験をまだ味わっていないこと」にあります。
ピアノを弾いていて、こんな経験はありませんか?
「昨日までどうしても指がもつれていたフレーズが、今日、ゆっくりなら弾けるようになった」
「先生や親から『今の音、すごく綺麗だったね』と褒められた」
こうした小さな「できた!」という喜びや、肯定的な言葉こそが、次の練習に向かうエネルギーになります。
上達が止まっていると感じる人は、このサイクルがうまく回っていません。
「弾けない」→「イライラする」→「やりたくない」→「練習しない」
→「さらに弾けなくなる」
という負のスパイラルに陥っているのです。
イライラするのは、あなたが「もっと上手くなりたい」と願っている証拠。それは決して悪いことではありません。大切なのは、そのイライラを解消するほどの「小さな成功」を意図的に作ることです。
「今日はこの1小節だけ、目をつぶっても弾けるようにする」
そんな、絶対に達成できる小さな目標をクリアしてみてください。
その「小さな成功体験」の積み重ねが自信となり、自らピアノに向かう力へと変わっていきます。
上達できないのは才能がないからではなく、まだ「成功の味」を十分に知らないだけなのです。
「上達している自分」に気づいていないだけかもしれない

もう一つ、非常に多いケースがあります。
それは、「本当は上達しているのに、本人がそれに気づいていない」というパターンです。
特に大人の生徒さんに多いのですが、
レッスンで私は「以前よりずっとスムーズに弾けているな」「音が深くなったな」と感じていても、ご本人は「全然うまくなっている気がしません」と浮かない顔をされていることがあります。
なぜ、このような認識のズレが起こるのでしょうか。
それは、ピアノの上達は「右肩上がりの直線」ではなく、「階段状」だからです。
しばらく停滞しているように見えて、ある日突然、一段上に登る。その繰り返しです。
また、自分自身の「理想の耳」が先に育ってしまうことも原因の一つです。
耳が肥えて目が肥えてくると、自分の今の技術が拙く見えてしまい、成長していないように錯覚してしまうのです。
ピアノは、漢字のテストのように「100点満点中〇点」と数字で進度を測るのが非常に難しい世界です。だからこそ、自分の感覚だけで「上達していない」と決めつけるのは、とてももったいないことです。
「上達」の定義を自分なりに持ってみる

もし、あなたが「上達していない」と悩んでいるのなら、一度立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
あなたにとっての「上達」とは、具体的に何を指しますか?
- 難しい曲を速く弾けるようになること?
- 楽譜をスラスラ読めるようになること?
- 一曲を心を込めて最後まで弾ききること?
- 昨日よりリラックスして鍵盤に触れること?
何をもって上達とするかは、人それぞれ違っていいはずです。
もし自分一人で判断がつかない時は、ぜひ先生や周りの人に聞いてみてください。
「私の演奏、半年前と比べてどう変わりましたか?」と。
自分では気づけなかった「音の伸び」や「リズムの安定感」を、他人はしっかり感じ取ってくれているものです。
結びに:才能のせいにする前に

「上達しない」という悩みは、あなたがピアノと誠実に向き合っているからこそ生まれるものです。
上達できないのは、向いていないからではありません。
単に、ピアノに触れる時間が少し足りなかったり、あるいは「できた!」という喜びを噛み締める前に次の課題に進んでしまったりしているだけ。
あるいは、すでに上達しているのに、自分の成長を認めてあげられていないだけかもしれません。
上手くいかない時こそ、自分の一番の応援団になってあげてください。
小さな「できた」を拾い集めて、自分を褒めてあげてください。
ピアノの歩みは、一生続く長い旅です。
焦らず、今の自分にできる小さな一歩を積み重ねていきましょう。その先に、かつての自分では想像もできなかったような、自由な音楽の世界が必ず待っています。
あなたの奏でる音が、今日も少しずつ、昨日より豊かな響きに近づいていることを、私は心から信じています。
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筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。

