ピアノを弾くとき、右側の「ダンパーペダル」はよく使いますよね。でも、ふと足元を見たときに気になるのが「真ん中のペダル」の存在です。
「これっていつ使うの?」
「踏んでもあまり音が変わらない気がする……」
そんな風に思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、真ん中のペダル(ソステヌートペダル)は、上級者やプロが「理想の響き」を追求するために使う、非常にクリエイティブなツールなのです。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
意外と知られていない真ん中のペダルの正体と、これを使うだけで演奏が劇的にプロっぽくなる活用法をご紹介します。
ピアノの「真ん中のペダル」の意外な正体とは?

結論から言うと、ピアノの真ん中のペダルの正体は、
「特定の音だけを長く響かせる魔法のツール」です。
一般的に、グランドピアノでは「ソステヌートペダル」と呼ばれます。
家庭にあるアップライトピアノの場合、真ん中のペダルは「マフラーペダル(弱音ペダル)」であることが多く、踏んで左に引っ掛けると音が小さくなる練習用の機能になっています。
今回の記事では、グランドピアノに備わっている、
演奏表現を広げるための「ソステヌートペダル」の役割について詳しく解説します。
なぜ真ん中のペダルが必要なのか?
なぜ、右側のダンパーペダルだけではいけないのでしょうか。
その理由は、「音の濁りを防ぎつつ、特定の音(バス音等)をキープするため」です。
通常、右側のペダルを踏むと、すべての弦の振動が解放されるため、次に弾く音もすべて混ざり合ってしまいます。
しかし、曲によっては「一番低い音(ベースの音)は響かせたまま、その上で流れるメロディや和音はスッキリと切り替えたい」という場面が出てきます。
ここで真ん中のペダルの出番です。
このペダルを使うと、「踏んだ瞬間に押さえていた鍵盤の音だけ」が長く響き、その後から弾く音には一切影響を与えません。
具体的な活用シーン:バス音を残して響きを変える
具体的な使い方のイメージを挙げてみましょう。
例えば、ドビュッシーやラヴェルのような印象派の曲や、壮大なクラシックの楽曲を想像してください。
- まず、左手で深みのある「低いド」の音を弾きます。
- 指を離す前に、すかさず「真ん中のペダル」を踏みます。
- すると、その「ド」の音だけが鳴り続けます。
- その状態で、右手で軽やかな和音やキラキラしたメロディを弾いてみてください。
もしここで右側のペダルを使っていたら、後から弾いた和音がすべて混ざり合い、
お風呂の中のように音が濁ってしまいます。
しかし、真ん中のペダルなら、土台となる低音はしっかり支えつつ、上の音は一音一音クリアに響かせることができるのです。
「バス音を消したくないけれど、全部踏みっぱなしだと濁ってしまう……」
そんな悩みを一瞬で解決してくれるのが、このペダルの凄いところです。
今日からできる!真ん中のペダルで遊んでみよう
「自分にはまだ早いかも」と思う必要はありません。むしろ、このペダルは「音の重なり」を体感するための最高の遊び道具になります。
まずは練習の合間に、こんな実験をしてみてください。
- 実験1: 低い音を一つ弾いて真ん中のペダルを踏み、その後、高音域でスタッカートを弾いてみる。低音だけが響き、高音は跳ねる不思議な感覚を楽しめます。
- 実験2: 右側のペダルと真ん中のペダルを交互に使い、響きの「透明度」の違いを耳で確認してみる。
このように、実際に音を出して遊んでみることで、楽譜に指示がなくても「ここは真ん中のペダルを使ってみようかな?」というアイデアが湧いてくるようになります。
筆者の経験談:攻略の鍵は「タイミング」
私は演奏中に何度かこの「ソステヌートペダル」を使ったことがありますが、一度慣れてしまえば、これほど便利なものはないと感じています。
もちろん、右側のダンパーペダルを踏むことさえ精一杯という方にとっては、最初は少しハードルが高く感じるかもしれません。
しかし、仕組みを理解してしまえば、実はとても気軽に使えるツールなのです。
ただ、実際に使ってみて「ここが難しい!」と感じるポイントがあります。
それは、「伸ばしたい音のすぐ直後に、伸ばしたくない音が来るとき」です。
ソステヌートペダルの鉄則は、伸ばしたい音の鍵盤を指で押さえている「その瞬間」にペダルを踏むこと。
テンポがゆったりしていれば余裕を持って踏めますが、速い曲になると、
この「指で押さえる」と「足で踏む」のコンマ数秒の連携がとても難しいです。
もし、速いテンポの曲でこのペダルを使いこなしたいなら、まずは「踏むタイミング」だけに絞った部分練習が必要になるでしょう。
それさえマスターしてしまえば、濁りのないクリアな響きを自由自在にコントロールできるようになるはずです。
まとめ:響きをコントロールしてピアノをもっと自由に
ピアノの真ん中のペダルは、決して「飾り」ではありません。
音を濁らせることなく、特定の音を自由に持続させるための、表現の鍵を握るペダルです。
初心者のうちは使う機会が少ないかもしれませんが、その仕組みを知っているだけで、音楽の聴き方や演奏の幅が大きく広がります。
もしスタジオ練習やピアノの教室でグランドピアノに触れる機会があったら、ぜひ「真ん中のペダル」で遊んでみてください。
今まで体験したことのない、クリアで深い響きの世界にきっと驚くはずですよ。

