♯137 ピアノを両手で弾くコツとは?初心者が挫折しないための「縦の意識」と練習ステップ


「右手ならスラスラ弾けるし、左手も完璧。なのに、いざ両手を合わせようとすると頭が真っ白になる……」

ピアノを始めたばかりの方が、一番最初にぶつかる大きな壁が「両手一緒に弾くこと」ではないでしょうか。

まるで別々の生き物のように動かさなければならない左右の手。片手ずつなら弾けるのに、合わせた瞬間に指が動かなくなるのは、決してあなたの才能がないからではありません。

実は、両手で弾くためには「片手練習」とは別の、
ちょっとしたコツ練習の順番があるのです。

今回は、初心者の方が最短で両手奏をマスターするための「縦の意識」と具体的なステップを解説します。

筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。

「一気に合わせない」のが鉄則。まずは縦のラインを確認する

両手で弾こうとして失敗する最大の原因は、最初から曲の流れ(横の動き)に乗ろうとしてしまうことです。

初心者のうちは、メロディを追いかける前に「音と音が重なるポイント」を点で見ることが重要になります。

これが、両手奏をスムーズにする縦で見るという考え方です。

楽譜をパッと見たとき、右手のこの音を弾くとき、左手はどの音を弾いているでしょうか。まずはその「重なっている部分」だけを、パズルのピースをはめるように確認していきます。

「どの音を同時に鳴らすのか」、時間の流れを止めて、垂直方向の組み合わせを脳に覚え込ませるのです。

一気に1小節を弾こうとするのではなく、まずは「最初の1拍」だけを完璧に合わせる。このスモールステップが、結果として一番の近道になります。

「2〜3音」から始める。動きで覚える練習法

縦のラインが確認できたら、次は実際に音を出していきます。ここで大切なのは、欲張らずに「2〜3音ずつ」区切って練習することです。

どんなに複雑な曲であっても、たった2音や3音の組み合わせであれば、誰でも必ず合わせることができます。

このとき、単に「音を鳴らす」のではなく、「指がどう動くか」という身体の感覚に集中してみてください。
「右の2の指と左の5の指を同時に弾いて、次に右だけ3の指を動かす」といった具合に、指の連動をセットで覚えていくのです。

できるようになったら、音を増やしていく

頭で考えるよりも先に、指がそのセットの動きを覚えるまで、同じ箇所を数回繰り返します。

そこができるようになったら、音を足していく。この「成功体験の積み重ね」が、脳の混乱を防いでくれます。

テンポは「超スロー」でOK。リズムの乱れは後で直る

両手で合わせる際、最初からメトロノームを使ったり、本来のテンポで弾こうとしたりする必要はありません。むしろ、最初は「これ以上遅くできない」というくらいの超スローテンポで構いません。

練習の過程では、特定の難しい箇所だけ拍が遅くなってしまったり、リズムがガタガタになったりすることもあるでしょう。しかし、最初の段階ではそれで全く問題ありません。

まずは「両手で同時に、正しい指を動かすこと」に全神経を集中させてください。動きに迷いがなくなれば、後から自然とリズムに乗る余裕が生まれてきます。

最終的に曲の拍子に乗ることができれば良いので、最初は不格好でも「音を合わせること」を優先しましょう。

【筆者の体験談】弾けない場所は、宝探し。地道な作業の先にある「ふと弾ける日」

正直に言うと、私自身は幼少期にピアノを始めたこともあり、両手で合わせることにそれほど苦労した記憶がありません。頭が柔らかい時期に、無意識に感覚を掴めたことは幸運だったと思います。

ですが、レッスンで生徒さんたちと向き合う日々の中で、両手を合わせることがいかに難しいことかを改めて実感しています。

生徒さんたちの練習を見ていると、思うように指が動かないもどかしさからか、つい「最初から通して弾くこと」で満足してしまい、肝心のつまずくポイントが置き去りになっていることがよくあります。

音楽の流れに乗って弾くのは楽しいものです。けれど、そこをぐっとこらえて、まずは、その『つまずく1小節』だけを今日のゴールにしてみる勇気を持ってほしいのです。

できない部分だけを数音ずつ取り出してみる。
バラバラだったパズルのピースを一つずつ繋げていくような、そんな地道な作業がピアノには欠かせません。

練習を続けても、すぐに結果が出ないこともあります。でも、あきらめずに繰り返していると、ある日突然、頭と体の回路がつながる瞬間が訪れます。

「昨日まで弾けなかったのに、今日はなぜか弾ける!」

そんな喜びは、地道な作業を積み重ねた人にしか味わえないご褒美です。

弾けたり、弾けなくなったりを繰り返しながら、少しずつ体に音を覚え込ませていく。そのプロセスを、焦らずに一緒に歩んでいきたいと思っています。

最初の「0から1」が一番時間がかかる

ピアノの練習において、最もエネルギーを使い、時間がかかるのは「その曲を初めて両手で合わせる瞬間」です。

最初は1小節合わせるのに10分かかるかもしれません。
「こんなに時間がかかっていては、1曲弾き終わるのに何年かかるんだろう」と不安になることもあるでしょう。

しかし、安心してください。人間の脳と体は、一度「両手を連動させる感覚」を掴むと、加速度的に学習スピードが上がっていきます
最初の数小節は時間がかかっても、曲の後半に行く頃には、驚くほど短い時間で合わせられるようになっているはずです。

また、何曲か経験を積んでいけば、いちいち細かく区切らなくても、初見に近い状態で両手を合わせられるようになっていきます。

今、一番時間がかかっているその時間は、技術が飛躍する前の「種まき」の時期なのです。

ステップアップ!左手を弾きながら「歌う」練習法

少し慣れてきた方や、どうしても特定の箇所が合わないという方におすすめの上級者向け練習法があります。

それは、「左手を弾きながら、右手を歌ってみる」という方法です。
(難易度はさらに上がりますが、反対の手で行うことも可能です。)

右手はあえて弾かず、声に出して歌うことで、脳の中で左手と右手の脳の回路を分離させることができます。
これができるようになると、いざ両手で弾くときに合わせやすくなります

頭の中の整理整頓をするイメージです。効果は絶大ですので、ぜひ試してみてください。

まとめ:焦らず、少しずつ、確実に

ピアノを両手で弾くことは、脳にとって非常に高度な作業です。

だからこそ、一気にやろうとせず、
細かく分解して「縦のライン」を一つずつ繋いでいくことが大切になります。

  1.  まずは「縦」で音の重なりを確認する
  2.  2〜3音ずつの短いスパンで、動きを体に覚えさせる
  3.  超スローテンポで、少しずつ音を増やしていく

このステップを繰り返せば、どんなに難しく思える曲でも必ず両手で弾けるようになります。最初が一番大変ですが、そこを乗り越えた先には、ピアノを自由に奏でる楽しさが待っています。

焦らず、1拍を合わせることから始めてみましょう。

筆者プロフィール:

4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。


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