
ピアノを習い始めたばかりの頃や、新しい曲に挑戦する時、「早くスラスラ弾けるようになりたい!」という一心で、楽譜の音符の下に「ドレミ……」とカタカナでルビを振っていませんか?
実は、その何気ない習慣が、あなたの「音符を読む力」の成長を止めてしまっているかもしれません。
「いつまでも楽譜が読めるようにならない」
「新しい曲になるたびにドレミを書き込むのが苦痛」と悩んでいる方は、今日を境にその鉛筆を置いてみませんか?
今回は、なぜ楽譜にカタカナを振ってはいけないのか、そしてどうすれば「ルビなし」でスラスラ音符が読めるようになるのか、二十数年の経験から導き出した具体的な練習法をお伝えします。
筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。
楽譜にドレミを書いてはいけない「本当の理由」

まず結論からお伝えします。音符が読めるようになりたいなら、楽譜にカタカナを振るのは今すぐやめるべきです。
なぜなら、カタカナを書いてしまうと、脳は「音符(記号)」を見ることをやめ、慣れ親しんだ「文字」だけを追うようになるからです。
これは、英語の勉強に例えると分かりやすいかもしれません。英単語の上にすべてカタカナで読み仮名を振ってしまったら、いつまで経ってもスペルと発音が結びつきませんよね。
それと同じで、楽譜に「ド」と書いてあると、目は「ド」という文字を読み、脳は「これはドだ」と判断します。その時、五線譜のどこに音符があるかは、脳の記憶に残っていないのです。
カタカナに頼っている限り、新しい曲に出会うたびに膨大な時間をかけてルビを振らなければならず、いつまで経っても「初見で弾く」という自由を手に入れることはできません。
「下から数える」は、上達への正しい第一歩

「でも、カタカナを書かないと、一音読むのに何十秒もかかってしまう……」
そう不安に思うかもしれません。でも、それでいいのです。
最初は一本ずつ線を数えて、「下から1、2、3番目の線だから……シだ!」と時間をかけて導き出す。この「数える」というプロセスこそが、脳に音符の場所を刻み込むトレーニングになります。
最初はもどかしい作業ですが、何度も同じ場所の音符を見ているうちに、脳は「数える」というステップを省略し、「この場所はソだ」とパッと認識できるようになります。
焦らず、自分の脳が音符の形と場所を覚える時間を、自分自身に許してあげてください。
音符がスラスラ読めるようになる3つの実践法

では、具体的にどうすれば「数える」段階から「パッと読める」段階へ進めるのでしょうか。私がおすすめする、効果的な3つの方法を紹介します。
① 簡単な曲を「声に出して」歌ってみる
以前ご紹介した『ぴあのひけるよ!ジュニア』のような、今の自分にとって「少し簡単すぎるかな?」と感じるレベルの楽譜を用意してください。
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その楽譜を見ながら、ピアノを弾かずに「ド・レ・ミ・ファ・ソ……」と声に出して読んでみましょう。
指を動かすという作業を一度切り離し、「目で追って、声に出す」ことに集中するのです。今練習している曲でも、数小節ずつで良いので、積極的に声に出して歌ってみてください。
視覚と聴覚をリンクさせることで、音符の認識スピードは飛躍的に上がります。
② 「おんぷカード」を徹底活用する
最も即効性があるのが「おんぷカード」を使ったトレーニングです。
トランプのようなカードの表に音符が一つ書かれ、裏に答えが書いてあるシンプルな道具ですが、これが非常に強力です。
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やり方は簡単。パッとカードをめくり、0.5秒以内にドレミを答える。これだけです。
枚数が決まっているので「今日はこれだけやろう」と目標を立てやすく、答えがすぐ裏にあるので、間違えてもその場で修正できます。
「五線譜の中で読む」のと「カードで単体として読む」のを繰り返すことで、音符に対する苦手意識が驚くほど消えていきます。
③ 「線」と「間」の呪文で覚える
音符には、五線の「線」の上に乗っている音と、線と線の「間(かん)」にある音の2種類しかありません。これをグループで覚えてしまうのも一つの手です。
・線の音: 「ソシレファラ・ドドミ・ソシレファラ」

・間の音: 下から「ファラドミソ・シレ・ファラドミソ」

これを呪文のように唱えて覚えてみてください。
例えば「線の音は一つ飛ばしでソシレファラだな」とパターンが頭に入っていると、パッと見た時に「あ、これは線のグループの3番目だからレだ」と、推測するスピードが格段に速くなります。
【筆者の経験談】指導現場で確信した「カタカナの罠」

日頃、生徒さんたちを教えていて痛感することがあります。それは、楽譜にドレミのカタカナを振っている人ほど、音符を読めるようになるのが圧倒的に遅いということです。
理由は明確です。音符そのものではなく、その下のカタカナ(文字)を見て判断してしまっているからです。
脳に負荷をかけず、慣れ親しんだ文字に頼り切ってしまう。これでは、いつまで経っても音符を記号として認識する回路は育ちません。
そのため、私のレッスンでは
「どうしてもパッと判別できない一音だけなら、ピンポイントで書いてもいい。けれど、それ以外は絶対に書かないでね」と伝えています。
どんなに時間がかかっても、自分の力で読み解く。そうして脳に適切な負荷をかけ続けることで、ある日突然、霧が晴れるように読めるようになる瞬間がやってくるのです。
具体的なアプローチとして、「線と間の呪文」と「おんぷカード」を毎回のレッスンで取り入れています。
・線の音:ソシレファラ・ドドミ・ソシレファラ
・間の音:ファラドミソ・シレ・ファラドミソ
この呪文とカードでの反復練習を積み重ねることで、私の生徒さんたちは皆、驚くほどスムーズに音符を捉えられるようになっています。
もちろん一朝一夕にはいきません。しかし、一見遠回りに思えるこの地道なステップこそが、実は上達への一番の近道であると、私は確信しています。
できない自分を応援する

音符を読む練習は、地味で、時に退屈に感じるかもしれません。
二十数年ピアノを弾いてきた私でも、新しい複雑な楽譜を前にすると「うわっ、読みにくいな」と感じる瞬間は今でもあります。
でも、カタカナのルビという「補助輪」を外した先に待っているのは、どんな楽譜でも自分の力で読み解き、自由に音楽を奏でられるという素晴らしい世界です。
最初は一音に時間がかかっても大丈夫。下から数えても大丈夫。
「今日は昨日より一音早く読めた」
そんな小さな成長を、どうか自分で認めてあげてください。
私がブログを書き、ピアノを弾き続けるのは、かつての私と同じように壁にぶつかっているあなたを応援したいからです。
カタカナを卒業するのは勇気がいりますが、その一歩があなたのピアノライフを劇的に変えてくれます。
いつかあなたが、真っ白な(ルビのない)楽譜を広げて、自信を持って最初の一音を奏でられる日が来ることを、私は心から願っています。
さあ、今日は楽譜のドレミを消しゴムで消すところから始めてみませんか?
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筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。

