「いつかあの名曲をピアノで弾いてみたい」
そんな憧れを抱いてピアノを始める方は多いですが、独学で始める場合に最も大切なのは「最初の一歩」をどう踏み出すかです。
一曲だけを何ヶ月もかけて無理やり形にする練習では、他の曲に応用が効かず、結局ピアノを楽しめなくなってしまうこともあります。
いろいろな曲を自由に弾けるようになるためには、導入期こそ丁寧に基礎を固めるべきです。
今回は、独学でピアノを上達させるための具体的なロードマップを解説します。
筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。
すべての基本は「正しい姿勢・手の形・指番号」から

独学でピアノを始める際、つい「どの鍵盤がドか」といった知識に目が行きがちですが、実はそれ以上に大切なのが「弾くための体作り」です。
間違った姿勢や手の形で練習を続けてしまうと、上達が止まるだけでなく、腱鞘炎などのケガを招く恐れもあります。
まずは、一生モノの基礎となる「3つの基本」をマスターしましょう。
① 疲れずスムーズに動くための「正しい姿勢」
ピアノを弾く姿勢は、スポーツと同じくらい重要です。まずは以下のポイントをチェックしてください。
座る位置: ピアノの真ん中(鍵盤の「ド」の付近ではなく、メーカーロゴがあるあたり)に座ります。椅子の半分よりやや手前に腰掛けましょう。深く座りすぎるとリラックスしすぎて体が動きませんし、浅すぎると不安定で落ちそうになってしまいます。
足の位置: 足は肩幅程度に自然に広げ、しっかりと床につけます。
背中と肩: 背筋をピンと伸ばし、座骨(お尻の骨)にしっかりと体重を乗せます。このとき、肩はストンと下げてリラックスさせることが、良い音を出す秘訣です。
椅子の高さ: 高すぎても低すぎてもいけません。鍵盤に手を置いたとき、手首から肘にかけてが鍵盤と平行(水平)になる高さがベストです。
重心の移動: 高い音や低い音を弾くとき、お尻をずらして移動してはいけません。お尻は固定したまま、重心だけを左右に移動させて対応しましょう。
② 理想的な「正しい手の形」を作るトレーニング

次に、指がスムーズに動く基本の手の形を作ります。初心者の方におすすめなのが、以下の「こぶし包み」トレーニングです。
- 片方の手を軽く「こぶし」にします。
- もう片方の手で、そのこぶしを上から優しく包み込みます。
- 包んでいた方の手から、中のこぶしをゆっくりと抜きます。
- 残った「包んでいた方の手」の形のまま、鍵盤にそっと置きます。
このとき、第1・第2・第3関節のすべてが軽く曲がっている状態が理想です。
卵をふわっと持っているような、自然なカーブを意識してください。指をピンと伸ばしたり、逆に指の付け根が凹んだりしないよう注意しましょう。
③ 迷いをなくす「指番号」のルール

ピアノには、親指から小指にかけて「1・2・3・4・5」という指番号が決まっています。
- 1:親指
- 2:人差し指
- 3:中指
- 4:薬指
- 5:小指
楽譜に書かれたこの番号は、プロのピアニストや教育者が「最もスムーズに弾ける」と考えて割り振ったものです。
独学のうちは「自己流のほうが弾きやすい」と感じることもありますが、まずは書かれた通りに守る癖をつけましょう。
もちろん、ある程度レベルが上がり、自分の手の大きさや指の長さに合わせて調整が必要になったときは変えても構いません。
しかし、導入期に指番号を守ることは、脳と指を直結させるための非常に重要な訓練なので、おろそかにしないようにしましょう。
2. 「憧れの曲」に急がず、導入本を丁寧にこなす

「戦場のメリークリスマス」や「エリーゼのために」など、弾きたい曲があるのは素晴らしいことです。しかし、いきなり難易度の高い曲に挑むのはおすすめしません。
基礎がないまま難しい曲に挑むと、一曲を仕上げるのに膨大な時間がかかり、結果的に「譜読みの力」が育たないからです。
おすすめ導入本
ピアノを一生の趣味にしたいなら、まずは導入書から始めましょう。おすすめは『ぴあのひけるよ!ジュニア』(1〜3巻)です。
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この本は、誰もが知っている童謡などが多く収録されており、楽しみながら少しずつレベルを上げることができます。
知っているメロディーなら、リズムの正解もイメージしやすく、挫折しにくいのがメリットです。
3. 効率的な練習法:突っかかるところを「取り出す」

練習中、いつも同じ場所で間違えてしまうことはありませんか?
そんなとき、「曲の最初から弾き直す」のは絶対にNGです。
最初から弾き直すと、すでに弾ける部分は何度も練習することになりますが、苦手な部分は克服されないままになってしまいます。
間違えてしまう箇所があれば、そこだけを「取り出して」部分練習しましょう。
まずは、「止まらずに最後まで弾けるようになること」を第一目標にします。
強弱をつけたいときは

もし強弱をつけて表現を深めたいと思ったら、一度テンポをぐっと落としてみてください。ゆっくり弾きながら、
・どうすれば指先に力が伝わるか
・どうすれば優しく響くか
と、力加減を研究するのが上達のコツです。
音楽用語(フォルテ、ピアノなど)は、曲を進める中で出てきたものをその都度覚えていけば問題ありません。
4. リズムの壁を乗り越えるための工夫

独学で最も間違いやすく、かつ自分では気づきにくいのが「リズム」です。
できれば客観的に見てくれる人がいると理想的ですが、一人で練習する場合は、リズム専門の教材を取り入れるのが効果的です。
おすすめリズム導入本
おすすめは、丸子あかね先生の『みんなだいすき!リズムのほん』です。
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これを併用することで、複雑なリズムも論理的に理解できるようになります。
リズムが正しく取れるようになると、新しい曲に出会ったときの譜読みスピードが劇的に上がります。
5. 「ドレミで歌うこと」がピアノ上達の特効薬になる

そして、意外かもしれませんが、ピアノ上達に欠かせないのが「歌うこと」です。
練習している曲のメロディーを、ピアノで弾きながら声に出して「ドレミ」で歌ってみてください。
『いつまで経っても、下から数えないとドレミが読めない』という悩みを持つ方は多いですが、歌う練習を繰り返すと、音と楽譜が脳内で一致するようになります。
大人になってから始めると、子供の頃よりは音感が身につくまでに時間がかかりますが、歌うことで確実に「譜読みのスピード」と「音感」は向上します。
歌は音楽の基本
音楽の基本は、歌です。
「ドレミ」で歌うだけで十分な訓練になります。恥ずかしがらず、遊び感覚で声に出してみましょう。
自分の声でメロディーをなぞることで、フレーズの区切りや音楽の流れが自然と理解できるようになります。
まとめ:最初こそ丁寧に、あとは自由に
独学でピアノを長く楽しむ秘訣は、「最初こそ丁寧に、基礎を固めること」です。
指番号を守り、正しい手の形を意識し、歌いながら練習する。この地道な積み重ねが、数年後のあなたに「どんな曲でも自由に弾きこなせる力」をプレゼントしてくれます。
まずは『ぴあのひけるよ!ジュニア』を手に取って、一音一音を大切に響かせることから始めてみませんか?
あなたのピアノライフが、豊かで楽しいものになるよう応援しています。

筆者プロフィール:
4歳からピアノを始める。音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続けている。

